木を隠すなら森の中4~陰謀論の正体、メディアによって"民主主義が殺された日"⑱
バイデンの外交戦略の中で、自らの著書の中でも最も大きな成果と取り上げているのが"バルカン半島での大虐殺の終結"です。
これは今もバイデンにとっての大きな成果であり、彼が今日のポジションに至るきっかけとなりますが、同時に彼にとっては足枷でもあります。
一体何があったのでしょうか。
コソボ紛争、NATO介入の教訓
1882年に成立したセルビア王国を中核国として、周辺国のスロベニア、クロアチア、ボスニア、ヘルツェゴビナ、ボイボジナ(北セルビア自治区)、モンテネグロが統合して1918年にセルビア人・クロアチア人・スロベニア人王国(後のユーゴスラビア王国)が建国されました。
1941年にナチスドイツによって侵略されたユーゴスラビア王国は、枢軸国*各国の傀儡政権によって長らく間接統治をされてきましたが、ヨシップ・チトー率いるユーゴスラビア人民解放軍によって1945年に枢軸国が撤退すると独立を果たします。
独立後はチトーを指導者として社会主義体制が敷かれ、1963年にユーゴスラビア社会主義連邦共和国が設立。
多民族・多宗教の混在するモザイク国家でしたが、チトーの絶大なカリスマ性と指導力によって国はまとまり、少数民族に対して民族主義を主張するものを罰するなどの配慮もするなど他の社会主義国として一線を画していました。
また冷戦期において東側のソビエト連邦に組み入れられることなく中立を堅持し、東西各国どちらとも交流して良好な関係を築き、ソ連に侵略されないように英米からは武器等の支援を受けました。
ユーゴスラビアは1960年代初頭には独自の宇宙ロケット開発を行い、ソ連に開発を先行されていたアメリカの全国航空諮問委員会(NASAの前身)から視察が送られるほどの技術力を誇ります。
しかし国家財政がひっ迫するとその技術をアメリカ(NASA)に売却をし、経済の立て直しを目指し、1984年には東欧初の冬季五輪が首都サラエボで開催されるほどに発展します。
しかしその直前の1980年にカリスマ的指導者であったチトーが87歳で亡くなったことで、このモザイク国家は結束力を失い、インフレ率・失業率が悪化すると抑圧された民族主義、分裂主義、宗教対立が不満として表面化。
1990年代に入るとソ連崩壊後の東欧諸国が民主主義・資本主義社会へ一斉に駆け出し始め中立国としての存在意義を失い、社会主義連邦体制が崩壊。
国内の分断は激化、ユーゴスラビア紛争へ突入し、中核国セルビアを残して西欧・中欧に近かったスロベニアが十日間戦争で真っ先に独立(1991)。
次いでマケドニア共和国、セルビアと対立関係が歴史的に続いていたクロアチアが紛争(1991-1995)を経て独立。
1992年から1995年にはボスニア紛争を経て、ボスニア・ヘルツェゴビナが独立。セルビア国内でコソボも独立の機運が高まります。
セルビアでは1988年にミロシェビッチがユーゴスラビア大統領となり、独立をしようとしたスロベニア・クロアチア・マケドニアに軍事介入。
セルビアの自治区であるコソボではアルバニア語による放送や教育を禁じ、 住民に多かったアルバニア系の人々を官職から追放するなどの弾圧政策に反対したコソボ独立運動が激化。
当初は非暴力を掲げていたものの治安部隊によって鎮圧(1998)されると、やがて武力衝突に発展していきます。
これに対してNATO(アライド・フォース=連合軍)はセルビア軍をコソボから撤退させるために空爆。
結果的にコソボからのセルビア軍撤退には成功しますが、コソボ住民(アルバニア人)にも多くの犠牲が出てしまいます。
混乱が続くコソボから約100万人が脱出して移民となり、ヨーロッパ各地へ避難。
オバマ大統領はバイデンが「バルカン半島での殺戮を終わらせるための政策の策定に貢献した」と語り、取り分けボスニアのイスラム教徒に対する民族浄化を阻止するために介入するべきであることをビル・クリントン大統領に強く訴え、その後はセルビアをコソボから撤退させるためNATO軍の空爆を支持したとも語っています。
バイデンは1988年と2008年にも大統領に立候補しましたが、いずれも撤退。
オバマ陣営によるとバイデンを副大統領として選んだ理由は数多くあるが、特に外交政策に関する専門知識と経験を挙げ、また米国史上初のカトリック系副大統領*であり、また初のデラウェア州出身の副大統領であることへの期待もあったとされています。
"反露派"バイデン副大統領時代のウクライナ対応の失敗
ジョー・バイデン氏はオバマ政権時の副大統領時代(任期2009-2017)、マイダン革命・クリミア侵攻などが起きた2014~2015年にウクライナ政策を担当していました。(バイデン副大統領自ら希望したとされている)
この同時期、2014年5月に息子のハンター・バイデン氏はウクライナの民間ガス会社ブリスマの役員として高額の報酬(5万㌦/月収550万円)を受け取っていたことが判明しています。
バイデンは前回も触れたとおり36年間上院議員を務め、欧州情勢と軍備管理問題を専門として外交委員会に属してきた東部出身のエリート議員でした。
"反露派"としても知られており、副大統領就任後の2009年7月にウクライナを訪問し、「ウクライナがNATO加盟を選択するなら、米国は強く支持する」と伝えました。
当時のウクライナは2004年の東欧諸国が一斉にEUへ加盟した事を受けてEUへの加盟を求める世論が高まっていた時期でしたが、ユーロ・マイダン革命(2013)は元よりウクライナ政府と距離感のあったロシア系住民の多いクリミア自治区への侵攻も始まっておらず、ましてやドンバス地域の独立宣言など起きていない中ではウクライナ国内でNATO加盟派は少数派でした。
(以下、この時期のウクライナの混乱をまとめてウクライナ騒乱と呼称)
しかし2014年にウクライナ騒乱を経験した後ではどうだったでしょうか。
そして後にバイデン大統領誕生(2021年1月)でウクライナがこれに対してどのような感情を持ったでしょうか。
2013年、バイデンはウクライナ騒乱が始まった時に米中央情報局(CIA)のキエフ支局には諜報員・工作員が3人しかいなかったとされていますが、これによってロシアの動きを察知することができなかったことを悔やんだのでしょうか?
アメリカにとって対ロシアの要所であるウクライナに対してそんな手薄であるなどあり得るのでしょうか?
一方でユーロマイダン革命はウクライナ国民による自発的なものではなく、CIAの扇動によるものと2005-2008年にウクライナ・モルディブ大使を務めた馬渕睦夫氏は指摘しています。
SNSなどが普及した21世紀の現代において人への暴力、住民が住む建物などへの攻撃や迫害、強制連行や強制労働など隠し通せるものでないと考える人も少なくありませんが、日本の法務省は2016年にこの問題を仮訳(暫定的な翻訳)とは言え人権問題として取り上げ報告しています。
https://www.moj.go.jp/isa/content/930003983.pdf
2022年のウクライナ危機からメディアの報道を表面的に捉えていると「ウクライナがかわいそう」「ウクライナは被害者」や「ロシアが悪」「プーチンご乱心」と白黒、善悪分かりやすい西側諸国のメディアの扇動に振り回されてしまいます。
日本の法務省がわざわざ事実無根の報告書を取り上げたのでしょうか。もしこの報告の内容が事実だとするならば巷で陰謀論だなんだと言われているウクライナ(右翼傭兵軍)によるウクライナ在住のロシア語系住民への迫害は行われてきており、それに対する分離派(ドンバス地域)による反撃をロシアが支援したというのは過去からの経緯を読み解いてくると隠しようのない事実だった可能性は否定しきれないのです。
しかし実際にウクライナ危機が始まる直前の2022年2月16日にロシアがこの事を国連安保理に報告書を提出するとアメリカは「ロシアがウクライナへ侵攻する口実に利用しようとしている」としてこれを拒否。
ロシアがこの報告書を提出した事をANN、ABEMAなど朝日系列メディアは翌日17〜19日に報じたもののロシア制裁が始まると報道した動画や記事も削除して誤報とも報じずになかったこととして扱い始めます。
☝️ANN News Youtubeチャンネル(削除された)
また西側メディアからの圧力をモノともしない空気の読めない鳩山由紀夫元首相はロシアの国連への報告書の提出報道を受け《私はあらゆる戦争を非難する。ロシアは一刻も早く停戦すべきだ。》と前置きをしたうえで、《同時にウクライナのゼレンスキー大統領は自国のドネツク、ルガンスクに住む親露派住民を「テロリストだから絶対に会わない」として虐殺までしてきたことを悔い改めるべきだ。なぜならそれがプーチンのウクライナ侵攻の一つの原因だから。》
これに対して根拠がない、短絡的などの批判がありました。
次々に新しい情報が上位に来る一方で、同じ検索キーワードを入力してもページが埋もれてしまうことはあるでしょう。
しかし該当のANNやABEMAの報じたページからは動画が削除され、ロシアへの制裁が本格化するとGoogle検索やYoutube履歴から辿れないように消される有様です。
ウクライナ政府によるドンバス地域に住むロシア語系住民への虐殺や暴力などがなかったというのであればロシアの虚言として扱えるのですから堂々としていれば良いものを、わざわざロシアが報告をした事そのものを無かったことにする行動をメディアが取ったとは国連やユニセフ、いえ西側諸国のメディアの圧力とはどれほど情報を統制していると言うのでしょうか。
もはや中国やロシアのことを報道規制などと批難することが出来ないレベルです。
まるで正義のように振る舞いながらウクライナに戦果をもたらしたのはアメリカを中心とした西側諸国である危険性を、国連を始め世界中の国と人々がこぞってロシア制裁に加担して加害者になっていることを日本のメディア共々日本の多くの人たちの殆どが見逃して、同じく無かったことにしているのです。
アメリカに正義があるのでしょうか?
あるのは「勝てば官軍、負ければ賊軍」というこれまで人類が繰り返してきた愚行そのものです。
これをメディアコントロールと呼ばずになんと呼ぶのでしょうか。
左派メディア米紙「ニューヨーク・タイムズ」(2020年3月6日)によるとロシアによるクリミア侵攻が行われた2014年2月末、ホワイトハウスでも情勢の急展開に大混乱をしていたといい、バイデン副大統領は「モスクワに侵略の代償を血と金で払わせる」と断固たる行動を取るよう発言しますが、オバマ大統領は強硬論を受け入れませんでした。
2014年4月、クリミア併合後にウクライナを訪問したバイデン副大統領は「ウクライナを分裂させようとし続けるのであればロシアの孤立は避けられない」と警告するとともに、ウクライナの指導者らに対しては米国の強い支援を約束。
最初の訪問ではキエフのマイダン広場で次のように演説してロシアを非難しました。
更にバイデン副大統領は「米国はロシアに対し、覆面で無記章の軍服を着用しウクライナ東部に政情不安をもたらしている男ら*を支援するのはやめるよう求める」「ロシアがさらに挑発的な態度に出るのであれば、より大きな代償を払い孤立を深めることになると明確に伝え続けてきた」と帰国前に発言し、2014年中だけで都合3度訪問しています。
*アメリカ支援によるロシア兵に見せかけたウクライナ兵やウクライナ傭兵軍(国防軍)による自作自演の攻撃や偽旗作戦の可能性もある。またこれはロシアにも言える。
米国はロシアのプーチン大統領の側近らを対象に既に発動していた渡航禁止と資産凍結に加え一層の制裁措置を取る事を示し、ロシア制裁が始まります。
また2014年12月には「ウクライナ自立支援法」が施行され、ロシアに依存するEUのエネルギー政策がロシア制裁の抜け道になることを懸念。
同年、ウクライナは原発推進によるエネルギー面での脱ロシア依存を掲げます。
一方でEU内でも反露派(東欧諸国など)と親露派で分かれまとまらず、制裁の足並みはそろわず効果は限定的でした。
この頃ロシアはドイツへ天然ガスを直接送り込むノルドストリーム(2008年頃~/2012年10月8日完成)に続き、2017年にはトルコストリーム(覚書2014年12月/工期2018-2019年)、2018年にはノルドストリーム2(工期2018-2021)の工事が始まり、今まで以上に欧州のエネルギー政策へ踏み込み依存関係を深め逃げられないようにしていきます。
一方でバイデン氏はその後ウクライナ大統領となったポロシェンコ大統領と新欧米派政治家の関係を仲介し、ウクライナで政界工作を行っていたとされています。
特に注目をされたのは米上院の国土安全保障・政府問題委員会と財務委員会の二人の委員長が報告をした、ハンター・バイデン氏が役員(役員報酬月5万㌦)を務めるウクライナの民間ガス会社ブリスマのオーナーであるムコラ・ズロチェフスキーに対するウクライナ検察庁の訴訟を止めさせる工作*などにバイデン親子が関わった疑惑でした。
その後、バイデン副大統領がトランプ大統領就任直前(2017年1月)に6回目のウクライナ訪問。そしてバイデン副大統領はキエフで政府高官らに対して汚職・腐敗の一掃や民主化定着、ロシアへの抵抗を訴えていました。
(どの口で汚職・腐敗とか言っているのか…)
クリミア併合による日本への影響
バイデンのウクライナ重視の外交(反露)が強硬になればなるほど、ロシアの対米感情は当然悪化していきます。そして、このことは日本にも影響を与えます。
2015年5月にロシアは対独戦勝70周年記念式典を開いた際には親密だった安倍首相(当時)にも招待状を送っていました。
北方領土問題の進展を悲願としてきた安倍首相はプーチン大統領との親交を重視し参加を予定していました。
しかしクリミア併合に始まるロシア制裁に足並みをそろえていた日本以外のG7(主要7か国)諸国は欠席を決め、アメリカ政府も日本政府に対して「ウクライナ問題でG7の結束を維持するべきで、単独行動は良くない」と反対され、プーチン大統領の北方領土問題への熱は返還交渉から一転することになります。
米国メディアに民主主義が殺された日
「ウクライナゲート疑惑」における重要なポイントは、トランプ大統領は就任したばかりのゼレンスキー大統領に電話会談で、何を突き付けたのかでしょう。
トランプ大統領のこの電話についてホワイトハウス勤務経験がある元CIAの職員による内部告発によると、"外国の首脳に対し、特権を乱用して支援を凍結し、自分に有利な依頼をした可能性がある"とされています。
これによって"深刻もしくは重大な問題"で、"法律に抵触もしくは違反した"とされ、弾劾裁判の可能性が浮上したとされていました。
また弾劾裁判を避けるために議会の妨害をしたということも多くの反感を買いました。
この2点で弾劾裁判が行われる十分な理由となった訳ですが、結果的にこれを理由に弾劾裁判はトランプ大統領在任中には開かれませんでした。
バイデン大統領が就任(2021年1月20日)をした直後の2月9日、上院で弾劾裁判は始まりますがその内容は「連邦議会襲撃事件を扇動した」というものでした。
そう、バイデンの大統領選勝利という結果に納得できなかったトランプ支持者たちによって連邦議会が占拠された2021年1月6日のあの事件です。
トランプ大統領はTwitterで「(選挙を)盗まれた」と発言し、連邦議会議事堂を襲撃した暴徒たちを「特別な人々」と呼んだ動画なども公開され、Twitter社は同氏のアカウントを停止。
バイデン候補の勝利を認定する審議を中断させ、議員らは一時避難。幾人もの死者も出て、メディアは「米国史上、最も不名誉な日」として批難しました。
しかしこれこそがアメリカ・メディアによって民主主義が殺されたことを意味しています。
アメリカはBLM問題やポリコレを始め、今これまでにないほどの分断の渦中にあります。
アメリカ共和党は1854年の結党時左派に位置づけられエイブラハム・リンカーン大統領に代表される奴隷解放宣言など進歩主義だったが、20世紀前半頃から保守政党と民主党と逆転してきた変遷があります。
また民主党(民主共和党)はアメリカ独立宣言の起草者の一人でもある第3代アメリカ大統領トーマス・ジェファーソン(1743-1826)によって設立された現存する世界最古の政党で結党時には右派として設立されたが、20世紀前半から保革逆転現象がみられ今日の左派に至ります。
トーマス・ジェファーソンやジョン・ロックらによって起草されたアメリカ独立宣言の中には次のような『抵抗権』についての一文があります。
つまりアメリカ建国の理念として、政府が腐敗をした場合には人民自らの手によってその政府を倒す自由*が認められていて、また自らの自由*のために銃の保持が合法となっています。
(だからアメリカでは銃規制が進みづらい温床でもあるのだが…)
メディアがこの建国の理念を忘れ、自分たちにとって不都合な国民の行動を不名誉と呼ぶことは、自らの国民の権利の否定であり、アメリカ独立と建国の理念への否定でもあります。
多くの報道機関は当初、暴徒を「抗議者」と呼んでいましたが、その後「反乱者」や「反逆者」と修正。Twitter社も「抗議者」から「暴徒」と改め、ワシントンポスト紙もこれに倣いました。
公共ラジオ局NPRは彼らを「親トランプ過激派」、彼らの行為を「反乱」と呼び、ナショナルジオグラフィックもこちらに倣いました。
イプソスによる世論調査では議会襲撃の責任の一部はトランプ氏にあると考える人は71%でしたが、弾劾裁判で有罪になるべきだとの回答は50%、有罪反対派38%、分からないが12%でした。
2月13日、上院弾劾裁判の結果(無罪43:有罪7)は無罪評決となり、トランプ氏は「米国を再び偉大にする歴史的な運動は始まったばかりだ」と歓迎し、復権に意欲を示しました。
弾劾裁判での投票は記名式であることから、トランプ氏からの報復を恐れた人も少なくないとされており、党内におけるトランプ氏の影響力の強さを印象付ける結果となりました。
ウクライナゲート"疑惑"の結末
民主党にとっても、共和党にとっても「ロシアゲート疑惑」「ウクライナゲート疑惑」とそれに関わる様々な論争や抵抗はお互いの恥部を晒すことになるものとなりました。
民主党にとっては虎の子だったヒラリー・クリントンという東部出身のエリート。夫は元大統領、彼女自身もずっと目指してきたであろう初の女性大統領誕生とそれを輩出したリベラル躍進の象徴にしたかった目論見が失敗するどころか、彼女は再起不能となり、引退を宣言。
しかも、ロシアゲート疑惑によってリベラルの化けの皮が剥がれかけてしまい、ウクライナゲート疑惑によって決して民主党がクリーンな政党ではなく大統領が自分の家族に便宜を図るという平等主義とは真逆である、むしろ利己的で保守政党のような姿まで披露してしまいました。
最も悲劇的なのはウクライナにNATO加盟やら支援やらを散々ちらつかせてロシアから西側諸国へ近づけさせておきながら、いざとなったら助けないという姿には不信感を抱かずにはいられない人も少なくないのではないかということでしょう。
また共和党にとっても党内の親トランプ、反トランプという二極構造が露呈どころか分断までしてしまったことに加えて、連邦議会襲撃などという"暴挙を扇動した大統領の党"という悪印象が付いてしまいました。
これを払拭するのはなかなか容易ではありません。
一方でトランプだったらプーチンのウクライナ侵攻が起きないよう、または早めの停戦を説得できたのではないかという声も未だ根強く、しかしそのためにはまさに「ウクライナゲート」に対する大統領権限を使った政敵を陥れる行為、議会の審議を邪魔するなど数々のあの醜態を受け入れることが出来るのかという矛盾を抱えることになります。
こうしてアメリカ独立宣言に始まった"自由と民主主義(共和主義)"は民主党にとっても、共和党にとっても二重の意味で死を迎えたのです。
かつて激しい対立の中で奴隷解放を求めた北軍と、奴隷を使うことで成り立っていた南軍との対立によって今尚米国戦役史上最悪の犠牲者数を出したとされる南北戦争。
リンカーン率いる北軍は勝利し、その戦地でリンカーンは有名な「人民の人民による人民のための政治」を掲げ、アメリカの理念と民主主義とは何かを示しました。
今や人民のためというのはお飾りとなり、自分たちの私腹と利権をむさぼるためにお互いが足を引っ張り合っている有り様は"民主主義の死"以外の何物でもないでしょう。
しかし、こうした混沌と混乱の時にこそ、次の候補者というのは台頭してくるものです。
トランプ政権下で国連大使を務めたニッキー・ヘイリーは、分裂した共和党を統一できる現在唯一の候補者かもしれないと評価されています。
一方で民主党はバイデン大統領は1期(2021-2025)で降り、2024年の大統領選挙にはカマラ・ハリス副大統領が大統領候補として出馬するのではないかとされています。
となると、どちらも女性大統領候補ということで、どっちが勝っても女性大統領誕生になるかも?
しかし、もし仮に女性初のアメリカ大統領が共和党から出てしまったとしたら、民主党はヒラリー候補を失った事に加えて党としてのリベラルのお株まで再び奪われる事になってしまいかねません。
2024年大統領選挙はまだ少し先のお話ですが、この辺りも注目をしてみても良いかと思います。
左派から生まれ保守と合流した新保守主義
そしてこうした背景の中で民主党は「格差是正・平等」を掲げリベラリズム(左派)を、保守は「個人の自由」を中心とした伝統主義(右派)を掲げる二大政党制を取っています。
※国によって保守と定義するものや位置づけは異なります。
アメリカにおける二大政党制がアメリカ国民の混乱と分断をする理由としては、かつての左派・右派という白黒二分というわかりやすい位置づけではなくなっているためです。
1960年代頃のソビエト連邦との東西冷戦、その代理戦争として長引いていたベトナム戦争への反戦運動が高まり、社会主義への嫌悪・危機感が募りリベラリズム(左派)でありながら保守寄り(アメリカの自由主義を守ろう)の思想が分離(分派・派閥化)します。
リベラリズムでありながら保守ということからネオコンサバティブ、ネオコンと呼ばれます。
また人種差別禁止、貧困や有色人種への支援(格差是正)、同性愛者への権利を認めるなどの運動もこの頃に活発になり、保守にとってもリベラル寄りであることが支持者の票を集めやすいといった理由から保守の中からも左派寄りの議員たちも合流するようになります。
ネオコンはリベラルや保守よりも排他的で、自国の利益のためになるのであれば武力行使も辞さないという過激な思想を持っています。
アメリカの外交の伝統(保守)は"モンロー主義"*です。
アメリカの自由主義を社会主義陣営から守ろうとして生まれたこの反動思想の一つ*であるネオコンは、アメリカを脅かす脅威を取り除くための武力行使を正当化し、湾岸戦争、イラン・イラク戦争、ソマリア内戦、ボスニアヘルツェゴビナ紛争、コソボ紛争などアメリカ軍を世界中の戦争や紛争に駆り出しました。
ところが1991年にソ連が崩壊し、社会主義・権威主義が自滅すると自由・民主主義とネオコンは標的を失い一度沈静化していきます。(自由・民主主義の勝利ではない点に注意する必要がある)
政治とメディアと軍需産業が強く利害で一致したネオコンは、次の標的を求めたのです。
そしてネオコンが本格的に活動を再開したのは2001年9月11日のアメリカ同時多発テロだったとされています。
(テロが起きるのは中東やイスラムなどは権威主義で劣っているから)自由主義の理念を世界に広めるべきだというナショナリズムが高まりを見せ、アメリカの外交は積極的(軍事介入)に変容していきます。
そしてネオコンは左派でありながら保守寄り(アメリカの自由主義は正しい)の発想をしますので、保守の左派(自由のためには自由を脅かすものを排斥しよう)もここに合流するようになっていきます。
尚、リベラルの排他思想が社会主義、それが極度に進むと共産主義に至ります。
アメリカの政党、特に民主党の中にはこのネオコンと呼ばれる思想を持った議員が少なくないとされています。
テレビや新聞などでも良く登場する要職に就いているお歴々にはネオコンが多いとされている。それだけ権力を握っているという事でもある。
これまで触れてきたようなウクライナ危機、第二次世界大戦後の紛争・内戦、代理戦争などと組み合わせて考えると、民主党にしても共和党にしても国民に見せてはいけない腹の底がどんなものであったか。
それが「ロシアゲート疑惑」「ウクライナゲート疑惑」などの背景にはあったのは陰謀論でもなんでもなく、党派を超えた政治・外交思想と人権を無視した自己中心主義。
わかりやすさこそ正しさだと思考停止をした民衆の愚かさが、政治とメディアによって煽られて暴走を許した民主主義の成れの果てがウクライナ危機だとするならば、掲げられた自由の灯は本当に消えてしまったのでしょうか。
しかし死は、生の裏返しでもあります。
アメリカは宗教的に多くのキリスト教徒(プロテスタントやカトリック)、また世界最大のユダヤ教徒(ユダヤ人)が住む国です。
宗教的にイエス・キリストは磔刑によって時の権力者(ローマ帝国)によって処刑された後で、再び蘇り奇跡を示し2000年近く経った今も尚、世界中で信仰の対象となっています。
アメリカが本当に自由と民主主義の国であるならば、その真の意味での再生を果たせるのか。
ウクライナ危機による世界的な対立の中で、世界中がその動向に注目をしています。
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