📧歴史に学ぶ株式投資「死の時代」〜巨大IT企業バブルは終わったのか？㉘(お金Lv.11)

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<本編>

自立して学び、考える人は少ない

昔から「歴史は繰り返す…」と言いますが、投資の世界では「歴史は往々にして韻を踏む。」と言います。

そのまま全く同じことを繰り返しているのではないが、同じようなことを少し変えて現れると途端に思考停止して、結果的に同じような事に陥っているという人間の歴史を皮肉っています。

(元ネタは『トムソーヤの冒険』の著者マーク・トウェインの"The past does not repeat itself, but it rhymes."と言われている)

そうした意味で19世紀のプロイセン(現在のドイツ)の"鉄血宰相"ビスマルクのこの言葉は、まさに現代を生きる我々にとっての金言と呼べるでしょう。

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」

多くの人は学ばないのです。
厳密には学び続けないのです。
何を学ぶべきか、どこへ向かうべきか、自分の人生という船の舵取りをする手も思考も、ついでに心を動かす事も止めてしまっているのです。

受験や就職活動などの人生にとってのひと山目か、ふた山目を超えたところで学ぶ事を止めてしまう人が殆どなのです。

1970年代から欧米先進国ではリカレント教育に注目が集まり、就職をした社会人がアフター5や休日などのオフタイムに大学に戻って学び直したり、資格や知識・技能、教養を身に着けること(リスキリングRe-Skilling)が定着しました。

映画『Shall We ダンス?』(1996)は冴えないサラリーマン(役所広司)がひょんなことから
仕事帰りにダンス教室に通う事から物語が始まるが、これもアフタースクールブームの一端。
英会話、乗馬、ゴルフ…日本のバブル期の名残が微かに残っていた時代感が感じられる。

日本ではそれよりやや遅れてリカレント教育を「生涯学習」と呼び、全てではありませんがカルチャースクールの延長のようなイメージが定着しました。

昔から一部の人たちはやっていましたが、どちらかと言えば変わり者という印象で語られる事が少なくありませんでした。

私の母も今年70歳になりますが、55歳で小学校教諭を早期退職しました。そしてセカンドライフのキャリアを見据えた資格を取るために集中したいと家を出て都会の専門学校に通って日本語教師となり、海外赴任の国際ボランティアを経て、帰国後には大学院修士課程を修了。

そんなに勉強するのが好きになったのか

と、親族や友人らから言われたそうですが、本人はどこ吹く風。
うちの母は、やりたい事を自分の働いて得たお金でやっているだけです。

現在もそれに付随した仕事を大学と専門学校で非常勤講師でしており、二足の草鞋どころか、今や三足の草鞋で働いています。

その傍らで趣味のダンスと絵画のために教室へ通ってレッスンを受け…忙しい、忙しいと言っていますが、母は自分の人生を楽しんでいる人の一人だと私は思います。(父はさみしがっていますが…笑)

身近にこうした良くも悪くも空気を読まないGoingMyWayな人がいると、私などは一生かけて何歳でも学ぶ事(Lifetime,Learning)は何も特別ではなくむしろ当然のように思えてきます。

私もこのコロナ禍でFPとして、FAとしての知識やスキルを磨くため、大学の公開講座や同業の金融教育セミナーやオンライン講座またそれとはまったく別な技術を身に着けるために身銭を切って学んでいます。

読書も好きですが、やはり人と対話をするのが一番身に付くと感じる今日この頃です。

近年になって日本でもロンドンブーツ1号2号の田村淳、おバカ芸人として一世を風靡したつるの剛士ら芸能人や大手企業など働きながら学ぶ人への支援を始めたなどが報じられ他の人との差別化や生き残りをかけたスキルアップにやっと陽の目が当たるようになってきた傾向ですが、多くの面で日本はやはり欧米から私の感覚では少なくとも10～20年は遅れている印象です。

2位はロンブー淳「大学に社会人入学した」意外な芸能人ランキング（女子SPA！） - Yahoo!ニュース

つるの剛士　短大卒業＆“幼稚園教諭二種免許”取得に感謝「泣きそう…教員免許はとっても重いです」 - スポニチ Sponichi Annex 芸能

入学や卒業をする事、資格を取る事そのものが目的ではありませんが、こうした努力した人の見識や行動変容によって多くの一般の人たちにも生涯を通して学ぶ事の意義と社会的な後押しが普及することを個人的には期待しています。

こうした人たちがいる一方で自分で考えることを放棄して、「みんながやっているから」と長期の影響を調べる治験が終了をしていない効果の未知数なワクチン接種を高齢者でも基礎疾患があるわけでもないのに空気を読んで慌ててしたり。

みんながやっているからと投資の知識もないのにYouTubeでこう言っていた、ブログでこう書いていた、本にこう書いてあったと実に安直にiDeCoやつみたてNISAなどの投資を始める人たちもいます。

ドイツ人には「飛び込むのがルールです」、
ロシア人には「ウォッカの瓶が流れている」、
韓国人には「日本人はもう飛び込んだ」と言えば飛び込むらしい。
沈没船ジョークは国民性を良く表している秀作

何かあった時にまず慌て始めるのも、こうした人たちです。

毎度ですが、本題に入る前に少し寄り道をしたいと思います。

少し前にマツコデラックスさんが番組の中でこんなことを言っていました。

「結婚、出産、お金などわかりやすい幸せの共通認識をインスタでアピールして、いいねをもらうことで自分は幸せなんだって自覚してる。これは、幸せかは他者に委ねてる状態ね。でも私は他者を介在させずに、喜びを得ることが幸せだと思うわ」

【深い】マツコ・デラックスさんが「幸せ」について語った”コレ”が沁みる - とぃアンテナ

彼女(彼氏？)の言わんとしている事と一致するか分かりませんが、自分らしく生きるとか自分の考えに従って生きることが良いと言われながらそう生きようとする人をアウトサイダーや時にアウトロー、アウトレイジのような群れの中でうまく生きられない社会不適合者として排除しようとしますがこれが本当に生きづらさの根底にあると思うのです。

指摘されている通り他人に自分の幸せを委ねる生き方もありますが、自分の幸せには自分で責任を持つ必要があると私は考えます。

幸せであるかどうかはそうした多くの人が経験することだけではなく、本人が自分の生き方や人生をどう捉えているのか。生きてきたのか(生きていたのか、生きていくのか)こそ本来最も尊重されることでしょう。

こうした事と投資の世界、金融の世界における自立、または自己責任(自分次第)という言葉こそ私はとても近い場所にある価値観だと思うのですが、多くの新参者の投資家たちはこの事を未だ理解していないのではないでしょうか。

株価下落で米国株式投資の推奨者たちを批難する愚者たち

どんなことにおいてもそうですが特に投資、資産形成の世界において絶対はありません。

巷では「米国株式*に黙って投資をしていれば資産が増える」とまるで確定事項のように喧伝するYouTuberやブロガーなどが後を絶ちません。

*ダウ30種工業平均やS&P500、NASDAQと連動するインデックスファンド

中には「投資はS&P500(またはNASDAQ100)だけでいい」などと豪語するメンタル剛夫つよおもいます。
加えてこうした人たちの中にはIFAを名乗る人たちもいるから厄介です。

そしてその分かりやすさと歯切りの良さを正義のように礼賛するにわか投資家たちが◯キブリか、ハ◯タカ、ハ◯エナのように湧いています。

しかし、ここ最近は株式市場が軟調というよりも、下落基調からなかなか盛り返してきません。

昨年から指摘され始めていた世界的な物価上昇インフレーションの加速、今年2月に始まったロシア・ウクライナ危機、そして終わりが未だ見えてこない新型コロナウィルス感染症による自粛からの本格的な経済の再始動…

自らも株式を用いた投資家として本も出版して、米国株式市場への投資を熱く語っていたお笑い芸人でIT企業経営者というマルチな才能を発揮していた厚切りジェイソン氏。

米国株式市場が年始来の軟調および下落基調の続く状況に対して同氏のTwitterには批難の声が殺到したようで、これが直接の原因かは明言を避けられていますが、同氏はTwitter投稿を削除するという事態が5月には報じられました。

厚切りジェイソン“SNS投稿全削除”の真相は？ 米国株下落に飛び交う憶測 - まいじつ

そもそも「投資は自己責任」です。

他人がああ言った、こう言ったなど自分の考え以外をアテに投資など絶対してはいけない"はず"ですが、こうした文句を言う人は単に批判をしたいだけか、自立していない、本質的に投資に向いていない人たちなのかもしれません。

だからもし、同氏がTwitterのアカウントを閉じるに至ったことがこうした人たちの無視すべき声が原因だとすると非常にモラルの低いにわか投資家の餌食になったことに同情を禁じ得ません。

また同氏に限らずですが、米国株式市場(だけではなく世界中の株式市場がそうですが)への投資を推奨していたYouTuberやブロガーなどが目先の軟調な相場や下落基調の相場を実に短期的に観て青ざめたり、慌てふためている有様にメシウマ、残念を通り越してあきれるばかりです。

阿鼻叫喚のレバナス投資家の現在

特にガッカリしたのはIT企業などの新興企業が多く上場している米国NASDAQの株価指数に連動したレバレッジ*をかけた"レバナス"と呼ばれるファンドに投資をしている投資家たちです。

ブル(牡牛)は角で突き上げて攻撃するため上昇、
ベア(熊)は腕を降り下ろして攻撃するため下落を意味している。

*インバース(1倍)やレバレッジ型は倍率も2倍、3倍とブル型(上昇)とベア型(下落)がある。2倍のブル型の場合はNASDAQ100が3%上昇すれば投資家は6%得をする仕組み。逆に2倍のベア型はNASDAQ100が3%下落すればファンドは投資家は6%得をする仕組み。当然、予想と逆に動いた場合には損失も2倍、3倍になる。

老後資産のためにレバナスをやらないなんて負け組確定などと月数万円を投じていることをドヤって早くあなたもレバナスをやった方がいいと自分達の養分になることを煽って殿様イナゴにでもなった気分でいた人たちが、今や繰り上げ償還がいつ執行されるのかと今更のように戦々恐々としている阿鼻叫喚の様は実に観ていて爽快なほど目も当てられないほどです。

ｻﾞﾏﾐﾛﾆﾜｶﾄｳｼｶ( *´艸｀)ﾀﾆﾝﾉﾌｺｳﾊﾐﾂﾉｱｼﾞ(・∀・；)ﾎﾝﾄｳﾆｲｲｾｲｶｸｼﾃﾙﾖﾈ

100万円が16万円になる悲劇…大損した投資家が今年に入って買っていた"ある投資信託"（プレジデントオンライン） - Yahoo!ニュース

人気の「レバナス」が暴落！ 金融庁も指摘するレバレッジ型投信のリスクとは

そもそも長期・分散・積立を大前提としている投資信託での資産形成において、短期売買で運用を前提としている金融機関の手数料稼ぎのための先物取引やデリバティブなどの仕組みを利用したファンドを誰彼構わず購入できる状況を放置している証券会社も金融庁も酷いものです。

(そもそも先物取引の手数料は本来非常に安く、投資家から資金を集めてロットを大きくしているなら尚のこと安いはずなのに高コストの信託報酬を取るのはボッタクリの口実にさえなっていない矛盾を晒し購入している個人投資家の無知を馬鹿にしているとさえ言っても過言ではない)

https://www.fsa.go.jp/user/20211119tyuikanki.pdf

ですが、最終的な責任は全て投資家自身にあります。自己決定の元に行っているのですから、タバコを吸っていて健康を害して、煙草を売っているコンビニやスーパー、たばこメーカーなどを訴えるというのは気持ちはわかりますがお門違いと感じるのとよく似ています。

ニュース「喫煙による肺がんは自己責任？それとも企業責任？」 : 企業法務ナビ

しかし何故FXといい、バイナリーといい…手を変え品を変えしているだけでいつまでも同じことを繰り返しているのでしょうか。

ｺｷﾔｸﾎﾝｲ(=´∀｀)ﾄﾞｺｲｯﾀ(*´Д｀*)FDﾅﾆｿﾚｵｲｼｲﾉ

にわか投資家の大きな声や素人ほど多い短期的な利益(値上がり)追及の傾向、そしてわかりやすさというのは長期で資産形成を目指す場合のノイズでしかありません。

(始めて数年で利益が出ているということに一喜一憂する事は積立投資にとって何を意味しているか本当に理解できているのでしょうか？)

『株式投資の未来』で過去を語る詐欺師たち

株式投資というのは未来に向けてするもので、過去に投じるものではありません。

だから過去こうだったというのは決してアテにしてはいけないのです。(確証バイアス)

敬虔な神父様という役柄ほど
怪しい存在はないよね…(Fate/Stay night)

インデックス運用信奉者の中には、"ウォートンの魔術師"の異名を誇るペンシルベニア大学大学院で金融論のジェレミー・シーゲルという教授の書かれた一冊の本があり、これを教典のごとく敬っている人たちがいます。

Jeremy James Siegel(1945-)

(実際、聖書のように分厚い…)

株式投資の未来～永続する会社が本当の利益をもたらす

たとえば米国株式市場…もしこのグラフの起点である1801年に1㌦ずつ5つの資産に投資したら2001年(200年後)にどうなっていたのかというものです。

尚、1㌦(少額)で投資できるようになったのは1976年に入ってバンガード社でインデックスファンドが始まってからなのでこれはたらればの話です。

ジェレミー・シーゲル著「株式投資の未来」より

様々な資産タイプがありますが、株式市場が持続的な成長資産であるという説明に利用される、過去の実績を示すには打ってつけの証券・資産運用業界にとっては実に都合の良いグラフです(笑)

確かに株式というのは企業が資金調達をするための手段であり、企業というのは利潤の追求を永続的に行う仕組み(複利的)ですからこのグラフから読み取れることは過去の実績であり結果で、一面では間違っていません。

ところで1801年に投資を始めた人って今、何歳でしょうか？

フィデリティ証券が米国で投資をして最も資産を築いた人の調査を発表したことがありました。

1位　既に亡くなっている人
2位　投資した事を忘れていた人

忘れ去られたポートフォリオが優れた結果を出す | ライフハッカー［日本版］

子や孫などのために資産を築きたい人にとってこれは大変参考になる話かもしれませんが、自分たちの世代のためと考えるのであればこれは笑い話にはなりますが、実用的ではありません。

またよく投資のバックボーンとして使われるセールストークにはこんなものもあります。

「人の欲求は際限がなく、常に欲求を満たすために企業活動が行われ消費や生産などが繰り返される事で人類は今日まで経済的な成長を続けてきた。」

これは未来の話をしていません。過去そうであったと言っているのです。
そして証券外務員やIFAたちはここに個人的な意見を付け加えます。

--だから私はこれ(株式市場の持続的な成長)が今後も続くだろうと思いますが、〇〇さんはどう思いますか？

投資家にバトンが渡されています。

これは投資家自身の考えに基づく、自己責任が問われているのです。

あなた自分でそうだろうって考えたから投資したんですよね？という事です。

誰かがそう言っていたからそう判断したというのは言い訳でしかないという投げかけです。

またこの前提がそもそも狂い始めているというのは別な記事で散々紹介した通りです。言わずもがな、常に反論や反証は自らの頭で考える必要があります。

どんな企業も確かに利潤を追求し、日々頭を駆使しています。
しかし利益を永続的に上げ続ける事ができるでしょうか？

ここでは冒頭で触れたような米国株式市場を例に挙げたいと思いますが、企業活動は生ものです。事業はやってみなければわかりません。

働いたことのある人であれば誰しも経験があるでしょう。
何をやってもうまく行かない時もあるということを。

人口(パイ)が増え、経済が活性化している時には放っておいても消費者はどんどんお金を使ってくれますので企業業績が好調というのは自然な事です。

しかし人口が減り、高齢化が進み消費が縮小均衡に陥るとどうなるでしょうか？

景気が悪くなれば消費者の財布のヒモはきつくなり、消費を積極的にしなくなってしまいます。すると賃金はどうなるでしょうか？すると消費活動はどうなるでしょうか？

米国株式市場は確かにこれまで長期的な成長を遂げてきました。しかし景気の浮き沈みは当然にしてあり、時には悲観的な時代もありました。

未来は果たしてどうでしょうか？
それは誰にもわからないのです。

アメリカは人口も増えていますが、高齢化率も日本や中国、韓国、そして欧州のように急速に高まってきています。そんな中で世界における影響力に陰りが出始めていることが各所から懸念されています。

そして中国の台頭、近い将来のGDP逆転までのカウントダウンが2027〜2030年前後と差し迫っています。

またインドが中国を抜き2030年前後には世界一の人口大国になる事が近い将来、予想されています。

日本では2021年81万人の新生児が生まれ、少子化が加速していると危惧されていますが、インドでは2,200～2,500万人の新生児が1年で生まれています。

しかしそのインドでさえコロナ禍の影響も手伝って人口置換率である合計特殊出生率が2.1を下回り、従来は2060年前後と予想されていた人口のピークアウトが2040年代前半に前倒しされ人口減少社会に突入していくことが危惧されています。

世界の高齢化が促す低金利(The Economist)（写真=ロイター）

https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/researchfocus/pdf/13160.pdf

19世紀がイギリス覇権国家パクス・ブリタニカの時代であったように、
20世紀はアメリカ覇権国家パクス・アメリカーナの時代でしたが、21世紀はアジアの時代。
また22世紀はアフリカの時代です。

第二次世界大戦後は米国が常に世界経済の中心にいました。
そしていよいよ、その転換期に差し掛かっているとする声もあります。

パクス・アメリカーナの終焉？ | 小浜裕久

そして人類が始まって以来の大逆境、世界人口減少の時代(THE GREAT DEMOGRAPHIC REVERSAL)に、どの投資家も米国株式市場に上場しているから、これまで米国経済と株価は成長をしてきたからという理由だけでインデックスファンドで運用を続けるとは何を意味しているでしょうか。

多くの人が大好きな過程を省略した結論だけ言えば、多くの人がインデックスファンドで投資をすると日本の株式市場のインデックスファンドのように世界の株式市場までもが価値反映の機能不全を起こすことをむしろ加速させてしまうのです。

皮肉なことに日本は上場企業同士の株式持ち合いや単元株制度、株主優待制度という独自の商習慣と官製相場、みんなが買ってるから私も買おうという集団思考停止と世界最先端の少子高齢社会の到来と人口減少社会の加速によって、全く事情が異なるのにも関わらず世界の株式市場の未来にいち早く辿り着いてしまったのです。

ビックテックバブルは終焉したのか？

米国の中央銀行であるFRBが物価上昇を抑えることを目標として政策金利(短期金利)をコントロールします。

急激な金利変動は株式市場などへの影響が大きく日本のバブル崩壊のような状態を招きかねませんので、通常は0.25％～0.50％(25～50bpsベーシスポインツ)ずつの引き上げ・引き下げでゆるやかに調整をして行きます。

今年3月に0.25%(25bps)、そして5月に0.50%(50bps)、更に6月には1994年以来24年ぶりとなる0.75％(75bps)を引き上げ、更にコロナ直後からのゼロ金利政策(量的緩和)から金融引き締めへと政策を大転換したことになります。

そしてこれは2007年のBNPパリバショック、サブプライムローンショック、世界同時金融危機に始まり、2008年にリーマンショックとして記憶されている量的緩和Quantitative Easingの本格的な終了局面(量的引き締めQuantitative Tightening)に入るということでもありました。(taperingと呼ばれる。)

そして一見すると債券(金利)が上がると、株価は(将来の期待キャッシュフローが圧迫されるため)下がるというセオリー通りの現象が始まったかに観えます。

どこに起点を取るかによりますが、2007年の世界同時金融危機として考えればおよそ15年、何度かの大きな下落や暴落を乗り越えて世界の株式市場は大きく膨らんできました。

そのけん引役は、日本ではGAFAとかGAFAM、最近はTESLAを加えてGAFAMTガーファムティーなどと呼んだりしますが米国株式市場に上場する巨大IT企業ビックテックの存在です。

つみたてNISAなど個人投資家の間でもこうした企業を含むS&P500と連動するインデックスファンドは大変人気だそうですが、そのS&P500からGAFAM5社を除いた参考指標S&P495はTOPIXと同程度の騰落率ということで、実質的に今日の株高はGAFAM相場と呼ぶことができそうです。

※2020年5月、東証1部(TOPIX)時価総額をGAFAM5社の時価総額が追い越す

確かにインデックスファンドだけでなく、今や多くのアクティブファンドの運用レポートを観ていてもその構成比の上位にビックテックが入っていないことはかなり稀です。

ビックテックを構成銘柄にある程度の比率を入れてないとパフォーマンスの見劣りが生じることで投資家から見られてしまうため入れざるを得ない状況に資産運用会社さえ追い込まれてしまっていると言えます。

そして振り返るとこうしたバブルと呼ばれる現象は長短こそあれどほぼ定期的に訪れ、投資市場に新たに参加した初心者投資家へ洗礼を与えてきました。

今日のビックテックバブルがいつ弾けるのか…

リーマンショックの水準を超え、株高が加速し始めていた2012年頃から観てもトランプ政権誕生(2016)や米中経済対立(2018)、コロナショック(2020)…何度もそのたびに過去のバブルと比べられてきました。

今、足元だけを見ればGAFAMのような巨大企業が没落する事など想像しづらいという人もちょっとこれまでの歴史を振り返ってみてほしいのです。

世界三大バブル崩壊

今日の株式市場の原型はヨーロッパやアメリカで金融市場の誕生と共に始まります。

その本格的な始まりはオランダ・アムステルダム証券取引所でした。
そしてオランダと海運ではライバルで、時に同君連合だったイギリスでも金融の仕組みが政治・外交・経済と社会の中に高度に取り入れられていきます。

しかしいつの時代もお金が増えるという事に対して、多くの人たちが目の色を変え、加熱していくと冷静と客観的思考が失われていくのは変わりません。

貿易や新大陸の開拓・開発をする株式会社にさえ、投資をすればお金が増える…仕組みはよくわからないけど、投資をすれば…私もそれに一口乗れば…そうして南海泡沫事件、ミシシッピバブルは起き、投資家は目も当てられないほどの惨劇に見舞われます。

*この泡沫事件が語源となり、バブルと呼ばれるようになる。

またトルコからの交易で欧州にやってきた花の球根は菌の繁殖によって花開くまでどんな模様になるか分からず珍重されます。そのランダム性が射倖心を煽って、球根の価格は高騰。

球根一つの値段が家よりも高いこともあったほどの狂乱ぶりをもたらしたチューリップバブルも起こります。

証券取引所、そして先物取引所の設立によって市井の人々の殆ど誰もが参加できる社会環境がいち早く整ったが故にその悲劇(あるいは喜劇)は起きました。

世界三大バブルはいずれも加熱しすぎた投棄熱によって熱射病のごとく人々にトラウマを植え付け、ヨーロッパでは国によってバブルの引き金となった資本主義の権化とも言える株式会社の設立に制限を設けた国もあるほどです。

三大バブル、そして日本のバブル崩壊は以下のページがわかりやすく漫画で解説しているので学びたい人は参考にしてください。

ペペラのバブル物語〜経済＆金融バブルをわかり易く解説〜ペペラのバブル物語〜経済＆金融バブルをわかり易く解説〜

1929年、ウォール街大暴落

投資の世界において、靴磨きの少年と銀行家の話はあまりに有名です。
過去に取り上げましたので参考リンクだけを掲載しておきます。

1970年代、NF相場とバフェット開眼

現在の状況に最も近いとされている過熱感は、1962年9月～1974年6月までの「ニフティ・フィフティ相場」だとされています。

Nifty Fifty(素晴らしい50銘柄)

ニフティフィフティ企業一覧と教訓

フィリップモリス、ファイザー、ペプシコ、GE、ジレット、ジョンソン＆ジョンソン、P&G、コカ・コーラ、テキサスインスツルメンツ、マクドナルド、3M、アメリカンエクスプレス、IBM、ウォルトディズニー、ゼロックス、イーストマンコダック、ポラロイド…

マクドナルド兄弟からレイ・クロックが1961年に騙して買収、
1966年7月に上場。世界最大のハンバーガーFCに変貌したMcDonald's

マクドナルド 米国VS日本 徹底比較　100万相当分を買っていれば・・・ | いま、注目のテーマ | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア

実際に50銘柄の指標*が作られていたわけではないのですが、その顔触れには今のGAFAMTなどを重ねるのも無理はない米国を代表する企業が名を連ねています。

*インデックス運用が始まったのはこの直後の1976年になってから。

飛行機のエンジン、発電所、病院のCT装置、かつては家庭向け家電製品なども扱っていた。
エジソンの電気実験室が原点の20世紀最大のコングロマリットGE社

これらの銘柄さえ持っていれば一生安泰、この企業が傾いたりすることが想像できない…

何処かで聞いたことがあるような言い回しですが…そう言わしめた当時のアメリカを代表する50銘柄ですが、こうした優良企業に投資マネーが集中したのには当時のアメリカの時代背景もあったと考えられます。

ニフティ・フィフティ銘柄は第二次世界大戦が終わって、戦勝国として戦後を迎えた米国での好景気とベビーブームに後押しされ、旺盛な消費が好循環をもたらしアメリカが最もアメリカらしかった1950年代Fifty'sを背景に、企業業績は過去最高益を次々に叩き出すことから始まりました。

瓶の自動販売機…栓抜き穴が装備されている。
今の若い人は使ったことない人も多いのでは？
ペプシコは1919年、コカ・コーラは1972年に上場、

あまりに旺盛な消費量に供給が追いつかず物価は上昇、人々は貯蓄するだけでは価値が目減りするために資産の積極的な消費と投資先を探していました。

DinersClub、VISA、MasterCard、アメリカンエキスプレス…今日の原型となるクレジットカードの誕生した時代でもあり、ローン金利にはある制度が適用され大量消費・大量生産が社会的にも奨励された時代でした。

1960年代に入ると人々は生活に少しのゆとりができ始め、誰もが知る有名企業で、これらの企業が大きく将来に向けて成長していくことが想像しやすかった成長グロース株へそうした家計の余剰資金が流入し、大相場を構成していきます。

1960年代の出来事(Wikipedia)

こうして観ると特に家計の余剰資金が集まっているのがグロース株である点も含めて今日のコロナバブル、GAFAMTや米国株式への資金流入とよく似ていることが分かります。

しかし「ニフティ・フィフティ相場・・」と呼ぶように、この相場には終わりがやって来ます。

1970年代に訪れた世紀の大転換ニクソンショックと二度のオイルショック、物価上昇の加速。

物価高騰を抑え込むために始まった政策金利(FF金利、短期金利)の利上げ(1979年11.2％→1981年20％)によってこの大相場は沈静化…これまでの11年9カ月の上昇相場が嘘だったかのように成長株は下落、そして長い低迷の時代に突入します。

好調なニフティ・フィフティ相場になってから投資を始めた人たちからは「株式投資、死の時代」と呼ばれ、不調期はおよそ16年4ヶ月も続きます。

しかし株式市場全ての銘柄がこの間ずっと沈んでいたわけではありません。
代わって主役に躍り出たのはその前の時代をけん引し、ニフティ・フィフティ相場では「負け組」と呼ばれていた資産株(公益株)でした。

代表的なのは電気・ガス・水道などの公共料金のようにどんな状況であっても一定の消費がされる企業の株式の評価が見直されます。

またその中でも高配当の銘柄に注目が集まるようになります。

(金利の上昇していく債券利回りと比べられ、債券より高い利回りに加えて株価の値上がり益の両方が期待されるため)

今日でいえば食料品・日用品や医薬品などのセクターがこれに近い対象と言えるかもしれません。

また資産株という名の通り、資産としての価値が現在の株価より割安とされる株、つまりグロース株に対するバリュー株という側面もあります。
(ウォーレン・バフェットが好む銘柄ですね)

これを期間と騰落率に置き換えた図がこちらです。

ピクテ投信の資料より

この図の非常に興味深いのが米国の株式市場は成長グロース株一辺倒ということはなく、資産バリュー株と交互に入れ替わりながら持続的な株価の成長をしてきたことが分かります。

殆どの個人投資家は見落としているか忘れているか、またはないと信じたいのですが知らないかもしれません。投資信託というのは原則的に目論見書で開示されている運用方針に基づいて運用を行っています。

そしてこれを勝手に途中で変えるということはできません。

特にインデックスファンドなら対象となるインデックス(指標)が、その銘柄の算出ルールを見直さなければ変わりません。

一方でアクティブファンドはファンドマネージャーの裁量次第で日々、機動的な変化が可能で、そのために投資家は信託報酬というコストをインデックス運用よりも多く負担しています。

また定期的な目論見書の差し替えがされたり、月次レポートなどでこうした運用方針の変更のアナウンスも報告・開示されています。

ここ最近のアンダーパフォームがさんざん叩かれたが、結局優秀なFMがいる運用というのは
長期投資をするうえでとても重要であることを改めて教えてくれるアクティブファンド。
個人的には今後の復調、逆転劇に期待したい。

(日本だと一年に一回は黙っていても更新されるがはっきり言ってコストの無駄である。全てWeb閲覧でいい。冊子は必要な顧客が送料込みで買えばいいのにと思う)

アクティブファンドだから必ずそれが十分に機能しているとは限りませんが、腕の立つファンドマネージャーはそうして銘柄をスイッチしながら相場の波を乗り越える運用をするために汗をかいているのです。

またグロース株が好調な時に、バリュー株はよくこんなことを言われたりもします。

バリュー株はいつまで経っても、割安バリューのまま

しかしこうした歴史的に長い視点で捉えると、これがある一定の相場の中だけを指した近視眼的な発言であることが分かります。

幼い頃のウォーレン・バフェット
6歳の頃にはコーラ(瓶6本セット)を25セントで購入し1本5セントで売る。
高校時代には理髪店に中古のピンボールマシーンを設置してコインを稼ぎ、
新聞配達で稼いだ資金と合わせ卒業までに53,000㌦の投資資金を構築した。

株式投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェット(1930-)の名言の中には「株式投資には忍耐が必要だ」とあります。

彼が10歳で株式投資を始めた時に最初に学んだことはコレだったそうです。
まさに「忍耐」こそ、投資の神髄ではないでしょうか。

そして若き日のバフェット氏はある一冊の本と出逢い、その著者らが大学で教鞭を取るコロンビア大学ビジネススクールに入学し、師事します。

彼が師事したのは世界恐慌で痛手を負ったことから開眼したとされる"バリュー投資の父"ベンジャミン・グレアム氏でした。

ベンジャミン・グレアム(1894-1976)

そしてニフティ・フィフティ相場の時代、バフェット氏は割安だった紡績会社バークシャー・ハサウェイを買収し、今日の投資会社(保険会社)への業態変革に乗り出します。

1962年、32歳で紡績会社バークシャー・ハサウェイの株主となる。

ニフティ・フィフティ相場が崩壊した1970年代には師の代表作であり、自らを師の元に導いた著書『賢明なる投資家』(初版1949)の改訂版の編集を入院した師匠から依頼されて手伝います。

そしてニフティ・フィフティ相場後に訪れたグロース株の不調を他所にバリュー投資が快進撃を発揮した時代に、師の代表作の改訂を託されるほどの信頼を勝ち取り、40代の脂の乗った柔軟性と思考力の高まる時期に誰よりも近い場所でその慧眼を磨いたのです。

会長ウォーレン・バフェット(91)と副会長チャーリー・マンガー(98)
2022年4月30日の株主総会で3年ぶりにそろって登場。
バークシャーの弁護士だったマンガーは「私にも投資ができるかね？」と訊ね、今日に至る。
バフェットとは異なる視点で市場を観る右腕であり頭脳とも呼ぶべき最強のパートナー。

ウォーレン・バフェットの経歴

バフェットの相棒。投資家は、「チャーリー・マンガー」の言葉を読もう | 東証マネ部！

2000年、ITバブル崩壊と教訓

1929年の世界恐慌のきっかけとなったウォール街大暴落や1970年代のニフティ・フィフティ相場からすれば随分最近の話になりますが、2000年頃の状況も振り返っておきたいと思います。

当時のアメリカを始めとした世界の株式市場もまたバブルに浮かれていました。

(日本は不良債権処理に追われて沈んでいたが、団塊世代が50代となって労働力という点では実は最盛期に差し掛かろうとしていた)

一人一台のパソコンが普及し、インターネットで世界中の人たちとつながり情報が爆発的に増え広まっていったこの時代の株式投資は株価の爆上がりに個人投資家は狂喜乱舞していました。

今となっては信じられないかもしれませんが当時は「Webページ(ホームページ)を持っている企業はITに強い」と多くの個人投資家が大真面目に信じ込み、Webページを持っているだけで上場企業はITバブルに乗って株を買ってもらえ株価が爆上げだった時代です(笑)

Webページ一つでその企業がITに強いかどうか…そんな事が詳細に分かるはずがありませんが、当時の個人投資家たちは大まじめにそうした口コミ(ミーム)を信じ株を買い、そしてこの世の春を謳歌しました。

中には経営者(社長)以外の役員の顔写真も出ていない企業はダメとか、写真は右向きか左向きか、または腕を組んでいるか、手を組んでいるか、ネクタイの色は…でどんな人物であるかまで分析する占い師のような人たちまでいて持て囃されていたほどです。(そういう心理学的な研究もあるらしいが)

そしてバブルが弾けてから、この時のITバブルの狂乱を「ドットコム・バブル*」と皮肉を込めて呼ぶようになりました。

*WebページのURL"***.com"に由来。
ダウ30種工業平均は33％下落、S&P500は49%下落したが、
ハイテク銘柄の多いNASDAQは70～83%下落。
個別株ではAmazonは前々年の高値から株価が94.4％まで下落した。

https://finance-gfp.com/?p=316
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h15/html/F1201200.html

ITバブル崩壊時のAmazon株大暴落に学ぶ「グロース株」投資のヒント｜@DIME アットダイム

一方で有名な話ですが、株式投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェットは自分が良く理解できないものには投資をしないという投資哲学を持っています。

Microsoft、Apple…今でこそこれらの企業の大株主ですが、当時のバフェット氏はこうしたITバブルで高騰する銘柄には見向きもしなかったといいます。