📧日本ではバブル崩壊の犯人探しとして日本人の働き方がやり玉に⑥(2019年4月)

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年功序列、終身雇用…日本型と呼ばれる働き方が欧米の「職務主義」に倣って見直された結果、導入されたのが「能力主義」 に代表される平成の働き方です。
この 能力主義、ベンチャーや営業・サービス業などの一部でうまく行った面がある一方で、その他の多くの業種や職種では日本の労働環境のブラック化を加速させたと揶揄される事があります。

　今日に続く日本型の働き方の歴史は大正時代に始まったとされています。
海外からの文化や技術を積極的に取り入れ欧米列強に追いつけ追い越せと日本の近代経済が形作られていく過程で、海外からの輸入には莫大なコストがかかりました。
日本でこれらを国産化・量産化できれば大幅なコストを抑えることが期待出来ました。
そこで一定の教育を受けた学生達を囲い込み、学校教育の延長として就職させて企業が「育てる」という現在の新卒一括採用の原型が生まれたとされています。

新卒一括採用と育成には莫大なコストがかかりますが、長期的には様々なメリットがあると判断された結果、年功序列という仕組みが誕生します。

先輩が後輩に教え育てる、育成を担当する先輩は上司となり、育成の手当として役職手当が支給されるようになります。
彼ら(技術や特許など)が流出しないために企業は従業員の雇用を守り、定年退職までの雇用が約束され終身雇用と呼ばれる働き方が誕生しました。

米国流「職務主義」？日本流「能力主義」？

他方、日本が参考にしたという米国流の働き方は「職務主義」でした。
日本における「能力主義」と何が違うのでしょうか？
様々な仕事が出来るAさん、一つの仕事しかできないBさんがいたとします。
仕事Cを与えた時に様々な仕事がこなせるAさんに多くの給与を支払うのが日本型の「能力主義」です。

仕事Cに対して同じ仕事をしたのだから
AさんもBさんも同じ給与を支払うのがアメリカ型「職務主義」です。

アメリカでは日本のように定期的な人事異動が殆どありません。
会社が従業員を育てる気はなく、会社から成長の機会が与えられる事もありません。
会社にとっては与えた仕事をこなせる能力のある誰かで良いので、不景気や仕事がなくなればレイオフ(雇い止めだが、会社が景気回復すれば元のポジションに戻って来られる制度)やリストラを当たり前のようにします。

このため昇給や労働条件を改善したければ資格などを取って転職など自ら動く必要があります。年次の昇給もないので転職が当たり前に行われるようになっています。
人に支払う日本型、任せた仕事の遂行に対して給与を支払うアメリカ型。
日本人はこれを「能力主義」という独自の方式に解釈・変換して導入しました。

日本流「能力主義」の失敗した理由

「結果を出した人を評価して昇給させる」という“能力主義 の導入は景気の悪化していく企業の経営者にとっても都合が良かった面があります。新卒一括採用や育成というコストを自社でかけず、能力のある人を引き込むことができたので転職市場は活性化して昇給。当人にとってもメリットがありました。

しかし①新卒一括採用→②育成→③年功序列→④終身雇用という雇用モデルの各所を省略したために、一面では成果を出す人がその後社内で通用しなくなる事が頻発します。

転職後にその省略した部分を補う機会が与えられず、自らの手でそれを身につけることもまた放置されてきました。
年功序列、終身雇用では膨大なコストと時間をかけて培ってきた社内資格、昇給試験などのプロセスを経ていたために年齢と共に身につけられてきたハズの様々な物を削ぎ落として昇進をしたため、部下を十分にマネジメントできる人材が残っていないなどの事態です。

近年立て続けに起こっている大手企業の凋落はこれら「能力主義」を「結果至上主義」とも捉えられかねない、人ではなく結果しか観ない点、そしてそれが終身雇用と結びついて残り続けたために大きな課題を抱えています。

イチロー引退会見にも観られるデータ至上主義の蔓延

先日、現役選手としての引退を発表したイチロー選手が記者会見の中で非難を覚悟でこんなことを話していたの記憶に新しいところです。
「データ(打撃の角度やスイングスピード、ボールの回転数など)ばかりをみて、選手を観ていない。人よりデータが上位にいる」と今日のメジャーリーグの現状を厳しめに指摘していました。

プロの世界にいるのですから、結果が全ての評価と言えばそれまでです。
結果が出せないのだから引退だと言えばそうですが本当に結果だけで語れるものでしょうか。
結果という数字だけで全てを語ることが出来る世界は意外と少ないものです。

転職回数が多い人ほど年収が低い！？

日本の雇用環境は今も崩壊しかけているとは言え未だに終身雇用を前提としており、転職回数が０回と１回まではある程度の年収が高い傾向や上昇する傾向にあります。
回数を重ねるほど年収は下がりやすくなる傾向にあります。

欧米では”A rolling stone gathers no moss.(転石苔むさず)”を転職や転居などを繰り返すほど忙しい人は活動的で良いとする言葉がありますが、同じ言葉でも日本では苔むすまで止まる事を美徳とする意味として使われる事の方が多いのではないでしょうか。

社会環境や時代の変化によって転職が容易にできるようになった一方で、転職理由に自己都合が多い方は本当に何故転職が必要なのかを理解していません。

2019年4月1日から始まった「働き方改革※」

日本の新時代に、我々の仕事と生活にどのような影響を与えるでしょうか。

『ライフシフト』グラットン教授の提言する日本の働き方改革の肝は女性

『ライフ・シフト-100年時代の人生戦略』の著者で、スクール・オブ・ロンドンの組織論と心理学のリンダ・グラットン教授は日本の総理大臣主催の「人生100年時代構想会議」のパネリストとして招かれ、日本人の働き方と生き方、教育など多方面に様々な提言をしています。

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

日本的終身雇用制度は、男性を中心モデルとした働き方で、３ステージの人生(学習・労働・老後という３つのライフステージ)がなじみづらい女性の生き方・働き方にとって、適切な役割を果たしていない。

これからの女性は、男性向けの３ステージの人生に社会的変化をもたらす可能性を秘めている。
女性にも「仕事」はあったが、「キャリア」はなかった。
女性は、今キャリアを望んでいる。
女性の参加は社会的な変化をもたらし、
変化の触媒的機能を果たし得ると話しています。
https://bit.ly/2TY9bWw

どんなに女性を登用しようとしても現実問題として男性と男性的な働き方をしてきた女性が中心の社会で生きてきた人が作るルールでは、世の中の多くの女性にとって本当の意味での働きやすい社会になりません。

妊娠、出産、育児、親の介護･･･日本ではこれらのライフステージの変化に女性が対応する場合がまだまだ少なくありません。
その度にキャリアが中断し、その度に収入が大きく変動する女性の働き方は今後の日本を左右する大きな問題です。

ここが変だよ、誰のための幼稚園無償化？

2019年10月から産前産後の国民年金保険料免除の特例が本格的にスタートしました。
学生の免除特例と同じく加入期間には含まれますが、将来受け取れる年金額には反映されません。 10月からは幼稚園無償化が始まります。
何のために始まるのでしょうか？
3歳以上で全国に待機児童は存在しません。
本当に困っているのは保育士一人当たりの手がかかる0～3歳までの乳幼児にこそ子どものいる共働き世帯困っているのに、幼稚園無償化で結果的に喜ぶのは一体誰でしょうか。

保育士不要な社会こそ本当は目指してほしい