📧電動キックボード解禁～自賠責と任意保険、過失割合と弁護士費用のお話⑬(2023年06月後半号)

2023年4月の改正道路交通法によって自転車に乗っている人のヘルメット着用が罰則なしの努力義務になりましたが、これと連動して7月1日から電動キックボードの新ルールが適用開始となります。

電動キックボードは自賠責加入が義務化
任意加入の自動車保険(バイク保険)については後述

自転車のヘルメット着用もそうですが、罰則がないから付けないではなく、自分の身は自分で守れというルールに代わってきていることを我々はきちんと受け止め、事故に遭わないための最善の努力と意識を持つ必要があります。

今回は電動キックボードの歴史と合わせて交通事故にあった際、加害者になってしまった場合の自賠責保険(強制保険)と任意保険の考え方、また加害者だけでなく被害者になってしまった場合にも一方的に不利とならないための過失割合と過失相殺について考えてみたいと思います。

普段、自動車を運転する人だけでなくこれからは自転車に、電動キックボード、その他に歩行者が歩きスマホなどで事故に遭ってしまうケースがますます増えてくる危険性があります。

加害者にならないことはもちろんですが、被害に遭わないため、また遭ってしまった時にきちんと自分の身を守るための常識をアップデートしましょう。

電動キックボードの歴史

電動キックボードは「特定小型原動機付自転車」に分類され、いわゆる原チャリに分類される中でも小型で特定の乗り物です。

黎明期セグウェイ

スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾスなどが
「人間の移動形態を変える革命的な製品」と絶賛したが…。

歴史的に電動キックボードは2001年にアメリカで登場したセグウェイから派生したジャンルになりますが、日本では公道での走行は禁止されており私有地などで例外的にアクティビティとして楽しむものという位置づけでした。

当初はアメリカのamazon.comなどで5,000㌦(当時の日本円レート換算で約60万円)で販売され、アメリカの一部の警察などで貸し出され、NASAなどでもセグウェイの小さな体重移動による走行技術や姿勢制御技術を宇宙用ロボットに応用しようと躍起になっていました。

ところが当時のブッシュ大統領が父ブッシュに誕生日プレゼントにセグウェイを贈ったところ、起動中のセグウェイに搭乗しようとして転びそうになったことをきっかけにイメージが悪化。

ソフトウェアの不具合と後に判明、
全車両のリコールで経営が悪化

セグウェイ社は2009年12月に英国の資産家・起業家で軍事用のヘスコ防壁で有名なジミ・ヘゼルデンに買収されますが、2010年9月にセグウェイで犬の散歩中に林道から約9m下の川に転落して亡くなる不慮の事故が発生。

ヘスコ防壁を広げる海軍工兵
土を中に詰めれば土嚢となり、詰めるものによってコンクリート以上の
強度を誇る防壁を短時間で築くことができる

セグウェイで川に転落死のセグウェイ社長

成長期Ninebot

経営者の不慮の事故の後もセグウェイ社の開発は続き、重心移動と走行性能を昇華させた電動一輪車が登場。

しかしセグウェイ社は直後に2015年4月、中国上海に拠点を構えるシャオミー傘下の新興企業「Ninebot Inc.ナインボット インク」に買収され、セグウェイという社名に代わってNinebotは一躍世界中から注目を集めるようになります。※Ninebot One(発売当初:約22万円)

スマートフォンからロボット掃除機、電気自動車まで手掛ける
中国総合家電メーカーXiaomi、先行する中国版GAFAである
BATH(Baidu,Alibaba,Tencent,Hauwei)を猛追、時価総額は2020年に1000億㌦突破
対米で槍玉となったHuaweiを除いてBATX(バットエックス)と呼ばれることも。

普及期Maas

2015年以降、世界的に公共のバスや電車などのが排出するCO2の負荷を軽減する方法の模索が本格化すると一人一人の移動ニーズにどう対応するべいっかの議論が各国でされるようになりMaasマース(Mobility as a Service)と呼ばれる新しい移動手段への注目が集まり、欧米などの都市部を中心にシェアリングサービスが普及を始めます。

Maasの一つとして日本でもそれまでの「所有」から「シェア」へ価値観が大きく変わりました。

代表的なところではカーシェアリングやシェアサイクル、また米国などではUber(白タク)による移動シェアリングが2010年代には大きく普及しましたがその流れの一環にセグウェイやNinebotの電動一輪車もありました。

また世界的には2000年前後の頃に子どもから若い世代を中心に流行したキックボードを電動化した電動キックボードがこの2015年頃から急速に普及を始め、現在では世界の主要都市を中心にシェアサービスが展開されています。

やや意外と思われるかもしれませんが、平成14（2002)年11月に警察庁交通局から発出された文書において電動キックボードは道路運送車両法上の「原動機自転車」（原付）に該当すると定義されています。

ただナンバープレートや走行速度、ランプ等のルール整備までは追い付かなかったためにセグウェイを含む電動キックボードは公道を走ることができなかったのです。

日本での実証実験

日本ではセグウェイの頃から道路交通法によって公道を走ることは違法とされていましたが、こうした流れを受けて2021年4月から東京都や横浜市などの一部地域で実証実験が開始され、Luupループ社などの電動キックボードが駅前などで借りられるようになりました。

これらの実証実験を経て、ヘルメット着用義務を罰則付きにしてしまうと電動キックボードの普及の足枷になってしまうと判断され、努力義務(罰則なし)でかつ16歳以上は無免許で運転ができるようになりました。

また2025年11月以降に原付自転車免許の必要な原付一種*が欧州で2009年に策定された「ユーロ5」と呼ばれる排ガス規制の世界的な流れを受けて日本でも「令和2年排出ガス規制」(第四次排ガス規制)の対象として生産終了となり、免許不要で普及の進む電動自転車やこれら電動キックボードまたは小型限定普通二輪の免許が必要な原付二種**への移行が進められています。

*最高速度30km/h、二段階右折・二人乗り禁止の白ナンバープレート
**最高速度60km/h、二段階右折不要・二人乗り可のピンクナンバープレート
いずれも16歳から免許取得可能

※2025年11月以降は125cc以下の原動機付自転車に制限リミッター付きで50cc以下とする新しい車両が発売開始となる予定で、原動機付き自転車の免許は廃止とはならない予定で動いている。

https://young-machine.com/2022/11/26/403432/?gnmode=all

強制保険と任意保険

電動キックボードも原付もバイクも自動車もすべて「車」扱いとなり、自動車損害賠償責任保険(通称:自賠責保険)への加入が義務付けられています。また自賠責保険は強制保険と呼ぶこともあります。

そして上図の通り、自賠責保険は補償の形がデコボコしています。

日本で自動車が本格的に普及期に入った1955年における国内の自動車は150万台。1956年の年間交通事故死者数は6000人、負傷者10万人となり、交通事故被害者の救済を目的に自賠責保険は強制加入の保険となりました。

よって自賠責保険で補償されるのは自分が運転者だった場合に他人を事故によって死亡や負傷させた場合で、人身事故に限られています。
また運転供与者(車の所有者・運転者)は対象となりません。

またその支払額には上限が設けられており、被害に遭われた方の年齢や職業、生涯でこれから稼いで得られていたであろう逸失利益や傷害にかかる治療費を考慮するとその保険金額で補償されるのは十分とは言えないことが少なくありません。

2020年にライプニッツ係数は変更され保険金額は増額傾向にあります。

更に加害者の車に乗っていた同乗者も自賠責保険の対象にはなりますが、事故の被害者にとって不足であるということは同乗者にとっても不足な場合があるということです。

加えて当たり前といえば当たり前ですが、賠償責任保険とは相手に対しての損害を補填するもので自分自身の損害を補填するものではありません。
よって事故加害者(運転者)自身の死亡やケガは補償の対象になりません。
また車の所有者は同乗していても補償の対象になりません。

こうした自賠責保険では不足する超過部分の補償を補うものとして民間の損害保険会社が提供する「自動車保険」(バイク保険)に加入をすることが任意で求められています。

そしてこの自賠責保険では足らない部分や、運転者や車の所有者のケガや治療費を補償をする保険を「人身傷害保険」(略称:人傷じんしょう)と呼びます。

特にバイクは生身の体が相手車両や道路、壁、人に激突しますので一度の事故で一生残る後遺症を抱えるリスクもあります。

私の高校時代の友人の中に、26歳の時に起こしたバイクの単独事故を起こした人がいます。

※動画はイメージです。

事故、残念ながら下半身麻痺となってしまい、彼は任意保険に加入していませんでした。

老親に生活を支えられる状態に、一瞬にして奪わてしまったのです。
(この事故は私が保険を仕事とするきっかけの一つとなったのですが)

また自賠責保険は「対人」が対象なので、電柱やガードレール、交通標識、塀や家やお店、相手の車などを壊してしまった場合の「対物」に対しても補償の対象になりません。

※イメージです

これも私の学生時代の友人の話ですが、ある峠を運転中に車の操作を誤ってガードレールを突き破って崖からダイブした事故もあります。

その友人は幸いにも無事だったのですが、車を崖の底から引き上げるのにかかるクレーン車等の費用はもし加入していれば任意保険の対物補償から支払われることになります。

自賠責部分を超えた部分を差し引いたとしても、免許を取りたての20代とかがもし事故で一生働けないような状態や、生活に支障のある障害を負ったとしたなら、その損失は場合によっては2～3億円超とか必要じゃないでしょうか。

年齢にもよりますが保険料を比較する際には必ず、実際に見積書を比べてみてください。この程度の差であれば無制限の方がとならないでしょうか。

何歳の年齢の人を乗せて運転するのかは人によって異なりますが、自動車保険でもっとも保険料がかかるのは「車両保険」の部分です。

そして車両保険の加入率は新車やローンを払っている間を除き近年、著しく低い傾向にあります。

しかし車両保険はとても大切な保険です。車両保険と過失割合については過去にも記事を書いたので、より詳しくはこちらをご参照ください。

対物の費用ってどれくらい？

ここからは「対物補償」について書いていきます。電動キックボードを購入し運転される方は対物や人身傷害などの補償を検討の参考にしてください。

他人の物を壊してしまった場合には、賠償責任を請求されます。

自動車事故における賠償ができる保険は自動車保険のみとなっており、個人賠償責任保険などでは補償されません。

※工事費用や人件費等は近年、物価上昇の影響を受けて高騰してきています。

損害保険であれ生命保険であれ保険について考える際、多くの人が自分にとって想像のしやすい身近なリスクに対しての備えを前提に考えようとしますがこれは保険でなくても良い備え方です。

保険は上図D「起こる頻度は高くないが、一度でもそれが起きると経済的に取り返しの少ないリスク」に対して、リスクの肩代わり(移転)に備えることに最も効果を発揮します。

そもそも預貯金で最初から何とかなるリスク(上図BやC)なら、わざわざ保険で備える必然性がないのです。

コンビニに突っ込んだ

一例ですが、コンビニ大手のセブンイレブンは日販*65万円、ファミマ・ローソンは約50万円です。

*日販＝全店平均の一日の販売額(売上)

2021年度のデータ

事故を起こした車が仮にコンビニに突っ込んでしまってお店のドアなどを復旧するまで1週間の営業ができなかったとすれば、廃棄することになったお弁当や総菜などの処分費用に加えて休業中の売上損失(人件費と休業補償)、修理費用以外に加害者は様々補填する必要があります。

しかもお店によっては日販以上の売上がある場合は当然、そちらで請求をします。

ガードレール

パイプ型のガードレールは1mにつき10,000～20,000円ですが、一か所がへこむと前後のガードレールの柱部分も曲がってしまったりするため支柱を含めて3～4mセットで修理する必要があります。

一般的なガードレールだと20,000～50,000円。これに加えて工事費用や人件費(取付中の交通整理など)や日数が上乗せされるため、費用は30万円を超えることも。

交通標識

一つ40～50万円もします。警察の天下り先になっているからともいわれていますが…。

ETCのゲートバー

1本6.5万円ですが、左右2本組であるところも少なくありません。
ということで13万円と工事費っ…()

遮断機本体

バーはETCレーンのものと変わらないくらいの値段であることが多いようですが、遮断機にぶつかってしまった…本体は約50万円、設置工事費用は別途。その他に鉄道会社からその間の賠償請求が…うっ…()

パーキングゲート

精算機とセットになっていることも多いこれ。
壊すとゲートは工事費込みで約30万円前後。精算機は約100万円前後です。
その他、工事中の清算のために人件費や、コインパーキングなどだと閉鎖における損失を…うっ…()

コインパーキングのロック板

一つ20万円前後。工事費・その間の休業損害も別途かかることも。休業損害ってそこに駐車している料金相当額が…過去の売上の推移からとはいえ恐ろしい金額になる場所も。

カーブミラー

本体は1つ2～4万円ですが、掘削・舗装費用を加えると20万円超になることも。

電柱

一般的な街中で見かける14mタイプだと1本8万円ほどですが、折れた電柱の撤去費用や新たに埋設する工事費用を含めると20～60万円。更にケーブルの切断があると別途費用がかかります。

またその際に例えばお店や住宅が停電してしまったりした場合には別途、休業補償や臨時で暮らすためのホテル代などの費用が復旧までの日数に応じて発生することもあります。

信号機

LEDタイプで14万円前後とかつてよりもかなり価格が抑えられるように…。

しかし信号機そのものよりも支柱や電柱横などにある制御装置を壊すと250万円以上…。

更に設置作業にはクレーン車などが必要となり、1台壊すと最低でも400万円前後になることも。

歩行者用信号機や矢印信号などもついている場合にはそれらも併せて修理することになると500万円を超えることもあります。

自動販売機

25種類(3段)タイプで約80万円、大型タイプだと200万円前後になることも。

公衆電話ボックス

電話機本体は約30万円、しかし電話ボックス全体となると…()

過失割合・過失相殺

交通事故では事故の加害者・被害者の当事者双方の不注意・落ち度を「過失割合」、過失割合に応じて損害額を相互に負担しあうことを「過失相殺」と呼びます。

基本的に駐停車中(時速0km)以外の、動いている車同士の事故の場合には、ぶつけた・ぶつけられた側がありますが双方に責任が何割かずつはあると考えます。

たとえば似た状況でも追突の原因が上図の赤い車の急ブレーキだった場合、過失割合は7:3となり、赤い車の運転者は3割の過失を負うことになります。

赤い車と青い車の損害額(修理費用)がどちらも100万円だった場合、赤い車の運転者は修理に3割(30%)の自己負担が発生し、残りを青い車の保険(対物)から支払ってもらいます。

一方の青い車はぶつけた側のため自身の車の修理の7割(70%)は自己負担となり、3割は青い車の保険(対物)から払ってもらいます。

自損事故だけでなくこうした時に、自分の車の持ち出しとなる修理費用を補償するのも「車両保険」の役割の一つです。

その他、豪雨などによる車の水没も車両保険の対象事故の一つ
(冠水時は漏電する危険性があるのでエンジンは切って！)

また交通ルールに従って青信号で直進・左折してきた車が優先となっています。よって単にぶつけた側が悪いではなく、これに違反をしていた方の過失割合が大きくなるようになっています。

例えば道路幅の大きい道を走る車が優先される原則もあるため、上図のような道路では青の直進車が優先となり、もし赤の車が左折しようとした場合には青の車の通過を安全に待たなければいけません。

〇割の割合で表現することが多いが、近年は%で表現することも増えてきた。

人身傷害と搭乗者傷害

また過失割合と過失相殺は事故による治療費や慰謝料などにも同様に影響を与えます。

しかし任意保険の「人身傷害」はこの過失割合の影響を受けません。

但し、障害が症状固定となるまでに事故から180日以上など非常に時間がかかるため、この間の治療費等を補償するのが「搭乗者傷害保険」になります。

自賠責保険があるから任意保険は不要と思っている人や補償を削ろうとしている多くの人はお金が場合だけでなく、過失割合・過失相殺の仕組みを理解していないことが少なくありません。

(そもそも自動車保険にさえお金がきちんと払えない人は万が一の時に責任を取れないのだから、車を運転してはいけない人でもある。事故さえ起こさなければいいという考えは甘え)

車対歩行者の事故

ここまで基本的に車対車での過失割合を話してきましたが、車対自転車、車対歩行者においても過失割合があります。

自転車も車両として扱われるため、ここまでの内容と同じです。

また車対歩行者の場合も車という鉄の塊は凶器にもなりますが、車が交通ルールを守っていて、歩行者側が信号無視や歩きスマホで違反をしていると交通ルールを守っていなかった側が過失割合を負担することになります。

三井住友海上が事例として紹介しているいくつかのケースを例に挙げてみたいと思います。

①歩行者信号は青信号なので0:100、②車は青信号で歩行者は黄信号(点滅は新たに渡ってはいけない、渡っている場合は速やかに横断を終える)なので30:70、③は共に黄信号なので20:80、④信号がない交差点で横断歩道は歩行者がいるものとして車は通過しなければいけないため0:100

また歩行者が車道と完全に分かれている歩道を歩いている時に、車が歩道に入ってくるケースでの事故も0:100です。

また横断歩道が近くにあるのに横断歩道以外を渡ったことによる事故は以下の通り。

横断歩道ではない場所で⑦のような歩行者の状態を黄信号と判断するケースは少なく、概ね⑧のようなケースと考えられますが歩行者が車と比べて圧倒的に事故の場合に弱いとしても過失割合は30:70となります。

また幹線道路などのような交通量の多い道路(対向車との間にセンターラインのある道路)で横断歩道まで距離があるために横断歩道以外を渡っての事故であっても、横断歩道まで歩いて渡るべきと歩行者側に過失が認められるため30:70になります。

言い換えれば歩道と横断歩道以外での事故は歩行者にも過失があると考えられることになります。

また車がバックしてきた場合は車との距離によって過失割合が変わります。車とは安全に横断する際に適切な距離を確保しておくことが大切です。

【交通事故の過失割合】車と歩行者の事故をパターンごとに解説｜三井住友海上

交通事故の過失割合は「判例タイムズ」という裁判の判例をまとめた雑誌があります。

損害保険会社で働く人や保険募集人でもないと見る機会が少ないかもしれませんが、裁判は判例主義のため過去に類似の訴訟があった場合にはそれを踏襲しますので覚えておくと良いかもしれません。

判例タイムズ社 ホームページ

歩きスマホの歩行者過失は？

事故の背景を説明すると長くなるので、参考リンクを乗せておきますが、近年世界的に増えている歩きスマホ(歩きながらの通話を含む)。

地図アプリを見ようとして、または音楽アプリの操作のために目線を…。
中にはイヤホンやヘッドホンで耳をふさいで周囲の音が聞こえない状態なんて人も少なくありません。

まさかFacebookやTwitterやInstagramを見るだけでなく投稿しながらや、TikTokやYouTubeなどの動画を見ながら歩いているなんてツワモノ(?)も、もしかするといるかもしれませんが論外ですね。

マナーとしての問題もありますが、これがきっかけとなった交通事故は「歩行者の側に安全を確認する注意義務を怠った重大な過失がある」と判断されたケースがあります。

歩行者側の過失割合は原則1割と、横断歩道以外を渡った事故に匹敵します。

またこの割合は車の運転者が走行中にカーナビなどを操作しようとして、または携帯電話を操作しようとしてなどの不注意事故(よそ見運転・ながら運転)と同じ扱いになっています。

しかし悪質、常習的な状態だった場合や重大な事故だった場合、社会的にこうした事故が増えると多くの人に警鐘を鳴らすために2割などに引き上げられていく懸念があります。

「ながらスマホ」「歩きスマホ」の交通事故過失割合はどうなる？

ドライブレコーダーと付加価値

かつては交通事故の様子は現場に居合わせでもしない限りどちらが信号を無視したのか、スピード違反だったのかなど警察の事故調査結果に大きく影響されていました。

ドコモなどの携帯電話回線を用いるため、月額費用はかかるが事故対応がスムーズ
また煽り運転などでの緊急時にもセコムなどが駆けつけるサービスを付帯する場合も。

しかし現在ではドライブレコーダーを設置している車も増え、事故前後の映像が記録として残ることで自分が交通ルールを守っていたことなどを立証するのにも役立てられています。

自動車保険の会社によってはドライブレコーダーを取り付けていることによる割引を受けられる場合もあり、今や自動車の約50%はドライブレコーダーを取り付けているとされています。

2022年　全国カーライフ実態調査（第4弾）～ドライブレコーダー搭載率、昨年よりも上昇し○％に。 平均価格は？ ほか

弁護士費用特約のススメ

自動車保険にさえ加入しておけば大丈夫と考えている人もいますが、ここまで触れてきたように自動車事故・交通事故に関しては「過失割合・過失相殺」という問題があります。

交通事故は被害者側が損害賠償を求めて基本的に民事裁判を起こし、警察の調書や双方の保険会社が事故の状況からお互いの過失割合を決着するために行われます。

また事故を起こした加害者の罪を計るために刑事裁判も併せて行われることもあります。

裁判所が発表している令和3年「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」によると交通事故裁判は途中での和解(示談)を含めると約13.3か月、判決が出たもので約18.6か月かかっています。

また交通事故の場合には、示談交渉が行われることもあります。裁判で判決が出ればその結果を覆すことは保険会社もなかなか容易ではありません。

裁判の長期化は弁護士費用もかさみ、相手に支払う保険金額に事故当日から起算しての遅延損害金(2020年3月改正で年率5%→3%)や、お互いにとって良い事が殆どない*ため示談金を支払うことで和解(取り下げ)するのです。

*敗訴すれば保険金が受け取れなかったり、保険金額が減額されてしまいこれを覆すのはかなり大変なため。

示談交渉の金額は裁判で決定する金額のおよそ半分～1/3程度。

普段の何でもない状態であればこれに被害者側は何のメリットもありませんが、もしこれが事故によって後遺障害などで働けない状態や療養が必要な状態、被害者が亡くなってしまって家族の生活が激変してしまっていたとしたらどうでしょうか。

裁判の判決が出るまで待てない…そんな状況も考えられるのです。

(遅延損害金は示談では支払われないのが一般的)

事故によるショックやダメージも抱えながら、裁判で争うのは余程の気力がなければなかなかできません。

※イメージです

しかも相手は海千山千、数々の裁判を何度も経験している損害保険会社で、被害者の多くは初めて交通事故被害にあったメンタルも、肉体もボロボロの個人です。

弁護士に通常依頼するとかかる費用は「着手金」「報酬金」「手数料」「法律相談料」「顧問料」「日当」「実費」と多岐にわたり、相談料は1万円/時間が平均的な相場で、相談料や着手金の多くは持ち出し(先払い)となります。

仮に裁判で保険金額を受け取ったとしてもこうした費用を負担したことで、実際に手元に残るお金が大きく減ることがないように弁護士費用(成果報酬などを含む)を300万円まで補償する「弁護士費用特約」があります。

弁護士費用特約には自動車保険に付帯の場合には自動車事故に限定したものと、日常生活でのトラブル時にも利用できるものがあります。

また自動車を所有していない、自動車保険に加入をしていない場合でも損害保険会社が提供する傷害保険や火災保険などに特約で弁護士費用保険を付けることができる場合もあります。

日常生活において他者に損害を与えてしまった場合の保険としては「個人賠償責任保険」がありますが、こちらは自動車事故や火災事故以外での日常生活の中で相手に与えてしまった損害に対しての賠償をする保険です。

弁護士費用保険は法律相談等も含まれていますが、メインは困った状態になった時にきちんと確保しておきたい賠償金額を大きく減らさないためのもの。

もし自動車保険に加入していて弁護士費用保険に加入していない方は中途付加(中途更改)もできますので、自動車保険や火災保険など損害保険の担当者に確認をしてみてください。