📧VUCAとOODA、変化の時代に求められる自己投資と資産形成⑫(2021年4月)

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皆さんは「VUCA」、「OODA」というキーワードを聴いたことがありますか？

「VUCA」はVolatility,Uncertainty,Complexity,Ambiguityの4つのキーワードの頭文字を取って「ブーカ」と呼ばれ、2010年以降の予測不可能な状態を指します。

Volatility…(ボラティリティ)変動性・不安定さ

科学技術の急速な進歩によって、世界の在り方はかつてと比べ物にならないほどの変化を遂げています。

代表的なものはインターネットの爆発的普及とSNS(ソーシャルネットワークサービス)の登場によって、これまでのビジネスや政治・思想・思考の伝播の形がかつてないほど変動するという状態です。

「インフルエンサー」など多くのフォロワーを有する存在の発言力が大きくなり、またそのプラットフォーマー(そのシステムやサービスを利用するための仕組みを提供する側)が個人の関わりだけでなく、世界のビジネス、政治や思想、民衆の言動や行動にまで多大な影響を与えることが浮き彫りになってきています。

トランプ前大統領がTwitterで扇動した(などと報道されることが多い)ことでホワイトハウスに隣接する連邦議会議事堂へ支持者らが不正選挙を訴え占拠するなどの混乱も起こり、果てはTwitterのアカウント永久停止、FacebookとInstagramの無期限停止が取られる事態にまで発展しました。

しかしプラットフォーマーがその言論を自社のSNS上に掲載するべきかどうかのボーダーライン(利用規約の判断と言論の責任の境界線)は曖昧で、暴動を扇動したなど一部だけを切り取って因果関係を判断することは言論や思想の自由に対する抑圧や制限ではないかとしてあまりに大きくなりすぎたプラットフォーマーへの危機と警鐘も露出しました。

また投資においてもインターネットがもたらす影響は多大で、「〇〇の銘柄(業種など)が上がる」などインフルエンサーである殿様イナゴ投資家の発信するブログやTwitterを鵜呑みに、群れイナゴ*・泣きイナゴ・佃煮イナゴと呼ばれる食物連鎖に相当するピラミッド構造が、初心者投資家(ビギナー)など情報弱者を食い物にして利益を得る手法などが目立ち始めています。

*海外ではハイエナ投資家などと呼ばれる。

情報弱者(情弱)という言葉の意味は今や、何も高齢者やコンピュータを持っていない人・インターネットなどの情報へアクセスできない人やそれらの操作が苦手な人という意味だけでなく、玉石混交の氾濫する膨大な情報を鵜呑みに、自分で考えるということができない人や自分の意見や考えを持たず流される人という意味に変わりつつあります。

Uncertainty…(アンサートゥンティ)不確実性・不確定さ

自国第一主義を掲げるトランプ前大統領の登場やブレグジット(英国EU離脱)に代表される保護主義の台頭は第二次世界大戦以前への回帰を一面において招きました。(反グローバリズム)

また何十年に一度規模の自然災害の大量発生・世界規模での気候の変動など予測不能な出来事が一度起きるとドミノ倒しのように世界のビジネス・経済・政治など様々な面に波及してしまいます。

2020年に発生した新型コロナウィルスの世界的な流行(パンデミック)は先行きの見えない不確実性から、2020年2月半ばに世界中の株式市場で記録的な暴落をもたらしました。

これに対して世界各国が未来に向けてどのように取り組んでいくのかという連携の一つもSDGsやESG投資という側面もあります。

詳しくは落合陽一氏『2030年の世界地図帳』をご参照ください。

２０３０年の世界地図帳　あたらしい経済とSDGs、未来への展望

またコロナ禍の陰で日本では十分に報道されていなかったアフリカ・中東で同年に大量発生したサバクトビバッタによる蝗害(こうがい)は、通り過ぎた後に地域の食物が食べつくされるなど食糧危機にも発展しました。

新型コロナ・ウイルスによる感染で亡くなるよりも食糧危機で亡くなるという悲惨な状況が国・地域によっては発生しました。

2020年のこの大量発生は過去例にないほどの規模となり、火炎放射器で焼き殺すにしても規模が広大すぎて対処のしようがないとお手上げの有様でした。

Complexity…(コンプレクシティ)複雑性

既存の枠組みを飛び越えた個人や組織の課題、業務は一層の高度化・複雑化が進んでいます。

個人の使っていない住居を貸し出して収益を上げるAirBNBに代表される民泊や、個人の自動車での移動時間に相乗りをして収益を稼ぐ(いわゆる白タク)Uberなどの登場はこれまでに考えることができなかった新しい働き方(ギグ・エコノミー*)と言えます。

*「ギグ」とは、音楽業界で活躍するアーティストなどが行う、その場限りの単発ライブを指す言葉。「ギグ・エコノミー」はここから転じて、インターネットを介して単発の仕事を受注することを指します。

また個人が不要なものを個人間で売買する中古販売業やフリーマーケット・オークションサイトは以前から存在しましたが、メルカリなどの登場によってその垣根は大きく変化しました。

海外では個人が銀行口座を持っていない国や地域も存在しますし、固定電話の回線網の整備が行き届く前に、携帯電話の普及が進んだことでリープ・フロッグ(蛙飛び)のイノベーション(リバース・イノベーション*)が登場。

独自のビジネスが誕生し「サードウェーブ」**と呼ばれる新しい潮流となってきている企業も大きな存在になりつつあります。

*リバース・イノベーション…先進国発のイノベーションではなく、新興国・途上国で現地のニーズを汲み取ってゼロベースでの革新的商品・サービスが起こること。

**サードウェーブ…GAFAに代表される巨大IT企業がけん引するアメリカン・デジタル、BATHに代表されるチャイナ・デジタル。それに続く第三の潮流の事。

代表的な事例としてアフリカで携帯電話会社が手掛けるMPesa(エムペサ、Pesaはスワヒリ語で「金」の意味)という金融ビジネスです。

アフリカの多くの国では前述のように電話回線網が国内に十分に敷設されておらず、個人の銀行口座を持っていない国民も多い途上国でした。

しかし欧州で使い終えた中古携帯電話・基地局アンテナ(3G)を安く輸入して、国内の固定電話網が整備される前に携帯電話が普及しました。これによって通信回線を維持するためにかかるコストが安く、広い範囲をカバーできるようになりました。

またプリペイドのSIMカードが普及しており、家族で1台の携帯電話、一人一人がSIMカードを挿し替えて利用します。ここに使っていないプリペイドの通話料を個人間でトレードするというやり取りが独自に普及。これを金融ビジネスとして銀行に代わって行う仲介業として通信会社Safaricomが登場しました。

先進国では銀行口座の開設は金融業が独占的に行っていることが一般的ですが、発展途上国や後進国では独自の発展と進化をしています。

アフリカは人口が急増しており、地球上のラストフロンティアとして2050年代以降、現在の中心であるアジアから新たな世界経済の中心となる可能性があるとされています。

MPesaなどはこれらは先進国という既存の価値観・ビジネス慣習からは想像しづらい創業の形と言えるかもしれません。

Ambiguity…(アムビギュイティ)曖昧性・不明確さ

商品(プロダクト)サイクルの短縮に伴い、次々と新しい商品が登場する中で企業の経営戦略もかつての成功体験を宛にすることは難しい時代となっています。

そのビジネスが将来成功するかどうかは誰にもわかりません。ましてや過去の成功体験を活かしづらい時代には、次に何が成功するか読めないだけでなく、5年後10年後にどんなビジネスが世界的潮流を作るか予測しながら経営戦略や投資戦略を狙うことは不可能です。

このビジネスは成功するだろうか、継続的なビジネスとしてなりえるだろうか。

この曖昧な未来の果実を得る手法としてアメリカ・カリフォルニアを中心にベンチャーキャピタル(VC)がスタートアップ企業に大規模な資本を投じて企業の成長の促進を目指すという投資方法が注目を集めました。

近年では大手企業が上場したての新興企業やまた上場前の企業をM&Aして、事業ポートフォリオの多角化するなど、収益の柱を分散する企業経営にも表れ始めています。

この事例は近年であればGoogleが収益化が始まる前の動画配信サービスYouTubeを創業わずか2年以内に買収した事例や、facebookが立ち上がったばかりのInstagramを買収した事例なども挙げられるでしょう。

今や投資を専門としているVCだけでなく、資本力のある大企業が次のビジネスチャンスのためにスタートアップ企業をバックアップしたり、育てることも珍しくない時代となりました。

ライセンスビジネスでパーソナルコンピューターのOSなどの独占を1990年代に実現したMicrosoftも方針を大転換。同社二代目CEOスティーブ・バルマー氏は「オープンソース(Linux)*はソフトウェア開発におけるガン」とまで酷評していたかつての評価から一転。

*システムを動かすプログラム(ソースコード)を公開しているもののこと。ソースが無償公開(オープン)されることによってシステム開発者は誰でもそのシステムの開発・改良ができる利点や普及のハードルが低くなり、多くの利用者へ低コストまたは無償で提供できる。反面、ライセンスによる収益化がされないことからライバルに複製されたり、競合となるデメリットもある。

新しいイノベーションを起こすためにオープンソースを推奨するGitHubをM&A(2018)して、企業や開発者を育てるという新しい方針へ転換しました。

またこの事例の中で世界の様々な分野で注目を集めているのがダイバーシティー＆インクルージョン（D&I)です。

日本企業がかつて世界一の経済的成功を収めたバブル経済時代(1980年代後半)から、30年超に渡る経済停滞に陥った一因としても取り上げられ、アメリカ西海岸などを起点に人種や性別・言語や価値観などの多様性が次の成長の種として注目されています。

発展途上型のPDCAサイクル

これまで日本企業、特に大手の製造業が得意としてきたのがPDCAサイクルでした。

Plan→Do→Check→Actionを順番に行っていくという意味で、製造業などでは参考となる過去のデータなど前例を基に品質管理を行ったり、納期管理・工程管理など様々な面で重宝しました。

しかしこのPDCAの大前提である過去のデータが参考にならない時代が、VUCA時代です。

計画を立てたけれど、その計画(前提条件)が破綻してしまうような変動性や不確実性、状況の複雑化や不明確性が起こる時代ではこのPDCAサイクルに従っているだけでは計画倒れや臨機応変な対応が困難な局面が増えています。

たとえばコロナウイルスの流行が世界的に広がっているとなった場合に、その終息時期や経済活動の再開を正確に見通して生産調整を行ったり、雇用の弾力化を図ることは容易ではありません。

前年対比120%の目標を立てた後に、もし前提とする状況が変わったにもかからわず生産を強行するとどうなるでしょうか。

VUCA時代に求められるのは常にPDCAではなく、臨機応変な対応ができるOODA(ウーダ)と呼ばれるループとされています。

VUCA時代のOODAループとPDCAサイクル