【反戦反論3】ウクライナ危機~欧州の欺瞞とウクライナの2つの顔⑭
ロシア・ウクライナによる停戦交渉(ベラルーシ)は三度行われましたが、未だ停戦合意には至っていません。
3月10日に侵攻後初の外相会談がトルコで行われると発表され、停戦への模索交渉が続いている点が今や両国と周辺国、そして見守る世界各国にとっての微かな希望となっています。
それだけでなくウクライナ側の交渉団の一人がロシア側のスパイであったとして射殺されたとの報道までありました。
ロシアはウクライナへ武器等を供給している国も加担している、国際決済システムSWIFTや企業の事業停止・撤退などをしている国も「非友好国」であると認定し始めています。
追いつめられた手負いの獣はどんな強硬策に出てしまうのか、世界中が緊張状態となり事態の進展を見守っています。
この絵は2012年にEUがノーベル平和賞を受賞した際に欧州の子どもたちが描いた絵です。
その中でEUの旗を髣髴とさせるシルエットの子どもが欧州各国の国旗の描かれた風船を束ねている絵が私は印象的でした。
足元は暗く、戦争によって欧州が荒廃したことを想像させます。
風船が浮かぶ空は暁(明け方)でしょうか。それとも黄昏(夕暮れ)でしょうか。
はたまた黄金色の輝かしい未来でしょうか。
EU加盟国だけでなく、ここには今や戦火のウクライナ国旗もロシア国旗もあるように私には観えます。
EU加盟国と非加盟国というくくり、非加盟国のウクライナが危機的な状況です。
EUがノーベル平和賞を受賞した背景は本記事の中でも触れますが、欧州がバラバラではなく結束して平和を目指すこの絵に私は世界が本来目指すべき姿があると思わずにはいられません。
余談ですが、芸術を鑑賞する際、人は様々な感想を持ちます。
そういう見方をこの人はするのか、そういう見方もあるのか…
アートを鑑賞することは私生活でも、ビジネスでも、ニュースを見聞きした際や何かを学習する際にも多面思考をもたらしてくれますのでお勧めですよ。
アートへの触れ方はコチラの本がとても参考になります。
欧州エネルギー問題と2つの顔を持つウクライナ
1990年代、ソ連崩壊後の欧州は社会主義陣営だった東欧諸国が次々に資本主義の豊かさを目指し欧州市場、グローバル市場に参入し、急増する資源エネルギー問題に常に頭を抱えてきました。
第一次、第二次世界大戦の反省から欧州でこれ以上戦争が起きないようにまとまるべきだという欧州連合(EU)の理念の原型は皮肉なことに、その欧州を世界大戦の戦地としたナチスドイツの第三帝国の構想が下敷きにあります。
欧州の中心はドイツであり、(資本主義と社会主義の境界、東西分裂がされていた)ドイツを中心に欧州は一つになり、複数の国がまとまって大きな経済連合を作ろうという試みは連邦制を取るアメリカ合衆国(50州)やソビエト連邦(解体後は15か国へ独立)にも観られる発想です。
幾つかの前身となる連盟はありましたが、直接的には欧州原子力共同体・欧州石炭鉄鋼共同体・欧州経済共同体をまとめて1967年に欧州諸共同体となり、2003年の欧州連合誕生につながっていきます。
EUは特に石油や天然ガス等のエネルギー資源の大部分を輸入に依存しており、ロシアはその大切な供給先となっていました。
ウクライナは肝心の産業もロシアから欧州へ供給されるガスパイプラインの仲卸的役割と小麦など穀物の生産。
ロシアへのエネルギー依存によって身動きが取れなかった事も影響し、加えてソ連崩壊後のウクライナの国内政治は汚職にまみれ経済復興は遅れに遅れ、近年では「ヨーロッパ最貧国」と言われていました。
旧ソ連経済圏だった東欧諸国のポーランドやハンガリー、スロバキア、スロベニア、キプロス、チェコ、マルタ、エストニア、ラトビア、リトアニアが2004年にEUやNATOへ一斉に加盟。
ウクライナは出遅れてしまった危機感をこの時に遅まきながら感じ始め、世論も強権的なロシアより親EU派が徐々に増えていきます。
地球温暖化・脱炭素社会を目指す欧州との軋轢
1995年に第1回気候変動枠組み条約締約国会議を皮切りとして、開催国であるドイツを含む欧州では地球温暖化や環境問題への意識の高まりを見せ、2000年にはMDGsを採択。2015年にはSDGsを採択してドイツ・EUは脱炭素社会を目指していきます。
ドイツ国内の電力は風力(30%)・太陽光(11%)などの再生可能エネルギーの普及拡大に尽力する一方で、石炭・|褐炭《かったん》火力など二酸化炭素排出量の多いエネルギーからロシアが積極的に売り込む廉価な天然ガスへの代替を考えていました。
一方、2004年にウクライナでは東欧諸国のEU・NATO一世加盟によって世論が動き「オレンジ革命」が勃発。
大統領選挙でも政権交代が起き、親EU派が親露派を逆転。(詳しくは後述)
ウクライナはEUへ急接近しようとしていました。
これを良く思わなかったロシアは天然ガスの値上げ・供給停止を数度行い、ロシアから離れていこうとするウクライナを締め上げていきます。(恐ロシア…)
ウクライナは4千人以上が被ばくで亡くなるという史上最悪の原発事故をしたチェルノブイリ原発事故(1986年4月)を経験していました。
それでも発電における原発依存度は52%(2016年)と大部分を占めていますが、これもロシアの天然ガス供給に依存しないための決断でした。
天然ガスに代わってこれからは原発で作った電力をEUへ売ろう、地球温暖化・脱炭素を目指し始めた西側諸国に対してそんな思惑もあったかもしれません。ウクライナは現在、欧州最大の原子力発電所を持っています。
2005年、ウクライナがロシアからガス値上げ・停止を繰り返されていた頃、ロシアはドイツへ接近して、ウクライナ経由ではなく北海経由で直接供給する新しいパイプラインを新設する協議を開始します。
また2007年、トルコ・ストリーム計画でウクライナを経由しない新たな供給ラインを提示。
ウクライナはこれが実現してしまうといよいよ経済的にも打撃を受けてしまう状況へ追い込まれていきます。
ロシアは2010~2011年までにロシア主導でノルドストリーム1を敷設を終えて運用を開始。
これによってロシアはウクライナ経由のパイプラインに依存しないドイツへの直接輸出ができ、ドイツはエネルギーの安定を土台にリーマンショックを機に台頭してきた中国の経済力を頼ってフォルクスワーゲン(VW)などの輸出によって貿易黒字となり欧州でも随一の経済成長を果たしていました。
そして更に2018~2021年にはロシア主導のノルドストリーム2の敷設も完了したほど依存を深めていきます。
ここにロシアからすればエネルギー面でEUはロシアがいなくては成り立たないようにしたいという一石二鳥の思惑が進みます。
そんな中で冒頭で触れた2012年秋、EUはノーベル平和賞を受賞。
受賞理由は「第二次世界大戦後の欧州地域の平和安定及び協調路線を図る取り組み」が評価されたとのことです。
しかしそんなおめでたいニュースの裏で、ウクライナ国内では経済的危機に追い込まれていきます。
景気悪化(インフレ率25%、GDP10%縮小)、通貨の対ドルの価値は1年前の半分に、高い失業率、慢性的な政府の債務…
豊かさを強く求めていく親EU派と、「いやいやロシアの支援がないとウクライナは成り立たないよね」、「ロシアと仲良くするべきだ」という親ロシア派は分断が激化していきます。
しかし2013年末には一年以内に100億ドル(約1兆円)の返済期限が迫り、冬は極寒の地であるウクライナにとって生命線であるガスなどロシアから供給される資源エネルギーの支払いには更に200億ドル(約2兆円)が必要。
外貨準備高は昨年の160億ドル(1.6兆円)から2014年には70億ドル(7000億円)に減り、もはやどう逆立ちしても足りないのは明白でした。
そこにロシアは約150億ドル(1兆5000億円)の融資の話をちらつかせます。
「融資してあげてもいいけど、EUと接近するなら見合わせる」という脅し。
ここにIMFからの融資の話も出てきます。
「経済改革をするなら約200億ユーロ(2兆8000億円)の融資をしてもいいですよ。一緒にEU加盟を目指しましょう」
政府の借金700億㌦
債務返済100億㌦+ロシアへのガスなどの支払い200億㌦=300億㌦
ロシアの融資150億㌦+IMF融資280㌦+外貨準備高70億㌦=500億㌦
世論は前大統領ヴィクトル・ユシチェンコ時代からEUへの加盟を目指していましたが、2014年大統領選で親露派のヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領が誕生。
EU・IMFとロシアの両方にいい顔をし、ロシアから2013年に30億㌦を先行融資してもらい、EU加盟を見送り親EU派はこれに反発。
この事が2004年の「ウクライナはEUかロシアか」を再び問う国を二分した反政府デモ、ユーロ・マイダン革命を激化させてしまいます。
ヤヌコーヴィッチ大統領支持派のウクライナ警察ベルクトは親EU派の反政府市民を鎮圧。
騒乱後、クリミアへ亡命し、ロシア内務省指揮下の対テロ暴徒鎮圧部隊へと姿を変えていきます。
最高議会はヤヌコーヴィチ大統領解任と5月に大統領選挙を行う事を決議。
2014年2月22日にヤヌコーヴィチ元大統領はキエフを脱出して国外へ亡命。首相以下全員も総辞職。ウクライナ保安庁(秘密警察)長官のオレクサンドル・トゥルチノフ(同性婚反対の保守派)がティモシェンコブロック*から選出され大統領代行に選出されます。
そしてアルブゾフ首相代行はロシアに「残りの20億㌦も早期に期待している」と表明をしますが、プーチンは追加融資の時期について明言せず。
しかしこの代行閣僚時代のウクライナ中央が混乱期の只中にあった2014年3月1日、プーチン大統領は「合法性や平和、法と秩序、安全性の確立、ウクライナ人守護のために軍隊を送る」とヤヌコーヴィチ前大統領へ書簡を送り、クリミア半島への侵攻に踏み切ります。
反故にされたブダペスト覚書とウクライナ併合
あってはならない話ですが、ウクライナにも油断もありました。
旧ソ連の置き土産で世界第3位の核保有国だったウクライナは、1994年12月にブダペスト覚書に米英露も署名して、ベラルーシ・カザフスタン・ウクライナが核不拡散条約に加盟。
交わされた主な内容は以下の通りでした。
ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナの独立と主権と既存の国境を尊重する。
ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナに対する脅威や武力行使を控える。
ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナに政治的影響を与える目的で、経済的圧力をかけることは控える。
「仮にベラルーシ/カザフスタン/ウクライナが侵略の犠牲者、または核兵器が使用される侵略脅威の対象になってしまう」場合、ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナに支援を差し伸べるため即座に国連安全保障理事会の行動を依頼する。
ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナに対する核兵器の使用を控える。
これらの誓約事に関して疑義が生じた場合は、互いに協議を行う
"ウクライナが侵略の犠牲者となった場合、支援を差し伸べるため国連安全保障理事会の行動を依頼する"
これで核兵力を持たなくても他国からの侵攻から国際的に守られる…そう思い、ウクライナはロシアへ核兵器の移転を行いました。
しかしロシアが国連常任理事国である以上、ブダペスト覚書は拒否権の行使一つで国連軍の派兵を止められてしまうものでした。
2013年にウクライナはエネルギーの脱ロシア依存を掲げ、原発をさらに増やすことを決定します。
この頃、ロシア語を話すウクライナ人はウクライナ国内の広い範囲に分布しており、特に東部と南部では50%超で、ロシア寄りの地域(東部ドンバス地域)と国内は分断、内戦状態となります。
ロシアはこれをウクライナ国内の革命であり、新たな国家が立ち上がったのであって、この新しい国家間(分離後のウクライナ・ドネツク・ルガンスク3か国)に関しての義務的な文書には何ら署名していないと侵攻を正当化し、3月1日にウクライナ侵攻を開始。
3月2日にクリミア半島を防衛していたウクライナ海軍総司令官ベレゾフスキーはロシア軍に投降し、3月3日にはロシア軍の投降の呼びかけにウクライナ海軍も降伏。
クリミア半島の防衛にあたっていた大部分がロシア軍に編入され、ベレゾフスキーはロシア黒海艦隊副司令となります。
3月7日、クリミア議会はウクライナからの分離とロシアへの編入を求める決議を行い、3月16日に住民投票を実施することが決定。住民投票の編入支持が96.6%となり、クリミア議会は翌日にウクライナからの独立を宣言。ロシアへの編入を承認します。
3月18日、プーチン大統領はクリミアを独立国家であることを承認する署名を行い、3月21日にロシア上院議会はクリミア共和国を自国に編入する条約に満場一致で可決し、ロシアによるクリミア併合が完了します。
こうして徐々に首を絞められていったウクライナは領土を奪われ、2021年には再び緊張状態へ。そして2022年2月に侵攻を許してしまい、国土の広範囲で銃撃や爆撃、国民に死傷者が出る事態に陥ってしまいます。
尚、2014年のクリミア侵攻以来、ウクライナでは徴兵制を再開。
徴兵制は一般的にどの国でも2~3年。
クリミア侵攻から8年…銃火器や戦車などの使い方や戦い方を身に着けながらも徴兵期間を終えた国民が一定数います。
更に今回のロシアによる周辺での軍事練習で緊張が高まる中2022年2月初旬には退役軍人や徴兵期間を終えた人たちによる国民への銃の使い方などの訓練も始まっていました。
経済制裁で同じ轍を繰り返す欧米
この頃のロシアの動きを少し遡って振り返ると2003年3月にアメリカが「イラクに大量破壊兵器がある」としてイラク戦争が始まります。
しかしなかなか見つからない戦争の根拠だった大量破壊兵器…フランス、ドイツ、ロシア、中国、ベトナムはアメリカを批判。反戦を訴えます。
批判の矛先は国連を始め多くの戦争に反対する国際社会の意見を無視して開戦に踏み切ったアメリカにも当時向けられていたのです。
反アメリカという感情からロシアはイラクに武器を送り込み、そしてアメリカとロシアの雪解けはわずか2年と経たずに対立という悪化の道を辿りました。
また2002年12月、北朝鮮が核兵器開発をしているとの情報をアメリカは得、その技術提供などをしているのはロシアではないかと疑っていました。
クリミア侵攻の2014年2月以来、およそ8年近くにも渡って欧米の対露経済制裁は規模こそ違えど繰り返し行われてきましたが、ロシアも対抗経済措置を発動。アメリカの主張とロシアの主張は一向に噛み合いませんでした。
国際金融決済システムSWIFTからの締め出しを「経済の核兵器」などと言っていますが、戦争は理屈で勝敗が付くものではありません。
仮にの話ですが、2000年代に経済成長が著しいとされていたBRICsと呼ばれる国々があります。ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ共和国…これらが反米路線に結託して舵を切ったらどうなるのでしょうか?
BRICs開発銀行、また中国主導のアジア・インフラ投資開発銀行(AIIB)など欧米が築き上げてきた国際決済システム(例えばその一つがSWIFT)の外の金融システム(人民元の国際決済システムCIPSなど)が本格的に動き出せば欧米からの経済制裁を受けても逃げ道があるとなったら?
現在は基軸通貨として盤石な米ドルの威光にも長期的には陰りが出てこないとも限らないと考える意見もあります。
ルガンスク・ドネツクの自治か独立か
そしてクリミア併合の直後、ウクライナからの独立を宣言したのが東部のルガンスクとドネツクというドンバス地域の二つの州(自治区・人民共和国)です。
クリミア併合の翌月、2014年4月に親ロシア派が多いドネツク州・ルガンスク州はそれぞれ人民共和国を掲げ、ウクライナに一方的に独立を宣言。
(ウクライナ政府はロシアの傀儡政権と考え、この政権をテロ組織と認定)
2014年5月にウクライナで大統領選挙が行われ、ドニプロペトロウシク州で州知事を務めていたペトロ・ポロシェンコ氏(親露派・無所属)が選出されます。
2014年9月、ウクライナとロシアは欧州安全保障協力機構(OSCE)による仲介でベラルーシのミンスクで議定書が交わされ、停戦など12項目を協議して合意。(ミンスクⅠ)
この議定書は親ロシア派のウクライナ・オリガルヒの一人、ペトロ・ポロシェンコ(チョコレート王*)が草案を作ったほぼそのままの内容だったとされいます。
この議定書の項目の中にはロシア軍との国境に近く銃撃戦の止まない「ドネツク州及びルガンスク州の特定地域の自治についての臨時令」によって自治が認められました。
しかし議定書を交わしてからもドンバス地域での銃撃戦は止まず、ミンスクⅠは2015年1月に事実上崩壊。
2015年2月に改めて「ミンスクⅡ」が両国とOSCEで交わされ、ドンバス地域での停戦が交わされました。(ミンスク合意)
2017年7月、ミンスク合意の際にドネツク側主任だったアレクサンドル・ザハルチェンコ首相はロシア領クリミアを除いたウクライナ全域を新しい国家とする「ノヴォロシア」を提唱。(ロシアは関与を否定)
元より同じ国だったソ連解体後も独立国家共同体(CIA)などで共に歩んできた同盟国であったはずの両国…
しかし歴史的に見てもウクライナの東西では別々な国のように文化も経済に対する考え方も異なるという「2つのウクライナ」を唱える人たちもいます。
西側はヨーロッパに近くカトリックの辺境地(ギリシア・カトリック=ユニエイト)、東側はロシアに近く正教会の辺境地。
話す言葉も東側はロシア語を話す人が多く、西部はウクライナ語を話し、両方の間の地域はロシア語訛りのウクライナ語なのか、ウクライナ語訛りのロシア語なのかと言った状況。
こうした「ウクライナはヨーロッパか、ロシアか」といった議論には枚挙に暇がありません。
しかし2018年8月にドネツク中心部のカフェが爆発して、当時の首相ザハルチェンコと護衛2人が死亡、閣僚数名も負傷する事件が発生。
カフェ爆破事件の3日前、ウクライナの軍事評論家が2019年のウクライナ大統領選を見越して「2018年9月のうちにロシア政府が人民共和国へ調査団を派遣し、首長職をザハルチェンコからより適任な人物に交代させるだろう」と話していたことが議論を呼び、ドネツク側はこれを「ウクライナによるテロ」と認定し、対立感情の激化していきます。
2014年マレーシア航空機撃墜事件
クリミア併合の緊張状態が冷めやらぬ中で、忘れてはならない事件が起きます。ドネツクに移動式地対空ミサイルブークが配備されたのです。
2014年7月17日、オランダ・アムステルダムからマレーシア・クアラルンプールへ向かっていたマレーシア航空17便(ボーイング777)がドンバス地域付近の上空で撃墜され乗客283人と乗組員15人全員*が死亡する事件が発生します。
航空機との通信が途絶えた時、ドネツク側はウクライナ軍の輸送機を撃墜を表明。
しかし飛行機の墜落現場・残骸はウクライナ軍の輸送機ではなく、マレーシア航空17便であることが判明すると、ドネツク側(ウクライナ分離主義者)は航空機撃墜を否定。
事件の数か月前からドネツク側は防空システムとして航空機識別システムを導入しましたが、空軍機と民間機の区別はあまり正確ではなく、ウクライナ空軍の輸送機などが撃墜(撃墜1、不時着1)される事件が直前にも発生しており、ウクライナ南東部を飛行する危険性が警告されていました。
マレーシア航空17便はこの空域を回避しようとして付近を飛行していたのですが、撃ち落とされてしまったことになります。
墜落の原因と犯罪調査の両面からオランダが主導で行い、ウクライナはオランダに調査を委ねます。
2018年5月25日、合同調査団(JIT)からの報告を受けてオランダはロシアによる責任の一端があると共同声明を発表。
ロシアのプーチン大統領は調査協力は惜しまないとしていましたが、ロシア側の関与については一貫して否定。
国連安保理ではマレーシアが国際裁判を訴え支持されましたが、ロシアが国際捜査の「透明性」欠如を批判。常任理事国の拒否権を行使して、封殺。
オランダを始め各国で刑事・民事訴訟が行われるに留まってしまいました。
マレーシア航空はこれに先立つ2014年3月8日にクアラルンプールから北京へ向かって出発したマレーシア航空370便も墜落して乗員乗客239名が全員死亡。
2014年12月28日にはインドネシア・エアアジア8501便が墜落しいずれも乗員・乗客298名全員が死亡しており立て続けに起きており、直接の関係性があるかは不明ですがこれらの事故・事件は航空機業界にも大きな打撃を与えました。
次回④では、メディアにウクライナだけでなく世界中が振り回されているこのウクライナ危機、2019年にゼレンスキー大統領が誕生するまでのウクライナの話とナチス(ネオナチ)や、暴力と侵略・虐殺が相次いだドンバス地域で起きていたとされる話、ロシアとウクライナの歴史的・宗教的なお話を書いていきます。
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