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【2023年~】自動車保険も値上げ確定。これから更新までに常識外のことが起きる⑧

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損害保険料率算出機構という法令に基づいて設置されている専門機関があります。

一般社団法人とか公益社団法人とかでさえ明記がされていない非営利の民間の法人組織です。

損害保険各社がそれぞれに確率を計算するとコストがかかるだけでなく、統計の取り方によってばらつきが出てしまうために様々な統計データを集計して保険料の基準となる参考純率・基準料率*を算出する専門機関です。

参考純率は純保険料を計算するための料率。
基準料率は純保険料及び付加保険料率の料率。

自賠責保険・自動車保険、火災保険・地震保険、傷害保険・介護費用保険などの保険料算出には同機構の参考純率と呼ばれるものが適用されます。

また同機構によって交通事故の死亡、後遺障害、賠償責任などでどれくらいの金額がどれくらいの期間をかけて、どういう事故で支払われたかなどの事例も紹介されています。


事故減少なのに2023年に自賠責保険の値上げの顛末

今回の本題とは関係ありませんが、損害保険料率算出機構の大きな役割の一つである、自賠責保険の保険料がここ数年は安全性能向上や交通ルールの厳罰化、高齢者などの免許返納も進んだことで事故が減ってきたために保険料が2020~2021年は2年連続で値下げをしてきました。
一方、2023年は一転して値上げが既に決定されています。

この自賠責保険料の値上げについては損害保険料算出機構の問題ではないのですが、財務省を中心とした国の財政に対する見通しの甘さと政府の関与が原因と指摘されています。

事の始まりは1994年・1995年に自賠責保険の再保険*運用益6,013億円を国会審議も通さずに政府と大蔵省(現財務省)大臣との内々の承諾だけで貸付と称して覚書も交わさずに使いこんでしまい、最近になって財務省はお金を返せと言ってきたら期限も決めていなかったことが露呈しました。

*再保険=保険の保険、リスクを分散するために保険を引き受ける保険会社が別な保険会社などに保険料を支払って保険をかけること。英ロイズなどはその代表格。
この場合は政府が再保険の引き受けをしていた事になる。

自賠責保険は政府が6割を再保険として引き受けをしていましたが、2002年(平成14年)6月から廃止され、長年使わなかった保険料積立金は運用益として自賠責から支払われる保険金の増額や交通事故防止や安全教室、救急救命体制の整備(ドクターヘリの普及など)に充てられてきました。

自賠責保険は交通事故被害者の救済事業として年144億円が必要とされています。
そして自賠責保険の保険金支払いに必要な財源が今や枯渇。

本来ならあったはずのお金を無期限で貸し出していたのですから当然何処かで来るべき時が来てしまったのです。

2018年になってようやく年23億円の返済が始まりますが、2022年度からは54億円に増額が決定。
しかし、このままでは全額を返済してもらうために112年かかります。
そして慌てて今度は値上げという何ともずさんな事件が起きていたのです。

しかしこうしたニュースは一部メディアが取り上げたものの、日々のニュースの中ではあまり政府批判的なことを言っていると怖い人から睨まれてしまうのか。
いつの間にか沈静化してしまい、今となっては殆ど騒がれることのないまま、多くの人たちから忘れられてしまい、今日に至ります。

【追記】2022.12.18

さて、この記事を4月に公開してから早いもので2022年も残すところあとわずかになりました。

損害保険会社から公表されている情報と変わって、損害保険料率算出機構が突如、2023年4月から自賠責保険の保険料を下げるということを発表しました。

岸田政権の支持率が危険水域と呼ばれる3割を割り込み、自賠責保険値上げとこの記事でも紹介しているお金の使い込みに対する批判を避けるためとうがった見方をされかねないグタグタっぷり。

なんだかなぁという感じですね。


自動車保険も2023年値上げが確定の根拠

同機構のトップページのすぐに下には「保険料関連をお調べの方」という項目があり、その中に「自動車保険参考純率」のリンクがあります。

ここに入っていくと2021年9月22日に金融庁長官への届出として、今後適用される保険料純率についての掲載が既にされています。

各保険会社がこれをもとに1年~2年ほどかけて付加保険料などを計算、準備してほぼ一斉に新しい保険料が適用されます。(2021年9月28日適合性審査結果通知受領を持って新しい料率になるのが確定)

何処かの保険会社が先駆けて新しい保険料を開示してしまうと、それを観た保険会社がその保険料よりも安く設定をしようとする過当競争が始まってしまい経営に影響が出てしまうため各社がほぼ同時期に一斉に保険料が変わります。

ところで2022年10月に火災保険の保険料が値上げされるというニュースは既にあちこちで報道されていますのでご存知の方も多いと思います。

火災保険も損害保険なので、ここの改訂と同時だと保険会社は大変なので少し時期をずらして改訂するだろうと考えられ、早ければ2023年1月に新しい保険料率が適用となる見込みです。(4月や10月などのこともあるだろうけど)


新参考純率の改訂内容、3等級ダウンの場合

そして気になる新参考純率がこちらです。

『自動車保険参考純率改定のご案内』P4参照

ぱっと見だと分かりづらいと思いますが、ご自分の現在のノンフリート等級を基準に改定前の割引率改定後の割引率を観てください。


これまでは仮に7等級の場合の割引率は▲30%ですが、3等級ダウン事故(3年)の場合には事故ありの4等級(▲2%)でした。

ところが改訂後には7等級の人が3等級ダウン事故(3年)を起こすと、更新時には事故あり4等級(+7%)となり、改訂前後と比べて9%の値上げとなります。

デメリット等級と呼ばれる5等級以下で等級が低いほどえげつないことになります。

例えば現在4等級(▲2%)で更に3等級ダウン事故(3年)を起こすと次の更新時には1等級(+64%)ですが、改定後の更改(更新)時には同じ1等級でも+108%と2倍以上になります。

(; ・`д・´)キツ…

また現在、3等級ダウン事故で事故あり(3年)で8等級(▲21%)になった方が1年間無事故で更新をした場合には、これまでなら事故あり9等級(▲22%)と保険料負担は1%割引が増えていました。

しかし今回の改訂によって更新時には改定後の事故あり9等級(▲18%)なので3%割高になって更改されます。

;つД`)ムジコダッタノニ…

実は等級の高い方ほど実は今回それほど影響を受けません。

例えばこれまでであれば無事故のノンフリート17等級(▲53%)の方が、3等級ダウン事故(3年)を改定前に起こすと次回の更新からは事故あり14等級(▲31%)となり22%も値上げとなります。

その後無事故だと事故ありの15等級(▲33%)、16等級(▲36%)、そしてようやく無事故の17等級(▲53%)に戻ることになります。

しかし改定後に同じく無事故の17等級の方が、3等級ダウン事故(3年)を起こすと次の更新時には事故ありの14等級(▲25%)と現在と比べて+6%の値上げ、15等級(▲28%)と現在と比べて+5%の値上げ、16等級(▲32%)と現在と比べて+4%の値上げと確かに値上げではありますが、影響は等級の低い人よりは軽微です。


加入者の公平性の原則

保険には、加入者の公平性の原則があります。

特に自動車保険は相手を傷つけたり、命を奪ってしまう事も、健康な身体や家族、時には自分だけでなく相手の人生までも奪ってしまう危険性があります。

保険を使ったら得となってしまうと、わざと事故を起こす人などが出てきてしまいかねませんので、こうしたモラルリスクから加入者全員が支払っている保険料を健全に運用して使っていくためには、リスクの高い人にはより多くの負担が求められるのです。

相手がいたり、こういう事故の場合こそ保険が本来の力を発揮する時です。
貯金で何とかなる時のためにも使えますが、
貯金ではどうにもならない時のために使うのが本来の目的。
これは生命保険も損害保険も共通の考え方です。

このため相手のいないなどの軽微な事故の場合であれば保険を使わずに貯金などから自腹で修理費を出すという人もいます。

修理費<等級ダウンの値上げ幅

こういうロジックが働くからです。

確かに預貯金で払えるなら、保険の大原則である「預貯金で補いきれない経済的損失」ではない訳ですから保険を使わなくても良いというのは合理的です。
相手のいる事故、対人・対物などの3等級ダウン事故などは命やその後の人生、家族にも関わる重大な事故ですから賠償額が預貯金でなんとかなるとは限りません。

こうした困った状態のために加入するのが主であると考えると、軽微な事故でも保険金が出るからと安易に使うのは油断して事故を誘発してしまいそうでもあります。


保険を使わない方がお得が、一部逆転現象も!?

そこで考えなければいけないのが、これまでなら等級ダウンで値上げされてしまうから貯金で修理しようといったケースが、これならもしかしたら保険を使って修理した方が…のようなケースも出てくるのかもしれないという点です。

1等級ダウン事故は、具体的には相手のいない単独事故(自損事故)やいたずらなどによる傷、飛び石、盗難や火災・爆発・洪水など車の所有者や運転者が気を付けていても防ぐのが極めて困難な事故などになります。

私も愛車を3度、痛い思いさせてしまいました

;つД`)ゴメンヨ…

<参考/ノーカウント事故>
以下の保険を使う場合には等級ダウンになりません。
・人身傷害保険
・搭乗者傷害保険
・無保険車傷害保険
・弁護士費用特約
・ファミリーバイク特約
・個人賠償責任特約

1等級ダウン事故は先ほどの3等級ダウン事故の場合と状況が少し異なってきます。

改めて改訂前後の割引率・割増率の表を見てみましょう。

『自動車保険参考純率改定のご案内』P4参照


例えば無事故の18等級(▲54%)だった人が1等級ダウン事故を起こしてしまって、翌年の更新時には事故あり17等級(▲38%)ですが、改定後には事故あり17等級(▲44%)となり、保険金が出て修理できるうえに保険料は改訂後の方が割引率がよくなるという逆転現象が起こります。


参考純率はあくまでも純保険料部分ですので、年齢や免許証の色などによって割引や割増率は変わってきますので、絶対というわけでもありません。

しかし対人・対物・人傷・搭乗者傷害・車両保険…

全ての保険料の基準となるためにその影響は付加保険料を含んだ基準料率にも影響を与えます。

今回の改訂前と改定後だと仮の話ですが、無事故の20等級(▲63%)の方が3等級ダウン事故(3年)を起こしてしまった…

改定前は事故あり17等級(▲38%)になってしまいますが、改定後には事故あり17等級(▲44%)は割引が改定前より大きくなってしまう現象が一部の等級では起きます。

20等級よりはどの道、割引率が落ちてしまうのは事故が起きてしまった以上は仕方ありません。

しかし、どうせ事故ありの保険料率になるなら…と考える人が出ても不思議ではないのです。


改定表に一工夫するとわかりやすい


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