「新しいNISA」を始める前に知っておきたい5つのこと(その肆)📧⑫
本シリーズ『「新しいNISA」を始める前に知っておきたい5つのこと』のバックナンバーはマガジンでご確認いただけます。
<その肆>の今回は、多くの方が「新しいNISA」で資産を築こうとしているであろう「老後資金の考え方」について、これまでの内容を踏まえて考えていきたいと思います。
前回<その参>では内閣府・財務省・厚労省などが将来の日本の社会保障制度をどのように考えているのかの青写真を実際に公開している情報から考察しました。
「新しいNISA」は、以前のNISAと比べてたくさんの改善がされ、非常に良い制度と言えます。
しかし、その魅力は国にとってもメリットがあると言えるのです。現在の日本の状況や政府の政策は、税金や社会保険料を取りやすい所から取ることに焦点を当てています。
日本の財政が苦しい中で、なぜ「新しいNISA」だけが特別なメリットを享受できるのでしょうか?考えてみましょう。
国は働く世代から吸い上げて老齢世代へ再分配する年金などの最低限の仕組みを担い、健康保険(国保)・公的介護保険制度は都道府県など地方行政に丸投げ。
そのために『「新しいNISA」を始める前に知っておきたい5つのこと<その参>』でも触れたとおり市区町村から都道府県への管轄の移管(2018年4月1日~)も既に行われていることもです。
また現在は高齢者医療や介護施設における食事代などの自己負担を資産評価に応じて行うことを始めている段階です。
これは私の個人的な予想(予言)ですが、将来は健康保険制度や公的介護保険制度などの一層財源の厳しい社会保障を地方に押し付けることの引き換えに、地方はもし社会保険料の未納・不払いがあれば裁判所を介さずに預貯金・証券の評価額をマイナンバーで掌握して差し押さえや源泉徴収することも可能です。
マイナンバーを届出なければ証券口座・NISAなどの非課税口座を開設することはできません。
つまり「新しいNISA」に資産を誘導させられ、資産の把握をされたところで医療・介護を利用した場合の自己負担の拡大、やがて社会保険料も資産があるから払えるよねと逃げられない状態にしてから徴収を始めるのではないかということです。
またその金額の目安もおよそ分かってきています。
ということは、「新しいNISA」で公的年金だけでは足りない老後の全期間の資産を築くとは、そのような自己負担を許容する計画とも言えます。
まずは老後資金を2×2に分けよ
そこで私から提唱したいのは老後資金を少なくとも"前期老後資金"と"後期老後資金"の2つに分け、更にそれを「元気な時」と「万が一の時」の2パターンを想定するということです。
そして前期老後資金を「新しいNISA」(総合NISA)や「iDeCo」また勤務先によっては退職金などもあるでしょう。これらで取り崩していきます。
設定期間は退職年齢~75歳または80歳頃までです。
後期老後資金はそれ以降の余生で、2023年現在働いている世代は男性で85~95歳、女性は90~100歳程度を想定することを推奨しています。
私たちは何歳まで生きるのか?
この年齢に設定する根拠は簡易生命表に基づきます。30歳の男性の生存率は99.0%。つまり0~30歳までに約1.0%がなくなったことを意味しています。
これをの元に85歳時点で30歳までに亡くなった人の割合を補うとほぼ半数がご健在といえるからです。
また女性も同様に30歳までに亡くなっている確率を90歳時点の生存率に補うと50%を超えます。
今日の平均寿命87歳といいながらも、実際には90歳が約50%の水準で、95歳時点でも25%の方がご存命ととても長生きです。
また人は何歳で亡くなる確率が最も高いかという人口動態の調査では、男性は85歳、女性は92歳というデータがあります。
日本人の寿命は今日もなお年々伸び続けています。
医療の進歩発展が今後も日進月歩で進むとすれば、日本人の肉体は実年齢よりも5~10歳前後も若返っていると考えることができるため、将来は現在の生存率50%よりも+5~10歳前後は寿命が延びると予想することができるためです。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではありませんが、少し前に「人生100年時代」という言葉が流行しました。
あれは2007年に先進国で生まれた子供たちの「平均寿命」を示したものですが、間の時代を生きる我々は当然、現在の平均寿命である男性82歳、女性87歳と人生100年時代の間の時代を生きることになります。
個人的に私は男性でも100歳まで生きる人が今後はさらに増えると思っています。なので男性の後期老後資金は100歳までを前提としても良いと思っています。
けれどそれは仮に現在40歳の男性が95歳まで生きるか、100歳まで生きるかは誤差の範囲だと考えています。この辺りは後半で少しだけ触れたいと思います。
+働く期間とリスクを加える
自分の退職年齢が定まると前期老後資金、後期老後資金という二つの期間にそれぞれいくらのお金が必要かをライフプランニングでシミュレーションすることができます。
おっと、<その壱><その弐>でも触れましたが、「万が一」のリスクは個人でシミュレーションするのはとても難しいのでしたね。(・ω<)テヘペロ
信頼できる担当者と膝を突き合わせて話し合うか、超ストイックに瞑想でもしながら自己を見つめてリスクというものがなんであるかを考えてみてください。
さて、2×2をシミュレーションするとあることに気づくはずです。
リスクが起こるのは何も退職後だけではないということに。
FIREとサイドFIRE
40歳未満で今すぐ退職をしても将来の生活資金の原資が既に確保されている「働かなくても良い状態」のことを「FIRE」(Financial Independence Retire Early)と呼びます。
現在ではFIREの定義は、金融資産=家賃・食費を含む年間支出×25倍とされています。
米国の過去の平均経済成長率(年率)7%から米国インフレ目標3%を差し引いた「4%ルール」に基づき、年間生活支出も4%以内に収めれば資産は減らない状態となります。
しかしこの「4%ルール」は2022年3月に始まった米国利上げに基づきハードルが高くなり、かつてこれを達成した人も足元のインフレ率や利上げを考慮するとFIREしていると現在進行形では呼べなくなっている点も指摘されています。
またそこまででないものの一つに「サイドFIRE」があります。定義はいくつかありますが、私は「ガツガツ働かなくても良い状態」と定義しています。
「サイドFIRE」という呼び方こそしていませんが、これに近い考え方をしている著名人は厚切りジェイソンさんなどです。
給与所得者の場合はすぐに使う予定以外で生活支出の1年6か月~2年分以上*の預貯金があり、その資金を資産形成・資産運用に回せる状態は事実上のこれに該当します。
「FIRE」が完全に働かない状態(退職)であるのに対し、「サイドFIRE」は一定の年齢(年金受給など)まで働き続けることが前提であるため、クリアまでの資金もFIREと比べて大きく減ります。
現在の米国の政策金利(1年内の金利)は2023年8月時点で5.25-5.50%。
米国10年債、20年債、30年債も既にこの水準(4%)を超えていますので米国はサイドFIREをして、労働市場になかなかガツガツ働いてくれる労働者が減少するという状況も起こり始めています。
結果、労働者不足で賃金が上がり、2022年にはamazon.comの倉庫でのアルバイトで平均18㌦、スターバックスのアルバイトも17㌦。更に物価高騰などで平均時給30㌦まで引き上げることを労働組合は求めています。
私の周りにも既に40代を前にFIREを達成した友人らが数名います。
その内の何人かは会社を辞めた最初こそ旅行や飲み歩くなどして数年自由に過ごしていました。
しかし昼過ぎに起きて夜中遊びまわるという生活リズムが、一般の労働者と逆転したことで自分はダメ人間なのではないかと思ったようで、コロナ禍に入った頃から社会や人とのつながりを求めUberEatsの配達を始めるなどしており、FIREをしても人は社会とつながりたいものなのだというのを間近に見ています。
サイドFIREは今後も働くので、そうした点では社会とのつながりや規則正しい生活が続きます。
しかしFIREと異なり、サイドFIREにはサラリーマンなどと殆ど変わらない「働けない状態」というリスクが退職年齢までずっとつきまといます。
「働けないリスク」の深刻さ
既にFIREするだけの資金がある方はこの限りではありませんが、そうでない人の殆どは自分自身が働けないと収入が途絶えたり減少したりします。
すると日々の生活支出のために預貯金を取り崩し、場合によってはNISAを含む証券投資で運用している資産さえも取り崩さなければいけません。
軽度の病気やケガのことを話しているのではありません。それが収入や就業に大きな影響を与えるほどの長い治療期間や療養期間を要する、または回復の見込みのない大きな病気やケガの場合です。
この「働けない状態」に該当した場合に、老後資金で「万が一」を想定していてもそのライフプランは絵に描いた餅になってしまいます。
もし資産形成(積立投資)の期間中という若い時に、それが社会保障や手元の預貯金で補いきれないほど大きなものだった場合にはとても残念ですが、それほど長生きできないでしょう。
病気や障害があっても、将来は寿命が延びると考えても現在の平均寿命程度までと考えれば長生きをする前提の「後期老後資金」は不要になります。
しかし当座の生活と「前期老後資金」は必要になってくるでしょう。
「新しいNISA」と働けないリスク
これがもし「新しいNISA」(総合NISA)だけで資産を築こうとした場合、どうなるでしょうか?
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