無力だったあの頃の君へ
何時頃だろうか、自分自身が素晴らしい何者かになれると思っていたのは。
特撮でよく見ていた平成仮面ライダーの影響なのか、私は世の中の困っている人や困難の中にある人を助けられるようになりたいと思うようになった。
自分の中のヒーローへの憧れ。特撮であれ、漫画であれ、困難に立ち向かい、修行し、強敵と戦いながら成長して大団円を迎える主人公、自分もそんな一人になれると信じていた。
でもその淡い夢は現実の前に打ち砕かれた。
希望に満ちて、そして鼻息を荒くして今の会社の門を叩いた。何者かになれる、この会社になくてはならない存在になる、そんな大それたことを胸に秘めたまま。そしてほどなくして起きた東日本大震災。そこで自分の無力さに打ちひしがれる。
混乱する社内、悲惨な映像、日に日に増える死者数と行方不明者数。
そんな状況の中で私はどうしていいか分からず、そうしたニュースに目を向ける自信もなくなっていた。
復旧に努める他部門の同期たち、現地の支援に企業の命により赴く大学の同級生。ボランティアに駆けつける人々。物資を送り届ける人たち。
そんな行動している、行動できている人を尻目に、私は自分の無力さを嘆くだけで何もできなかった。ただ毎日が辛かった。
困っている人を助ける、誰かの何かの助けになりたい、そんな思いは口先だけで信念でも何でもなかったのか。そんな自問自答に苛まれていた。
人間は儚い、そして時に無力だ。
でもその事を自覚した時から私の時計はまた進み出した。
無力な自分を変えるために、必死で学んだ。仕事でもプライベートでも取り憑かれたように学んだ。新しい事にも着手した。
いつしか社内でも評価をされる立場になり、信頼できる仲間も増えた。プライベートでも助けを求めてくれる友人が増えた。
そしてまた昨年のコロナが起きて私は試されたように感じた。10年前と違い、日本にはいない、でもできる事は増えた。知識もついた。だから今自分ができる最大限のことをやろうと決めた。
Twitterやnoteでの発信、寄付やクラファンの実施。届いてほしい情報の拡散や依頼。困ってる人を助けるためのチームに加わり、協力出来ることを探して実行した。
もちろんヒーローになれたわけではない。私がやった事などしれている。でも何も出来なかった自分とは決別できた。あの時とは違い、今は守るべき家族も、貫くべき矜持もある。
ビジネスを通じて誰かの力になる。そのための知識と経験は本業での仕事や壁打ちを通じて間違いなく向上してきた。これは誰かを助ける力になる。
まだまだ道は途中だけど、今できることをやる。その時その時の最高の速度で進む。
私にはこれしかない。愚直にでも戦略的になるだけだ。
今もし過去の私に何か伝えられることがあるなら、こう言いたい。
そんなに俯くなよ。本当に守るべきものは既に君の中にある。本当に伸ばすべき力を見つけて、前を向いて歩いて行こう。今君は、自分の弱さを改めて知った。それこそが尊いことだ。何か自分にできることがあったんじゃないか、その後悔の念は、君を突き動かす。自分にできることをやるだけさ。
次の危機があったときに決断・行動出来る人間であるために、私は今日も一生懸命にその瞬間瞬間を生きていく。
私たちに出来ることを一歩ずつ。
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