「等級」と「役割」の関係

人事歴が長い方でも時々、混乱しているな、と思うのが、人事制度における「等級」と「役割」の関係。

日本の人事制度で「会社が求める人材の必要条件」を示す「要件定義表」を作る際に「職能資格等級」と「役職」を分けて書いてあることがよくあると思います。

これは、「その人が身につけている能力」でランク付けをする「職能資格等級」の場合、「能力は高いのだが、たまたま低い役職にいる人」というケースが当然あります。

そもそも1970年代中旬にこの職能資格制度が広がった背景からすれば、1974年頃のオイルショックを契機に日本の高度経済成長が止まり、以前のように新卒で大量に入社させた人も全員出世させ役職につけてあげるわけにいかなくなりました。

そのままだと昇進も昇給もしないのでモチベーションが上がらないと言う事態が発生してしまい、その対策として「役職は上がらないのだが、能力は伸びていることにして等級を上げることで昇給や昇進を確保する」と言う職能資格制度が求められたと言う経緯があります。

ですので、職能資格制度においては「等級」と「役職」の分離こそ、この制度の「キモ」の1つと言っていいかもしれないです。

一方で、昨今、上述の「能力」を基準にして従業員に求める条件を示す「職能資格制度」に代わって日本企業で多く導入されているのが「あなたにはこういう役割や責任を担ってもらいます」というレベルでランク付けする「役割責任基準」の人事制度です。

この場合、そのレベルで求める役割や責任というのは「役職の定義」と同じになってしまうので、「役割等級」と「役職」が同じになってしまうので分けている意味が殆どなくなります。

まぁ、それでも、なんとなく馴染みのある「等級」と「役職」が分かれている「要件定義書」を役割責任基準の人事制度で使ってもいいとは思いますが、その場合、「等級」と「役職」は「ほぼ一致するので、同時に上がったり、下がったりするよ」というのをあらかじめわかっておくと、「職能資格制度」で現れ得る「実際の役割責任は大したことないのに、過去の積み重ねで能力等級だけが高くて給与も高い中高年」というのを抑制するのが役割責任等級制度の1つの重要な点であることがハッキリすると思います。


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