カタカムナとの出逢いーその3
カタカムナ音読法を始めてそれを拡大する活動を続ければ、当然その「本家」にご挨拶に伺わなければならないことになる。人の研究して伝えたものを勝手に利用して黙っているのではなんとも気が引ける。「本家」とは渋谷区神泉にある「相似象学会」で、その主催者は宇野多美恵と言う女性である。この人にお会いして、一言ご挨拶を申し上げたいと強く思っていた時しも、知人のシャーマン女性が「私が宇野先生のところに連れて行ってあげるわよ」と言うので、確か1999年の秋頃に、渋谷東急本店の前から西へ続く坂道を彼女とともに歩いていたが、綺麗に着飾ったこの女性は、何か非常に頼りない。というか、まともな思考方法をしているとは思えない。
「あれえ、どこだかよくわかんなくなっちゃった」
「何がです?」
「宇野先生のおうちよ」
「えっ知らないんですか?」
「でもなんとかなるでしょ。カラスに聞いてもいいし」
「えっ?カ、カ、カラス?」
「そうよ」
「・・・・・・・」
すると突然、
「アッ、このお店いいなー」とか言って、傍にあったこじんまりした服飾店に急に入って行ってしまう。
「ねえ、どこだかわかっているんですか?」
「そんなことそのうちわかるわよ」とそっけない。
仕方がないので付いて入ると、店内には服だけでなくベルトやネックレスなど色々な物が置かれている。ちょっと見るだけだと思っていたら、彼女はここでどう言うわけかどんどん買い物をし始めた。ブラウス、スカート、ジャケット、ネックレス、腕輪・・・・。次々に試してはどちらが似合うかと尋ねる。私は突然このように買い物を始める人を見たことがない。しかも初めて通りかかった店でである。
やっと買い物が終わって、両手に袋を持つことになったので、一つは受け持って店を出ると、
「ちょうどいいお店があってよかったわ」とか言って、空を指差す。
「アッ、カーちゃんだ!」と言うその先を見ると、確かに木の上にカラスが止まってこちらを見ているように見える。
カラスの方に近づいていくと、カラスは飛び立って、向こうの方の大きな桜の木のてっぺんに止まった。
「やっぱりあそこだわ」
「本当ですか?」
「だってカーちゃんがそう言うんですもの」
「カーちゃんて、あのカラスと知り合いなんですか?」
「そんなことあるわけないじゃない。カーちゃんはカーちゃんよ。家がわかったらここから先はあなたが自分でやってよ」」
まるで訳がわからない。思考回路が飛んでしまっている。
しかし、着いたところは、庭に信じられないほど太い桜の大木がある古風な邸宅だった。風情ある平家である。表札もついている。
しかし、渋谷のど真ん中とは思われぬほど敷地広く、しっかりと広い庭には様々な花が咲いていた。桜の大木はその庭の真ん中からまるで屋敷の屋根を覆いこむかのように茂っていた。
さて玄関の呼び鈴を押してそこへ現れたのは、小柄で痩せた70代後半と思われる女性だった。
「私、本日予約を入れた松永暢史ですが、宇野多美恵先生ですか?」
先生は、「そうです。どうぞ」とお答えになると、好奇心の強そうなキラキラとした眼を見せた。美しかった。何かが分かったかのようにフフッと微笑んだ印象もあった。極めて敏感な人の印象である。
これが宇野先生と初めてお会いした時だった。