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短過ぎる夜行バスでリフレッシュした話
石田橅、無事仕事で疲弊し、睡眠も食事もまともに出来ない日が3日間くらい続いてました。そこで思い切って仕事でも地元でも縁のない地域へ、全てを忘れて出かけようという気持ちになり、夜行バスで逃避行することをきめました。今回はその回顧録。
出発は横浜駅のバスターミナル、YCAT。
行先は静岡県浜松市。横浜→浜松という、夜行移動にしては相当に短い距離を結ぶ遠鉄バス『e-LineR』に乗車しました。新幹線なら最速(新横浜ー浜松を)1時間で行けちゃう距離を、このバスは6時間弱かけて走破します。
横浜出発は午前0:40。日付的には到着日です。ネットで予約した時「時間の考え方あってるかなぁ?」と何度も不安になりました。
YCATを出発する夜行バスとしては実質最終みたいでした。待合室は同じ便を待つ人が10名ほど。移動距離・時間帯的に乗り込むの自分だけでは?とも当初は考えていましたが、意外と需要があるようでした。
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若干遅延しながらバスはYCATに入線。
モバイル乗車票を提示して乗り込みます。
車内はディズニーやら土産袋を抱えた人が多かった印象です。若い二人組が多く乗っていて、車内の雰囲気はまるで校外学習帰りの学生で貸切られたバスみたいな感じでした。
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乗車率もぱっと見7~8割、盛況してる方でしたね。
ディズニーから地方都市という便の性質ゆえか、横浜から乗る人も『帰る』って雰囲気の人が多くて落ち着きがありました。私も元々静岡県民だったもので、不思議と心地よかったです。
バスは予定より5分ほど遅れて発車。
ネットの海に散らばるASMRより眠れる、『バス運転手のアナウンス』が静かに流れます。夜行バスは窓のカーテンも全て閉めるのが基本なので、景色を楽しむことは出来ません。
そそくさと車体の揺れに身体を任せ、瞼が閉まるのを待ちます。
出発直後に車内は真っ暗になり、アナウンスも終了。
それからおよそ一時間後、バスは静かに海老名SAに到着しました。
これといった案内は無く、運転手がそっと扉を開け、ちらほらと人が降り始めます。
別に用を足す気分ではありませんでしたが、なんとなく降りてバスを眺めてみました。
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今このNOTE書いてて思ったのが、なんでこのバスはブランドロゴでEとRを強調するんだろうということ。もしや親会社の『遠州鉄道』を英語で表記したら『ENTETSU RAILWAY』となって、その頭文字をアピールしているんでしょうか。シランケド。
なんだかんだ20分は停車してました。横浜から乗った人間からすれば乗車して1時間も経ってない中でこの休憩時間なので、牛歩な感覚です。
午前2時前、バスは海老名を出発し夜行バスらしい動きを見せます。
このあたりで私は寝落ちしました。
「おはよう」というには早いであろう朝5時前、バスの動きが止まったのを知覚したのか自然と目が覚めました。ここでGoogle Mapを見てみると…
『富士川SA』
なんと、海老名を出て3時間近く経とうというのに富士です。
混んでなければ1時間と少しで着くはずの距離ですが、どうやって3時間も掛かったんだろう…?富士川の前でも相当停車していたのでしょうか?
いずれにせよここまで進んだ気がしないバス旅行は初めてだったので、とにかく不思議な感覚でした。
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なんだかんだ眠いままで、外気の寒さも素肌に堪えたのでさっさとバスに戻りました。その後はまたひと眠り。
距離も時間も数字的には既に折り返しを過ぎていますが、どうにも実感だけが置いてけぼりです。
朝7時前、バスの遅延を伝える静かなアナウンスと共に目が覚め、バスは朝焼けに照らされる浜松市内を走行していました。
一応終点は浜松駅ですが、それ以前に浜松近辺の小さな高速のインター等も降車地点に設定されており、そこで3割くらいの人が降りました。
やはり『帰る』便として利用されてる感じですね。
到着予定は6時頃でしたが、なんだかんだ7時頃に浜松駅着。
実乗車時間は6時間半、睡眠時間は4時間弱。眠い!
夜行バスで、横になった時と同じように眠るのは至難の業ですね。
(降りた時の写真、一枚くらい撮れば良かったなぁ)
眠い目をこすって浜松駅構内へ。
この限界旅行に出る前の3日間、あまりにも私とウマが合わず社会人として問題のある性格の上司(上司の上司でさえそのいびつさに苦笑するレベル)とコンビで仕事をする羽目になり、それまで「それで良い」とされてきた自己流仕事の進め方の8割を否定・指摘・非難・叱責され、風呂も飯もままならない業務量に苦しんでいたもので、コンビニの菓子パンと眠気覚ましのコーヒーくらいしか胃袋に残っていませんでした。
多分自分の身体に残ってる栄養貯金を切り崩して仕事してたんでしょうね、空腹すら感じなくなっていた頃でした。
それでも「なにか腹に入れなければなぁ…」と感じていた時、駅構内の立ち食い蕎麦屋が開いてたので、そこを朝飯とすることに。
浜松駅構内の「自笑亭」さんで、朝そばです。
朝飯なんて5日ぶりくらいだったので、不思議と感動すら覚えてました。
「人間らしい!!」と(?)
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うめ~~~~~~~~~~。
学生の頃駅そばに目覚めたので、こうして趣味を満喫できたってのは、心も腹も満たされる時間でした。
ちなみにこの月見そば、440円。良い~~。
ええもん食わせていただきました。
朝食を済ませ、いよいよ本日の傷心旅行(?)に歩みを進めます。
どこにいくかをあまり決めてませんでしたが、とりあえず癒されるスポットに行くことは考えていました。
参考文献は『ゆるキャン△』です。
ということでJRの乗り放題切符を手に向かったのは弁天島駅。
そこから徒歩10分ほどのところに、絶景が待っていました。
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耳にスッと馴染むさざ波と、スズメのような鳥の鳴き声。
橋を渡る自動車は、波が音を打ち消して、無声アニメのように映ります。
釣り人がチラホラいるだけで、混雑とも雑踏とも無縁です。
あまりにも幻想的・快適な空間でした。
思わず私は…
自分の命が尽きる方法・瞬間・場所を選べるのなら、ここで鎮静剤でも打たれて寝落ちするのが理想。 pic.twitter.com/FCx8rBMn4J
— けーる (@AGZ1MPROSaWER6J) November 3, 2023
病みが加速してました。
リフレッシュとは?
いや本当に、帰りたくないって思いました(汗)
都心の満員電車や人通りの多い場所で掲げられるポスターの中のような、なにも邪魔しない、自分を苦しめない環境で満たされていたのですから。
なんだかんだ一時間はここでぼーーっとしてました。
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遠くに見える赤鳥居、時期や時間を選べば足元まで行けるそうですが、今回はとてもそんな雰囲気では無かったので、また機会を改めて訪れたいですね。
海と静寂を堪能し、次はどうしようかとぼんやり計画を練りながら、弁天島駅へ戻りました。この駅、海水浴客によるラッシュ対策のためか異様にホームが広いんですよね。
普段仕事で関東の主要駅や地下鉄の駅を頻繁に行き来するのですが、もともと人混みが苦手なのでひたすらに苦痛なんです。それに対して弁天島駅のこの余裕と人の少なさ、なんともゆったりとした時間が流れています。
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さて、ここからは少々乗り鉄に興じることにしました。
先の乗り放題切符でJR東海は新所原(しんじょはら)駅へ、ここからは天竜浜名湖鉄道に乗車します。
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列車は30~1時間に1本。丁度私がJR新所原駅に到着したタイミングで折り返しとなる列車が入線してきてくれたため、ボックス席1区画を確保できました。
ちなみに乗車に当たっては、下のフリー切符を購入しました。天浜線の浜名湖沿いと、遠鉄電車(天浜線との乗換駅である西鹿島ーJR浜松駅と隣接している新浜松)全区間が乗り放題という浜名湖外周欲張り乗車券。一人一日分1480円で、これは天浜線新所原ー西鹿島乗り換えー新浜松を片道乗り通した時の通常運賃と10円しか変わりません。一度でも途中下車すれば元が取れるレベルで、超お得な切符です。
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切符はまさかのエヴァ。
2021年に公開された最新作で、主人公たちが色々あってサバイバルな生活拠点を開拓しているというのがプロローグに据えられているのですが、その生活拠点となる土地のモデルが天浜線の新所原駅や(今回は行きそびれた)天竜二俣駅なんですよね。まだコラボしているとは思っていませんでした。
エヴァは私が高校生時代(ヱヴァQ~シンエヴァの間)、受験勉強と同じくらい考察に時間を費やしていたくらいにハマっていたアニメなので、これも思い出を振り返るような機会になってしみじみとしました(因みに綾波派で、ビジュアルとして好きな機体は3号機です)。
『カロロロロ…ガルンガルン!グギギギギ…』
1両という、もはやバスのように軽やかな見た目とは裏腹に勇ましい動力を山奥で響かせる列車(列とは?)は、軽快に浜名湖沿いを駆け抜けます。
線路は1本なので、駅ではすれ違いのため少々停車する機会があります。
こうしてみると天浜線はカラーバリエーションが本当に豊でしたね。
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戦後、神奈川を横断するように走る列車で初めて採用されたカラーリングであることから
『湘南色』という呼ばれ方があります。
ネットで探すと、本当にいろんなカラバリ(ラッピング)があるそうです。今回の参考文献なゆるキャン△を始め、浜松に本社を構える自動車メーカースズキのバイク、ヤマハのボイスロイドなど…いつか制覇してみたいですね。またここに来る理由が出来ました。
列車は遠鉄との乗換駅である西鹿島へ、ここからは遠鉄の旅です。
関東の赤い電車が京急、中京の赤い電車が名鉄なら、静岡の赤い電車は遠鉄です。天浜線のスリムさに負けじと(?)、こちらは2両。
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これ、この車体と路線規模にしては相当高密度です。
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実は数年前に新浜松から数駅だけ乗ったことがあるので、あんまり新鮮な気分にはなりませんでした。それでも、このチョコンとした感じ、地域密着な雰囲気で、浜松のだだっ広い平野部をトコトコ進む感覚は『"電車"だなあ』という自己流過ぎて誰にも共感してもらえない満足感に包まれます。
いや、都会、特に東京都心や地下鉄は、あの窮屈な都市空間を無慈悲にきびきび動く感じがもうエレベーターみたいじゃないですか(?)。なんか、鉄道を楽しめる環境とは思えないんですよね。それを長々と味わった中での天浜線、遠鉄ですから、鉄道の本来の有り様みたいなのを感じ取れた気がしました。大井川鐡道とかに乗ったら泣くんじゃないんすかね。
そんなこんなで途中下車をしながら、グルメなり散歩なりを嗜みました。
この部分は究極に自己満なので、載せません。
浜松・浜名湖でひとしきり色々傷心を癒されたあとは、この日の最終目的地を県内の実家に設定してたので東へ移動。少し時間がかかる距離なので、浜松で色々済ませたら直行するつもりでしたが、ここでJRの乗り放題切符の特典を利用することに。
実はJRの乗り放題切符、内約が「切符+沿線観光割引券」というセットになっていて、割引対象も10か所以上設定されています。ので、帰路の途中で駅からも遠くなく、かつ行ったことの無い場所へ行こうと思いたち、静岡県掛川市の掛川城へ足を運びました。
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城という城を訪れたのは5年ぶりくらいでした。
通常はおとなひとり410円で、乗り放題に付属の割引券適用で320円。優しい値段で入れます。
館内の写真撮影は可能でしたが、割と見物客が多かったのでスルー。
城内は復元と言いつつも、当時の設計を木造で建築したとあり、実質戦国時代のそれと同じ構造になってました。一番驚いたのは階段の急峻さ。一段が成人男性のひざ下長くらいあり、足元を気遣わずには登れません。
なんなら入り口で「こんな急な階段登れんわ」と、入場券を買ったにも関わらず引き返すご老人がいた程。体力と足がまともな時に上っておきましょう、掛川城。
苦労の先にはご褒美がある_________、成人でもひいこら言うような階段を上った先には、天下人にこそ許された絶景が待っていました。
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個人的に山に囲まれてる地域に落ち着きを感じるので、この天守閣に住みたいなと思いました
(無理)。
スカイツリーやら高層ビルから眺める景色もきれいですが、地に足のついた感覚の延長線から望む景色にも趣があります。子どもの頃、ジャングルジムや公園内の丘から景色を見た時のような「実感のある」静かな高揚感を思い起こさせます。
掛川城内には、天守閣とは別に『御殿』と呼ばれる建造物が鎮座しています。天守閣が支配の象徴で、御殿は実用的な仕事場という区分だそうです。
畳の平屋…日本人だからか、特別な空間という感覚があまり湧かなかったんですよね。和室と縁側は、安らぎ生活空間のステレオタイプみたいなイメージがあります。
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少々脱線しますが、昨今はテレワークだのコワーキングだの横文字が輝きを見せるフレキシブルなワークスタイルがトレンドですが、日本人の原点に立ち返って畳部屋で紙とペンで仕事をするスタイルなんてものがあっても良いんじゃないかなぁと感じました。みんな道具の簡略化とか個人化とか働く場所の拡充を無制限に進めてますが、高度に機能化・効率化されたワークライフに労働の実感はあるのかなぁなんて思ったり…。
私も将来同棲なり家族なりと一緒に暮らすようになったら、畳部屋か畳もどきの和室みたいな空間が欲しいですね。
県外の人にとって静岡県のイメージは『富士山』と『お茶』でしょう。
富士山を最も楽しめるのが県東部全体だとして、お茶は県西部がメッカになります。掛川は特にその中心地域です。お茶と歴史を嗜みに、またいつか訪れたいですね~。
ってなわけで、傷心旅行は完結です。
短すぎる夜行バス。それは私にとって、時間の進みも空気も違うような地域へいざなってくれる心の救難艇でした。
穏やかな海と山と、のんびりとした鉄道旅と日本人の琴線に触れる歴史に触れられた浜松・掛川。元静岡県民ながら、こっちの方は生まれてこのかた全くと言っていいほど縁が無かったので、今後じっくり開拓していきたいですね~。
これで仕事に万全な精神で復帰できたかというと割と否ですが、「またここに来る」という楽しみは、「もう少し頑張ろう」というモチベーションアップに還元されました。
どうせ5年も今の職場にはいないでしょうけど←
(なんなら静岡戻って生活したい欲さえ湧いてるんだよなァ)
仕事も旅行も、やはり自分が満足する方向を突き詰めたいですね。
長々とダラダラと書き連ねてきたので、この辺で終わらせていただきます!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました~。
石田橅でした!