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ヒンデミット:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1番 作品31


ヒンデミット 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1番 作品31


 パウル・ヒンデミット(1895-1963)は、ドイツの作曲家、理論家であり、ヴァイオリンやヴィオラを始めとする楽器の優れた演奏家でもあった。
 この第1番は、第2番と共に1924年に作曲され、同年、自身が運営委員を務めたドナウエッシンゲン音楽祭にて初演された。1920年代のヒンデミットの作風は、ロマン主義的な傾向に相反する、純粋な音の喜びの追求に向けられている。この作品は、小節線の表示はあるが、一定の拍子を持たず、調性も明記されていない。また楽章の冒頭で基本的な符価の表示があるが、それも小節内で自由に変更される。このような自由さを持ちながらも、伝統的なソナタ形式の構想を基に作られている。
 ヒンデミットにとって作曲をするということは、手紙を書くのと同じ感覚であったという。その一例として、本日演奏する《無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番作品31》も、ブレーメンからフランクフルトへ向かう汽車の中で作曲されている。この曲は彼がヴィオラ奏者を務めていた、アマール・ヒンデミット弦楽四重奏団の主宰者リッコ・アマールに捧げられた。この四重奏団は、富山を愛し、晩年をここで過ごしたヴァイオリニスト、シモン・ゴールドベルクも一時期演奏をしていたことでも知られる。

第1楽章:非常に生き生きとした8分音符


活発な主題に始まる技巧的な楽章である。イ音から始まるが、調性が確定することはなく、動機が機能的な展開をし、反行形を多用しながら、嬰ニ音で終わる。

第2楽章:非常に緩やかな4分音符


複付点を持つ動機による主題に始まる。中間部はプレストの短いカデンツァ風であり、再び曲想は静まり主題が回帰するという、3部形式の形をとる。最後は冒頭の動機が逆になりニ音で終わる。

第3楽章:非常に生き生きとした8分音符


舞曲風の曲想を持つ楽章で、快活なリズムの主題に始まる。ロンド風の楽章であり、最後は、下降するハ-ロ-イ-トの4つの音の反復が、ディミヌエンドをしながら、徐々に速度をゆるめ、消えるように楽章を終える。

第4楽章:静かな動きによる8分音符


「間奏曲、歌曲」の標題を持っており、さらに静かに柔らかく奏するようにと指示が与えられている。優雅で抒情的な楽章である。

第5楽章:プレスティッシモ


弱音器を付けた波のような主題に始まる。途中には技巧的な動きもみられ、最後は力強く変イ音でこの曲の幕を閉じる。

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