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京都市の宿泊税引き上げと財政再建への挑戦

 京都市が宿泊税の引き上げを検討しており、市議会可決後総務大臣の同意が得られれば2026年3月からの引き上げ実施を目指す考えとのことです。宿泊税は現時点で全国で10の自治体が導入していますが、その税額は200円~500円という設定が主であり、最大1000円という設定は相当に「攻めた」政策と言えます。京都市の宿泊税の現行と引き上げ後(案)の体系を以下のとおり表にしてみました。「税率」という欄は私が目安として付けているもので、「宿泊税÷1泊当たりの宿泊料金」で算定したものです。ちなみに京都市の宿泊税には免税点(例えば宿泊料金が5000円未満の場合は課税しない=免税点5000円)がありませんが、自治体によっては免税点を定めているところもあります。

 こうして見ると現行の税率は1%~2%台であり、これを2%~10%(!)の体系へ移行しようということですから、もともと攻めた設定のところを更にゴン攻めしていくという京都市の強い意志が感じられます。京都市の2023年度の宿泊税収入は52億円と全国トップですが、この引き上げが実現すれば約130億円まで税収が増える見込みだそうです。なお2025年の大阪・関西万博を控え、大阪府も2025年後半の宿泊税引き上げを目指して動いています。その他の自治体も続々とコロナ後のインバウンド増加を受けて宿泊税の導入を検討しています。

 さて、京都市の宿泊者数(2023年、年間)は調査によれば1474万人(以下表)であり、その1/3強にあたる535万人が外国人ということです。現行の宿泊税体系で言えば、税収52億円÷1474.5万人=353円ですから、1人当りの宿泊税平均は約350円であり、宿泊税引き上げによりこの平均が2倍以上に伸びて130億円もの税収になるだろう、という予測でしょう。

令和6年7月23日京都市産業観光局「令和5(2023)年京都観光総合調査の結果」

 京都市の宿泊客はほぼ市外からの来訪者でしょうから、宿泊税で税収を稼ぐ政策は京都市民の懐に優しいという点で住民の支持を得やすいと思われます。読者の皆さまの中には「京都市なんて観光資源が豊かで財政も潤っているはずなのに、なぜそうまでして税収を稼ぎたいのだろう?」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、実は京都市の財政は大変厳しい状況に直面しています。

 この理由には京都市が上のサイトで語っているように「京都ならではの都市特性(人口に占める大学生が多い、市域の3/4が森林、数多くの歴史的資源、木造家屋が多い等)が税収面では課題となっていること」もありますし、平成初期の大型公共投資(梅小路公園の整備:約530億円や鉄道高架化事業:約610億円)に際して平成6~10年の5年間に約5千億円と多額の市債が発行されたことや、市営地下鉄の救済のため平成29年度まで967億円の市債が発行されたことがあります。京都市は市債の返済原資を確保するために必死で財政を改善しています。

 京都市の財政改善の努力は以下の京都市のサイトに書かれていますので、興味をお持ちになったら是非見てみてください。私は学生時代を京都で過ごし、京都の町と人々には随分とお世話になりましたので、ぜひとも京都市の将来が明るいものであることを願うばかりです。皆さまも「なんだい、ケチだな京都ってやつは!」なんて言わずに、どうか暖かい目で京都市を支援していただければ幸いです。


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