ヴラスタ

あなたに出会えてうれしいですよ。私と一緒に世界を滅ぼしましょう。

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    思考のローカストホール

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    言葉の何か

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あいまい日記15 ─あなたを追うものを見よ

あなたを追うものがある。 例えば仕事。家事。人付き合い。趣味。 あるいは老い。 あなたは逃げ切れない。 すでに捕らえられた身体を見捨てて、 心だけが心許なく、時間の影に隠れようとする。 すでに尻尾はつかまれている。 生きている限り、身体はいつもここにあるからだ。 その爪が心に届くのも時間の問題だ。 身を翻して向き合いなさい。 とくと見よ。 敵の姿を知るとき、 あなたは自分の姿もまた知るだろう。 意志が命となり、命を燃やしてあなたは進む。 追い込まれるな。 見て飛

    • あいまい日記14 ─掃除

      脳は考えてしまう。 取るに足らない言葉やアイデアが膨大に泡立っている。 発生した泡が自然消滅するよりも少し早く次の泡が発生し、 徐々にバッファを埋め尽くしていく。 視界(思界)が悪くなっていく。 美しい言葉やアイデアが見逃されていく。 排出するべきだ。 たゆまず排出し続けるべきだ。 泡を、ノイズを、雑草を。 そうして開けた思界。 そこで美しい言葉やアイデアを探索し、 手際良く表現にしていく。 視界は思界の投影だ。 あるいは思界が視界の投影かも知れない。 思界をクリアに

      • horizon

        あなたの翼は銀色に輝いていた。 精緻に連なる細糸の広がりが大気をつかむ。 加速する。上昇する。 眼下の世界はただのサーフェスとなり果て、命は遠く、意味を失う。 あなたがそこにいる。 清らかな虚空で、それがただ一つの意味となる。 光へと昇る。 それがただ一つの意思となる。 力尽きるまで。 しかし、あなたは届かない。 墜ちる。落ちる。 サーフェスのひだの間に飲まれて消える。 それがただ一つの物語となる。 あなたはそれを知らない。

        • あいまい日記13 ─世に歩みの定まる者なし

          他人を欠点を指摘するのは簡単だが、 しかしそれで他人を変えるのは難しい。 自分の欠点をありのままに理解するのは難しいが、 しかし他人を変えるよりは自分を変える方がずっと簡単だ。 矛盾にまみれた私たちの世界。 誤謬にあふれた私たちの言葉。 どこまで自分自身を騙し通せるか。 そんなチキンレースが日々催されている。 怖いのは誰もがそれに無自覚なことだ。 あなたも。私も。 世界は“良い世界”にとっていつも危なっかしい。 誰かに甘える個人主義者。 それは不誠実だ。 己の足で立

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        • あいまい日記
          15本
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          12本

        記事

          あいまい日記12 ─異星人たちに囲まれて

          “生まれる星を間違えた”という感覚が常に響いている。 地球の人間社会に生きる人々が、少なくとも生物学的には同質なはずの同胞たちが、一人残らずあまりに異質な存在に思える。 その価値観が。生活態度が。社会性が。 うまく具体例が挙げられるわけではない。 日々の社会生活に全然馴染めていないということもない。 ”自分は彼らとは違う”というある種のエリート意識でもない。 ただただ、あらゆる他人がどこまでも遠く感じる。 賑やかに活動する人々さえ、都市の遠景を眺めているかのような、静的な印

          あいまい日記12 ─異星人たちに囲まれて

          あいまい日記 11 ─すべてが経験

          生きている限り全てが経験だ。何もしていなくても「何もしていない」という経験を生きている。経験が途絶えるのは(おそらく)死んだときだけだ。 美味しいものを食べる。旅をする。いろいろな仕事をする。恋愛をする。成功をする。失敗をする。宝くじに当たる。破産する。大怪我をする。大病を患う。犯罪に巻き込まれる。etc... いわゆる「人生経験」なるものの正体は「おもしろく語られやすい経験」のことだ。そういうことをしないと、その分だけ人生に占める無の領域が広がるというわけではない。例え

          あいまい日記 11 ─すべてが経験

          refraction

          「多様性」の豊かさとは、 多種多様な宝石で満たされた収集箱のことではない。 「多様性」の豊かさとは「差異の発見」だ。 同じ光を、異なる屈折率を持つ石たちを通して眺めることで、 多面的に理解された光そのものが、 ひとつの宝石となり、この世界に生まれ落ちる。 これが「多様性」の果実である。 他人の収集箱を検分しては、 あの宝石やこの宝石が欠けていると嘆く者たちは、 あらゆる石たちを、光の届かない暗闇に死蔵しようとする、 おぞましきコレクターである。 彼らの手に石たちを渡

          cats and dogs

          土砂降りの大雨が、人を街から締め出してくれる。 絶え間なく打ち付ける雨の音も、人の存在感よりはずっと静かだ。 世界が静かになる大雨の休日。素敵な一日。

          gray

          人の世の醜さに顔を歪めながらも、 のうのうと日々を生き抜く。 矛盾が止揚されるまで妥協でやり過ごす。 この鈍感さこそが、人間の大いなる美徳だ。 鈍感さこそが物事を前へと進めるのだ。

          society

          彼らの家の炉には、いつも赤々と火が燃え続けている。 ぬらぬらと揺らめく欲情の火。 決してこの火を絶やしてはならない。 脅迫じみた観念に操られるように、 彼らは代わる代わる薪を焚べ続けている。 次々と激しく赤熱し、燻る灰へと変わる娯楽の薪。 彼らの表情が火に照らされる。 快活で満足げな笑顔。 しかし火の赤が映り込む彼らの両眼には、 蛇のように無機質で底知れない酷薄さがきらめいていた。 薪を持たない者は輪からはじかれる。 炉の火を好まない者は去っていく。 しかしそれでも

          human

          「あなた…それでも人間なの?」 これでも人間だ。そして、だからどうした? 「人を騙して、人を責めて、人を傷つけて、人を殺して。人間のやることじゃない。」 人間のやることだよ。いくらでもやってきたことじゃないか。あんたにとっては“人間”というのは、現に生きている人間のことではなく“神”とか“善”とかと同じく思想や概念なんだな。そんな“人間”がいると思うのか?まさか自分がそうだと? 「何を言ってるの…まともじゃない。人の心がないの?」 まともじゃない?当然だ。人間はそも

          forget me not

          「君は何のために生きているのかな?」 暗い静かな川べりで放たれた漠然とした問いは、普段なら茶化してやり過ごすような、ごくつまらないその問いは、夏の甘やかな夜風に混じると奇妙なほど自然に響いてきた。 「人間は何かのために生きているわけじゃない。たぶん、それは考える順序が逆なんだ。生きているがために何かをするしかない。そして俺たち人間の場合は、することが無闇に多彩なだけだよ。」 「ふーん…まぁそうだね。合っていると思うよ。“私たちは”そうなんだろうね…。でも“君は”どうなの

          macrocosm

          認識と存在の総体。 すべての関係性の総体。 それが私。それが魂。 世界は私であり、私は世界である。 それを悪に染めないこと。 それを怒りに染めないこと。

          lens

          目を開ければ光。耳には音。鼻にはにおい。 触れば感触があり、持ち上げれば重みがある。 時には暖かく、時には寒い。 体温を感じる。呼吸の心地よさ。 食べて、飲んで、味わい、満腹感。 楽しかったり、退屈だったり。 働いたり、遊んだり。 過去を思い出し、未来を計画する。 美しいものを見て感動する。 新しいことを知って活力を得る。 生きることのすべてがここにはある。 ただ実在感だけが無い。 世界は丸ごと、レンズの向こう。

          experiment

          ある対象について知るために、光を当てたり、衝撃を与えたり、熱を加えたり、水に浸けたり、加速させてみたり。 自分を知ることも、そのように。

          あいまい日記 10 ─「幸福」について

          「幸福」とは何か。それは結局のところ「幸福感」のことだと思っている。じゃあドラッグなどで手っ取り早く「幸福感」を得られるとしたらそれ良いかというと、そういう話でもない。「幸福」とはシンプルに「幸福感」だと仮定して、そこで重要になるのは幸福感への「感受性」を健全に高めて、緻密に把握していくことだ。そして「人生を通じての幸福」を理解することだ。 私が「幸福」について思うとき、いつも以下の言葉が響いている。 人はおおむね自分で思うほどには幸福でも不幸でもない。肝心なのは望んだり

          あいまい日記 10 ─「幸福」について