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緊急映画レビュー) 「マダムウェブ」は悪くない?マーベル初の「本格ミステリー・サスペンス」はウソじゃなかった...!

「マダムウェブ」の全米公開の翌日に観た後で、日本公開に一週間以上の差があることを知りました。日本でも公開されたので、まず結論を書きます。

「マダムウェブ」はスーパーヒーロー映画にはならない映画だったのに、スーパーヒーロー映画を期待されてしまった不運な映画だったのである。
(※ネタバレもありますが、ストーリーの核心には触れておりませんです。)


公開を待つ日本のファンの声をX(旧ツイッター笑)で拾うと「なんでこんなに評価が低いの?」という声が多い。その通り、アグリゲーションサイト、ロッテントマト で13%(2月17日現在)というのは確かに悪い、というより最悪の部類。

しかし密かに「実際に公開されれば、日本の聴衆にはそれほど悪い印象を持たれないのでは?」という気がしている。日本では「マーベル初の本格ミステリー・サスペンス映画」というマーケティングがされているからである。(後で詳しく触れる)

日本のチラシとポスターには「マーベル初の本格ミステリー・サスペンス映画」とある。

この映画を責める気にはなれない!

一人のマーベル映画ファン、スパイダーマンのファンとして観た感想。まず配役にダコタ・ジョンソン、今をときめくシドニー・スゥーニーを初めとしたフレッシュな女優陣プラス「ご懐妊中のおばさん」という役のためだけに、エマ・ロバーツを起用し、そのパートナー役にアダム・スコット。そこまで入念にキャスティングされた映画を嫌いになることはできない。(悪役のアジトで街を監視するギークなキャラクターにHBOのコメディ「Girls」のゾシア・メメットが出てくるなんていう、ボーナスもあった。)キャラクターのポスターだってワクワクする出来である。

3人のフレッシュなスター達の魅力はこの映画の価値を押し上げている。

この映画がなぜ13%なのか?

一言で言えば批評家の多くが「主人公たちがスパイダーマン(女性だからスパイダーウーマンか)になって活躍するアクション映画だと思っていたのに...」と落胆したからではないだろうか。もちろん自分もそういう映画を期待していた

その点「ミステリー・サスペンス」映画としてマーケティングしている日本の配給会社の戦略は全く正しい。ダコタ・ジョンソンは覚醒まではスーパーヒーローでも何でもないので、もちろん追いかけてくる敵(シムズとやら)と素手で戦うなどということはしない。ましてや、ダコタ・ジョンソンの手首からスリング・ショット(蜘蛛の糸)が、なんてことは想像もさせてくれない映画、それが「マダムウェブ」なのだ。

ただし敢えて補足しておくと、ミステリーの部分は映画始まって早々に説明があるし、サスペンスというにはかなりストレートに物語が進行してしまう、という難点はあるだろう。(これが13%の理由の一つと言える。)

インターネットのポスターには「スパイダーマン」のイメージが散りばめられている。

なぜこういう映画になったのか?

まず前提として、2月は映画興行成績的には最悪の月の一つである。本家「スパイダーマン」シリーズのような大作をここにぶつけてくることはあり得ない。そもそも「マダムウェブ」で本家と関係がありそうなのは、エマ・ロバーツとアダム・スコットが苗字が「パーカー」である、という映画を2時間鑑賞した後にクレジットでようやく気づいた事実ぐらいである。

次にアメリカでは「ミステリーサスペンス映画」などという売り方はされていない。かと言って「マーベル映画」という売り出し方もしていない(そもそもマーベルからライセンシングしているソニーが制作し配給中の映画である)。重要なのはこの映画がバレンタインデー(2月14日水曜日)に公開されて、プレジデントデー(2月19日)という祝日を含む3連休の週末に向けたリリースであること。つまり:

バレンタインデー→女性にも楽しめる映画を!
3連休→親子連れでも楽しめる映画を!

という映画の目的を考えると、本当に「本格的なミステリー・サスペンス映画」にすることも難しい。余談だが「ナイブス・アウト/名探偵と刃の館の秘密」(ダニエル・クレイグ主演、2019年に全米公開)のような映画を本格的なミステリー・サスペンス映画と考える自分には「マダムウェブ」は全く別のジャンルの映画である。どちらかというと「トゥームレイダー ファースト・ミッション」(アリシア・ヴィキャンデル主演、2018年に全米公開)を「マダムウェブ」を観てて思い出した。

以上、結論として「なぜこの映画が『女性版スパイダーマンにならないか』」の回答は「万人に受ける映画を作ろうとして、そもそも原作コミックに頼れない事情もあり、特徴のない映画になった」ということなのだろう。個人的には最後の20分の山場のアクションはよく出来ていたと思うが、そこに至るまで「自動車が河川に突っ込む」「自動車が救急車に突っ込む」「自動車がダイナー(レストラン)に突っ込む」(つまり全部車が突っ込むだけ)以上のアクションらしいアクションがないのも13%の理由の一つでもあろうと思う。

スパイダー・ウーマンに明日はあるか?

つまり「マダムウェブ」はスーパーヒーロー映画にはならない映画だったのに、スーパーヒーロー映画を期待されてしまった不運な映画だったのである。映画内でダコタ・ジョンソンが突然「ペルーに行くからこの子らよろしく」と言い残し、10代の女の子3人の面倒をいきなり押し付けられたアダム・スコット並に不運である。どうしたらそんなことが仲間の救急隊員に対して出来るのだ、キャシー(※映画の主人公カサンドラの愛称)よ...。

話はそれたが、ダコタ・ジョンソンの映画の中のキャラクターは、ピーター・パーカーの(内面に寂しさと葛藤を抱えた)キャラクターとは随分違う。やはり彼女がスパイダーマン(女性だからスパイダーウーマンか)にならなくて良かったという気もしている。スパイダーマンになるべきなのは、この映画の場合、3人のティーン達なのであるが、「13%」のせいで彼女達が活躍するであろう続編が危ういのではないか、という点は気がかりであります。

スーパーガール=スパイダーウーマン?


ところで新しいDC映画「スーパーガール(仮題)」に抜擢された女優ミリー・アルコックさんは、映画「スパイダーマン: アクロス・ザ・スパイダーバース」に登場するグエンに似ていると思うのは私だけでしょうか。

マーベル映画でおなじみ、ジェームス・ガンが制作するDC映画「スーパーガール」役のミリーさん


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