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vol.558「ケーススタディ その仕事、受注しますか?断りますか?」(2024年9月13日配信)


自民党総裁選 - 危機がもたらす改革の機会

自民党の総裁選がかつてないほど激しいですね。 なんと、9人も立候補しています。 これほど多くの候補者が出てくるのは、 本命がいないからです。 皆、「このままではいけない!」と 強い危機意識を持ったのでしょう。

危機意識を持った人は 状況を打破しようと奮い立ちます。 小泉進次郎さんもそうなのでしょう。 「私が総裁になったら…」と、 多くの改革案を披露しています。 危機だからこそ、アイデアが出るのでしょう。

「危機意識は人をクリエイティブにする」は、 経営も同じです。

ケーススタディ: 厳しい経営判断の岐路に立つ

例えば、あなたが社長だったら、 こんな時、どうしますか? ケーススタディとして考えてみてください。

あなたの会社は大手メーカー数社から 金属部品の加工を委託され、 担っている会社です。 新規のお客様であるA社からのオファーを頂きました。 大手メ―カーで、一度お付き合いすると 長く続く可能性があります。

ところがこのA社。価格にはシビアです。 見積もりを持って行ったところ、 「話にならない、これ以上のことをしなきゃ」と 突き返されてしまいました。 「では、ご予算はお幾らくらいでしょうか?」と 尋ねると、とても利益が出ると思えない金額です。

今期、あなたの会社は不景気の影響で 業績は思わしくありません。 赤字転落も覚悟しないといけない状況です。

さて、あなたがこの会社の社長なら、 A社の仕事は受注しますか? それとも断りますか? 二者択一です。考えてみてください。

受注のメリット: 短期的な利益と長期的な可能性

まず、受注した場合を考えてみましょう。 A社の仕事は、単体では利益は出ませんが、 固定費を吸収には貢献します。 そうすれば全体の赤字化を防ぐことも可能です。 さらに、社員に賞与を支給できる可能性が出てきますし、 赤字に比べれば銀行の印象も良くなります。 また、今後A社との取引きが続けば 来期以降の売上拡大に繋がります。 なんか、いいことばかりですね。

では、断るとどうなるか。 こちらも考えてみましょう。 先日お会いした従業員数300名強の 金属加工業のB社長は「断る」を選択しています。 その理由を、以下のように説明してくれました。

断る勇気: 長期的視点に立つ経営判断

「この場合、もし受注するとしたら それは、売上が欲しいからだよね。 でも、わが社は売上増を目指していないんだ。 なぜなら、『売上を伸ばせ、もっと売ってこい』と 社員に指示すると、価格競争になるだけだから。

この場合のA社も、どこかの会社と比較して より安いところを探してオファーしたのでしょう。 それで受注したとしても、 社員を酷使するだけで、何も残らない。

当社は、売上拡大ではなく、 付加価値の創造を目指しています。 技術力を高めて、『こんなことができるのなら、 是非貴社に仕事を頼みたい』というお客様と出会う。 そして、その技術力に見合う対価を頂く。 これがわが社のビジネスモデルです。

ところが、売上欲しさに安値で受注すると、 儲からないけど仕事がある状態になる。 毎日『忙しい、忙しい』と言って過ぎていく。 すると、社員は仕事があるので安心して、 考えるのを止めてしまう。

逆に、受注しなければ、仕事がない状態になる。 すると人は危機意識を強くする。 『やばい、何とかしなきゃ』と自然と考えるようになる。 受注がないのは今の技術力では魅力がないから。 だったらそれを高めて、新たな需要を創る。 それには「仕事があったらダメ」なのです。

仕事があると人は安心して努力しない。 仕事がないと人は創意工夫する。 だから、不採算なA社の仕事は断るのです」

皆さんは、この社長の選択をどう思われますか?

同社は創業80年を超える会社です。 大手の委託加工がメイン業務ですから、 これまで、プラザ合意、バブル崩壊、リーマンショックなど 何年かに一度は仕事がない危機に直面してきました。 この間、創業家の他にメイン顧客や銀行から 社長を迎えたこともあります。 それだけ、危機が大きかったということです。

が、同社はその度に技術力を高めて乗り越えてきました。 そして、かつては特定一社への依存度が高かった 売上構成比も、様々な業種との取引を増やすことにより、 徐々にバランスがとれるようになってきました。

昨今は、これから国内で伸びる市場として 国防、海洋開発、社会インフラ、医療、 IT(半導体)、リニア の6分野をターゲットに定め、 大手メーカーへのソリューション営業を続けています。 上記いずれかの業界が仮に不景気になったとしても、 カバーし合えるリスク分散の体制が整いつつあります。

付加価値経営: 新時代の経営指標

本メルマガの552号で、 「勝ちは人を止める、負けは人を進める」ことを、 日米の経済成長の差からお伝えしました。

まさに社長がおっしゃっていたことはこのことで 「売上げありは人を止める。売上げなしは人を進める」 ということでしょう。

そんな社長に「売上げ目標があるのですか? 一番重視している経営指標は何ですか?」と 質問をしてみました。

「一応売上げ目標はありますが、 『絶対達成!』のように強いものではありません。 一番重視しているのは『付加価値率』です」。

この回答に、今日的経営の神髄を見た気がしました。

9人もの総裁選の立候補者が出たように 健全な危機意識こそが人を育て、奮い立たせます。 あなたも是非、売上よりも、 営業利益額や付加価値率に拘った経営をしていきましょう。

実践に役立つ動画の解説

このメルマガを読んで、「自社でも取り組んでみたい」と思われた方は、以下のような疑問や質問に答えていますので、ぜひこちらの動画をご覧ください。

質問項目

  1. 実際にはケーススタディのどちらの回答が多い?

  2. 「断る」を選択できる会社や経営者は、なぜその選択ができる?

  3. 自社なりの基準を考えるときのポイントは?


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ほぼ週刊でメールマガジンを発行しています。その時々に経営者の皆さまが関心を持たれるトピックの解説や、そこから経営に活かせる知識などを紐解きます。

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#自民党 #小泉進次郎 #プラザ合意 #バブル崩壊 #リーマンショック #国防 #海洋開発 #社会インフラ #医療 #IT #半導体 #リニア #日米


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