雪原の中
窓から望む一面の雪景色、この豪雪地帯では、どうも半月から新月に向かっている時は晴れる日が多いような気がする。今は午後で朝の雪の煌めきは無く、雪はほのかに空の青を薄く受け止めてながら山の影の色と白が心地よく混ざり合っている。
この地域では、冬季鬱になる人が多いらしいのだけど、虚空はこの季節が、雪が、山々の稜線が、この上なく美しく、物静かに寄り添うように在ると感じている。都会に暮らしていた時には考えもしなかった感情を噛みしめる事ができる。
夜遊びの時間はTattooのデザインの時間になり、ランチやデパート巡りの時間は日々の生活や猫たちとの時間に変更された。
変わらないのはタバコを吸う事と、宇宙の中にダイヴする事。環境が変わっても虚空が虚空であり続ける事ができる習慣、うん、習慣と云うよりももっと儀式めいたものかもしれない。
虚空は趣向品として手巻きタバコを嗜む。タバコの葉の湿度を調整し巻紙を一枚手に取る。好みの量の葉をほぐしながら、巻紙にそっとのせ、フィルターを添えて、指先でくるりと巻紙を丸め、湿った舌先で、巻紙に端のノリの部分を慎重に舐め、一本のタバコに火をつける。
今日も白く輝く優美な稜線を眺めながら吸うタバコは美味しい。
この文章を書き始めた時のわきたつ雲はどこかへ。今は夕暮れの落ち着いた青空が広がって、月の気配が満ちてきている。
Photo by VIVIDACME
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