三菱UFJフィナンシャルグループの内情を有価証券報告書から読み解く。(2022年度参照)
挨拶
このページをご覧になってくれている方ありがとうございます。改めましてコブータと申します。私は米国公認会計士や簿記2級の学習を通じて会計のマニアになりました。企業の財務分析を行うことで皆様の投資判断の材料にしたり、就職、転職の企業分析にお役立ちいだだければと思います。他の方の記事と比べて一歩踏み込んで財務分析を行うので有益な情報を皆様にお届けできればと思います。今回は三菱UFJです!理由としてはNTT等と同様に人気銘柄であり、三井住友、みずほと分かりやすい競合他社がおり、比較しやすいと考えたからです。この企業の分析をしてほしいとリクエストがありましたらコメント等に残してくれると嬉しいです!
企業概要
三菱UFJ銀行は合併を繰り返しているのでどこまで遡るのか、どこをメイン所として遡るのかが非常に難しいです。有価証券報告書にも2000年に東京三菱銀行、三菱信託銀行、日本信託銀行が統合した所からしか記載がありません。2001年には東京、大阪、ニューヨーク、ロンドンの証券所に上場していますが、2006年にロンドンでの上場は廃止していますね。
事業内容
三菱UFJの事業は下記の8つの事業に分けられています。
デジタルサービス部門
法人・リテール部門
コーポレートバンキング部門
グローバルコマーシャルバンキング部門
受託財産部門
グローバルCIB部門
市場部門
その他部門
かなり事業が多く分かれていますね。
デジタルサービス部門:非対面取引中心の個人、法人に対する金融サービスの提供、全社的なデジタルトランスフォーメーションの推進を行っているようです。非対面というのがポイントになっているようですね。
法人・リテール部門:国内の個人や法人に対しての金融、不動産、及び証券代行に関するサービスの提供。
コーポレートバンキング部門:国内外の大企業に対しての金融、不動産、及び証券代行に関するサービスの提供。
グローバルコマーシャルバンキング部門:海外の出資先商業銀行等における個人、中堅・中小企業に対する金融サービスの提供
受託財産事業部門:国内外の投資家、運用会社等に対する資産運用・資産管理サービスの提供
グローバルCIB部門:非日系大企業に対する金融サービスの提供
市場部門:顧客に対する為替・資金・証券サービスの提供、市場取引及び流動性・資金繰り管理業務
その他部門:上記部門に属さない管理業務等
三菱UFJでは報告セグメントとしてどのような金融サービスを提供しているのかではなく、誰に対してサービスを行っているか?に重きを置いている印象がありますね。
人員について
三菱UFJの従業員数内訳は下記の通りです。
従業員数は約12万人の大企業であり今まで分析してきた通信会社とはまた更に桁が違いますね。。。一番従業員が多いのはグローバルコマーシャルバンキング部門であり、その次が法人・リテール部門になります。国内外の個人・中堅企業、中小企業に対しての金融サービスに多くの人的リソースを割いていることが分かります。
その次にデジタルサービス部門の従業員数が多いのでデジタルにも力を入れてているのが分かります。
働きやすさについて
現在注目されている働きやすさですが、三菱UFJは子会社もかなり多いので今回は主な3社のデータのみ持ってきました。3社合計で女性の管理職は19.6%と日本企業としてはかなり高いですね。特に三菱UFJ銀行では4人に1人は女性ですね。男性の育休取得率も総合職で3社全てで90%、三菱UFJ信託銀行では何と100%です。女性の管理職が多いから男性も育休を取りやすい環境が整っていることが数字から分析できますね。
三菱UFJの売上構成
三菱UFJは経常収益約9.2兆円の大企業です。近年は6~7兆円の収益でしたが2022年度は9.2兆円と一気に増えました。その原因は主に2つです。
貸出金利息の増加
有価証券の利息配当金の増加
この2つで収益は2兆円以上増えています。貸出金利息はお金を企業や個人に貸すことで得られる利息ですね。これが一気に増加したということは2つのパターンが考えられます。
貸出先が2022年度に急激に増加した。
既存顧客から得られる利息収益がたまたま多かった。
資産の現金預け金は大きく増えていないので2つ目のパターンに該当すると考えられますね。ですが、どちらのパターンだったかは2023年度の有価証券報告書を分析すれば分かりますので今から楽しみですね。
有価証券の利息配当金の増加は株式市場が好調だったことも原因として大きいでしょう。ですので有価証券の利息配当金が今後も増え続けるかは株式市場次第というところでしょうか。
経常利益・当期純利益
収益が増えているのはとても良いことですが、それ以上に費用が増えている点については気になりますね。結局経常利益は2021年度と比べると下がっています。こちらの費用で多いのも利息ですね。預金の利息を始めとする様々な利息費用が大幅に上がっています。こちらは恐らく外国のインフレ対策による大幅な利上げによる影響が大きいと思われます。
当期純利益も2021年度と比較しても微減という形になっていますね。経常収益が下がっているのに当期純利益が微減しているということは特別利益が2021年度と比較して多かったということです。その原因はMUFG Union Bankの売却によるものでした。アメリカのカルフォルニアの銀行です。しかし、これは2022年度限定の利益ですので、今後も当期純利益どのように変動していくか注視する必要がありますね。
1株あたりの配当金も年々増加しています。これで1株あたりの当期純利益が増えていなければ苦しかったですが、三菱UFJは1株あたりの当期純利益も着実に増加しています。配当性向も約30%で今後は40%にしていく方針ですので今後の配当金の増加も期待できそうですね。
三菱UFJの資産
三菱UFJの資産は約386兆円になります。桁が違いすぎて混乱しそうですね。その中でも現金預け金は約113兆円となっています。預け金は私達の預金ではありません。私達の預金はいつか三菱UFJは私達に返さなかればいけないので三菱UFJの貸借対照表(BS)には負債の部に乗っかってきます。では現金預け金は何か。それは企業や個人に貸しているお金のことですね。銀行は企業や個人にお金を貸してその利息で収益を得ています。
貸借対照表を見ると現金預け金は約110兆円から113兆円に増加しています。ということは今後利息収入の増加が見込まれますね。
また有価証券も約7兆円2021年度と比較して増加しています。やはり2022年度の株式が絶好調だったこともあって、有価証券の評価額も上がっていることが推測できますね。
三菱UFJの負債
三菱UFJの負債は約368兆円になります。自己資本比率が極端に低いので不安になるかもしれませんが、これは銀行というビジネスの特性上仕方が無いですね。銀行は信用で成り立っているという言葉があります。銀行は信用によってお金を私達に安全に預けてもらい、そのお金を貸すことで利息収益を得ます。つまり銀行の資本はあまり入っていないんです。だからこそこのような歪な自己資本比率になってしまうのですね。
三菱UFJの負債ですが、そのうち約213兆円は私達や企業が預けている預金です。銀行が近年金余り、貸す先が見つからないと嘆いている実態が数字から分かりますね。三菱UFJの場合約213兆円を預かっていますが、貸出はその半分の109兆円しか貸出できていません。私達が預けている預金を効率的に働かせることができていない状態です。
積極的な自社株買いは嬉しいが・・・
三菱UFJは積極的な自社株買いを行っています。自社株買いを企業が行う理由としては、世間に出ている株数を減らすことで株価を上げて投資家達に還元することが挙げられます。例えば時価総額が約16兆円で株数が30億であれば1株あたり約5000円になります。ですが株数を15億まで自社株買いで減らすと時価総額は変わらないので1株あたり10,000円になり投資家が儲かるわけです。株主は1株あたり5,000円儲かるので嬉しいですよね。
ですが、自社株買いにも落とし穴はあります。それはお金が余っているから自社株買いをしているのでは?という懸念です。自社株買いを行うということはそれだけ会社の現金が出てしまっています。
それだけの現金を使うのなら設備等に投資をしてさらに利益を増やして配当金や株価の向上に繋げてほしいという投資家の意見もあります。
つまり自社株買いを積極的に行うのは短期的には投資家からは喜ばれますが、目先のことしか考えていない、それだけ投資して利益を増やす手段がないとも取れます。
まとめ
収益増加の要因は貸出金の利息増加と有価証券の利息配当金の増加
2022年度の収益を継続できるかは不透明
利息費用が貸出金の利息増加以上に増えているのはマイナス
経常収益は大幅な減少だが、グループ銀行の売却により当期純利益は微減に抑える
配当のバランスは良い。自社株買いも積極的に行っている。
貸出金を今後どの程度増やせるかがカギ
ここまで読んでいただきありがとうございます。コメントにどの企業の分析をやって欲しい等書いていただければ分析します!