「このままだと大変なことになる」過去の自分が犯した3つの懺悔
「あのぉ、家族がこのままだと大変なことになると言うもので」
唇から見え隠れする、長い前歯で申し訳なさそうに、先程帰って行った患者さんが来てそう言いました。
とうとう、やってしまっている。
何度も調整したが、仮歯が長くなってしまって、院長に報告して患者さんをそのまま帰してしまった。
上の前歯を削って型を取って、前歯の被せ物ができてくるまでの間、仮の歯を作って入れておくのです。
その仮歯を最初の段階でしくじってしまい、何度も調整しましたが、限界となり少しだけの間、何とか使ってもらおう。
優しそうな患者さんに甘えて、プロとして失格の仕事をしてしまいました。
特に女性でしたので、申し訳ないなと反省しましたが、ご家族のおっしゃるとおり「このままだと大変なことになる」ただごとではないほどの顔貌の変化に、唇からはみ出ている前歯が怒っているようにも見えた。
穴があったら入りたい。
そんな気持ちで、最初から完璧につくり直しました。
ドクターのアシストについても、時々やらかしてしまうことがありました。
患者さんの義歯を調整しているドクターが作業しやすいように、風をかける時があります。
いつも通りに、院長の作業中風をかけていた時、何か違和感を感じ、「このままだと大変なことになる」状態を作り出していました。
院長の頭に風をかけていたのです。
その院長は人格者で優しい人でした。
「飛ばされるかと思ったよ」
と、患者さんの前で怒ることもなく、少ししかない飛び散らかった髪の毛で笑顔の院長。
穴に入りたい。
また、そんな気持ちになりました。
また、二日酔いの時にはどうにもならない時がありました。
それは、気難しい完璧主義な院長の時でした。
その日は院長と二人だけで診療をする日でした。
院長のアシスト中、私は前日の酒で二日酔いで耐えられずにスタッフルームで横になって休憩していました。
何度も「◯◯君!◯◯君はどこにいるのかな?」
院長に大きな声で呼ばれました。
院長は自分でバキューム片手に診療をしていました。
その患者さんの診療のアシストと、歯石を取る時、何度も吐きそうになって「このままでは大変なことになる」と患者さんと院長を置いて、スタッフルームで嘔吐の危機を逃れるのでした。
まだ、私が20歳そこそこで、お姉さんと呼ばれていた頃の話しです。
最近、どうにも過去の回想シーンばかり浮かんできます。
なにごとも経験とはいえ、あの時犯した失敗は許されるものではなく、恥ずかしいものでした。
あの時の患者さん、院長本当にごめんなさい。
形は違うけれど、生涯かけて地域に貢献していきます。
どうぞ、お許しください。
そして、この記事を書いて寝た日の夢は、あらいぐまラスカルに似ている過去1番優しかった院長のいる歯科医院をクビになるというものでした。
冷や汗をかいて目が覚めました。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
私が目指しているのは孤立のない共生社会の実現です。