【番外】たびの終わりに
「人生」と書いて「たび」と読むのはみんな1度は目にしたことがあるだろう
今回はそんな人生の終わりのお話を描いた好きな映画について
自分が1番好きなアニメ映画といえば「パプリカ」であった、今敏作品は全て見ていたけど微妙なのがあった
「千年女優」である。
そんな今作のリバイバル上映が今年あった、見に行くしかないと見に行った。
前はサブスクにもなくてレンタルビデオショップで探し出して見た、そして思ってたのと違うとショックを受けた。
それから数年様々な事を経験した
色々なものを捨ててきた、色々な人と別れてきた
心から寂しいと思えるほど大切な人に出会えて別れた
そんな気持ちで見た「千年女優」はぼくが初めて観た時の感想を180°変えてきた
この映画は引退をしてから姿をずっと隠してきた大女優・千代子が主役であり千代子と訪れたインタビュアーとの回想、いわばその女優の人生の振り返りである。
物語は「鍵」を渡され、忘れていた記憶の扉を開けるように始まる
主人公千代子はずっと「鍵の君」と呼ばれる人を追っており、かつて映像制作会社にいたインタビュアー立花は主人公の熱烈なファンであり同じ時間を遡って幻想が混じった回想をしていく……
というところだろうか
ここで予告を見てほしい、壮大にみえる映像とはちがいドキュメンタリー映画に近いのである
感想にもどろう
上記の通り昔のわたしは予告との差とイマイチ伝わらなかったメッセージに響く部分は少なかった(もちろん映像美は素晴らしいと感じていた)
が、この先何度あるか分からないリバイバル上映は見ておく価値があると思って見に行った
「ショックは受けきった、あとはストーリーよく覚えてないからいいキッカケ」くらいも思ってた気がする
それが間違いだった
彼女はひとりを追いかけて、ひとりを想い続けて
昔は響くようで響かなかったこの作品を見返すまでに自分も「愛していた人との別れ」をいくつか経験した、その経験が主人公や立花の感情移入にとても作用してくれた
もちろん物語は最後を迎える
この映画が終わるということはその人の人生も終わるということだ
多くは語らないが彼女の人生の終わりをかつて演じたロケットで宇宙へ離れていく場面と重ねる
そしてとあるセリフで締める
「だってあたし、あの人を追いかけているあたしが好きなんだもの」
自分が好きになれなかったのはここもあるのかもしれない、実際このセリフは蛇足だなんて意見もある、そりゃあそうだこの映画で追いかけてた鍵の君の存在はなんだったんだ。
それが今の自分はそんなことは一切思えなかった
今ならわかる、自分もいろんな人を追いかけて、別れて、そうやってぼくという人間が作られてきたから、千代子の人生の幕を閉じた時に感動を覚えたのは"自分"を投影させたんだから。
エンドロールで流れる主題歌と共に彼女の人生を振り返った時とても泣きそうになった。
大好きだった「パプリカ」をも超えた素敵な作品に出会えた、いや再会出来たのかもしれない。
この映画のキャッチコピーは「その愛は狂気にも似ている」
ほんとに狂気だっただろうか、ひとりを思って何十年も隠居生活するのは狂気かもしれない
でもこの映画が改めて僕に教えてくれた
心から寂しいと思えるほど大切な人に出会えた
狂気にも似てるほど愛してたと思う
もう共に笑うことはかなわないと思う
ずっと嫌われたままでもいいと思う
それでも願いたい
ぼくのことはこれからも覚えていてほしい、いつかすれ違うだけでいいから会えたらいい
いろんな経験をして、この映画を見て、改めて感じた
自分がこの世を去る時
「精一杯生きた、自分は幸福だった」
そう思いたい。