技術士・ちょっと残念な資格
はじめに
技術士とは、「科学技術の応用面に携わる技術者にとって最も権威のある最高位の国家資格」です。
この資格を取得した人は、科学技術に関する高度な知識、応用能力および高い技術者倫理を備えていることを国家によって認定されたことになります。
技術士の有資格者は、技術士の称号を使用し登録した技術部門の技術業務を行うことができるようになります。
技術士試験の合格率は全体では10%前後から20%、私が受験した技術士・建設部門の合格率は、ここ最近の5年は9%から12%程度となっています。
受かりたいと思って頑張ってきた猛者たちが10人受けても1人しか合格できない狭き門です。
さらに、技術士試験の受験資格を得るためには、実務経験が10年近く必要となります。
このように技術士資格は、国家資格の中でも難関の部類に入る資格と言えます。
残念な側面
難関資格の技術士ですが、残念な側面を持っています。
それは、知名度・存在感の低さです。
医師や弁護士、税理士、公認会計士と言えば、多くの人がご存知でしょう。
これは、その資格の名前を使用して、開業されている人も多く、資格名が人目につきやすいこともあるでしょうし、皆さんの生活に近い、ということもあります。
しかし、技術士は、日本の世間一般では、今のところ、ほとんど知名度や存在感がない資格です。
知名度や存在感が低い最も大きな理由は、技術士は、医師や弁護士、税理士のように、「資格を持っていなければ仕事ができない」といった縛りがなく、スキルさえあれば、技術士の資格がなくても仕事ができてしまうことにあります。
「資格を持っていなければ仕事ができない」ことを「業務独占資格」といい、医師や弁護士、税理士がそれにあたります。
一方、技術士は「名称独占資格」であり、仕事をする上で「技術士を名乗る」ことができるだけです。
要は、仕事をしていく上で、技術士として名乗ることは許すけど、その資格を持っていても、いなくても、仕事をする上ではどちらでもいいですよ、っていう資格なんですね。
技術士は、恐らく、資格が作られた当初は、日本の将来のために「科学技術の応用面に携わる技術者にとって最も権威のある最高位の国家資格」が本当に必要だと考えて作られたのでしょう。
しかし、現状、はたしてそのような資格と認識されているのでしょうか。
残念な資格になってしまった理由
国はなぜこのような、環境コンサルタントや建設コンサルタントの企業や社員以外はあまり有利にならないような資格を作ったのしょう?
もし、国が本気で技術士を、「科学技術の応用面に携わる技術者にとって最も権威のある最高位の国家資格」にしたいのであれば、一部の分野だけでも「業務独占資格」とすれば、国民にとってもっと身近な資格となり、必然的にその魅力や重要性は増したはずです。
しかし、技術士資格を業務独占資格とするには、多くの利権が絡んでいますので、そう簡単に変わることはありません。
具体的には、技術士資格を業務独占資格にしてしまうと、民間のコンサルタント会社が困ることになります。
技術士を持っている優秀な社員がみんな独立してしまいますからね。
また、現在の技術士受験資格として、技術士補をとったうえで、さらに以下の要件を課しており、会社員など何らかの組織に属する人を想定した資格であることがわかります。
1〕 技術士補として、技術士の指導の下で、4年(総合技術監理部門は7年)を超える実務経験。
※ 技術士補登録後の期間に限る。
2〕 職務上の監督者の指導の下で、4年(総合技術監理部門は7年)を超える実務経験。
※ 技術士第一次試験合格後の期間、指定された教育課程修了後の期間に限る。
3〕 指導者や監督者の有無・要件を問わず、7年(総合技術監理部門は10年)を超える期間の実務経験。
※ 技術士第一次試験合格以前の実務経験、指定された教育課程修了以前の実務経験も含む。
個人でいくら頑張って技術士を取得したいと思っても、身近に技術士や監督者がいない場合、技術士にはなれないということです。
まあ、この要件については、個人の技術士事務所が増えれば、そこに入ったり指導を依頼することは可能かもしれません。
終わりに
いずれにしろ個人的には、技術士が「業務独占資格」になると独立開業がしやすくなっていいな、とは思います。
が、そんなことは起こりえないことはわかっています。
会社に属さず生きていく際に、技術士という資格に頼ることは難しいように思ってしまうのは私だけかな?
結構勉強してやっと得た資格なのになぁ・・・、残念。
さて、嘆いても仕方ないので、他の勉強をして会社に属さずに生きていく術をさがそうっと。
ではまた。