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25.02.11.♡ 神様と聖書と制服とらヴそんぐ (創作文9)
act.9…… 愛した空 と らヴそんぐ
『 ……、はぁ……。 』
屋上で、 頭のおかしいアイツ を思い浮かべて、
どうしたものかと息を吐いた。
煙草もケースにあと2本。
そして、先程の後悔を思い出して、曇り空に
懺悔する。
どうしてだろうか。俺がこのベンチに座る時は
大概が曇り空で、そして、……雨は降らない。
『 雨男?……ちげーよなぁ。 』
煙草の煙を観ていると、まるで 天使の羽 みた
いで。
同時にその 位置 から見えてしまう、学校から遠
く映る火葬場にも目が行く。廃校、廃墟。
霊園。どっからか、煙突の煙が出ていて、寂し
げで、悲しげで。
何かの魂が、泣いているような、そんな、切な
い、だだっ広い、何にも高い建物なんかない、
淋しい場所。
……だけれど、この感覚は、嫌いにはなれない。
病的にも陥りそうな、際どい感覚、感じ入るも、
その1歩手前で留まって、" ちゃんと生きる感じ "
が、とても好きだったから。
『 そーだよな、……それが 俺 だよな……! 』
弱音を吐きたくなってしまった、アイツ と
喋ると、……おかしくなりそうになる。
気が、" 狂い " そうに。
だけれど。
『 逃げ……たく、ない……。 』
真っ白な空。
降りそうで降らない空を、
ベンチに寝転びながら見つめる。
瞬きすると、 ガッコン、と言う大きい音が、
耳に突き刺さる。
『 ー、や、やっべ……!? 』
俺はそんな不意打ちに煙草を地面(?)に落とし
て一目散に足で擦り付ける。
立ち上がって後ろを向くと。
『 ……あ、あれ……さ、サツキ……! 』
『 、……何してんだよ、こんな所で。 』
『 …………、……サツ、キ……………。 』
優しくて。 仕方ないな、……みたいな、笑顔。
どうしたって、何時も、何時も。
『 ……眺めいいんだか、良くないんだか。
そんな場所だな。 』
『……。』
そう言い放つも、俺の隣のベンチにやってきて、
座る。
不覚にも、 潤んで見えやすくなった視界 に、
幼なじみの いつもの調子 が、優しく滲んでいく。
『……サツキ……。』
『……ん?……。』
『……っ。』
気が付くと、俺の身体は勝手に動き、
サツキに背をピッタリと付けて、寄りかかった。
『……なんだよ。』
『…………甘え、………てんの。』
『……素直じゃないやつ。……はぁ、……いつも
こんな所でボーッとしてんのかよ。』
『 う、うるせーなーもー…… 』
存在してるだけで、隣に居るだけで、なんで、
なんてこんな。
暖かいんだ、ろう。
『 ……さっきさ…………ごめん、ありがと。 』
『 ……いーよ、なんか疲れすぎてると、お前
何時も、奇行に走ってる気ィするから。 』
『 …………。………………そうかも……。 』
サツキが言った事は、紛うことなき事実だ。
人間、行き場がなくなると、何をやらかすか
解らない。
昔から、いつもよく、注意されていた気もする。
それでもサツキは、朗らかに 笑って許して
くれるのだった。
サツキが居なかったら、俺は……きっと唯の
異端者だっただろう。
そう思うと、悲しい事だ。
辛過ぎて、行き場がなく、理解者がなく、
どうにかなってしまう
そういった人が、きっとこの世の中には、沢山
いるのだろう。
真っ白な空を見て、サツキと神に、心から
、感謝し、久々に、安寧を覚える。
『 ……そーいやさ、サツキって、今誰と付き合っ
てんの? 』
『 ……え、……なんで。 』
『 ……だって、女子の誰とも歩いてるの、
見ねーから。……俺にも言わないしさ。 』
『 ……誰とも。付き合ってなんか、ない。 』
『 ……えっ……嘘だろ……!?あの変態的にモテ
る紳士で神父なインテリイケメンなサツキさま
がっ……!?? 』
俺は思わず向き直る。
『 ……はぁ、その言い方やめろ……、別に、
全員よく知らない。……それに、好きな人とか
じゃ、ないから。 』
『 え、じゃー、……誰が好きなんだ? 』
『 ………… 知りたい ? 』
『 知りたいッ! 』
俺は前のめりになり顔を近づける。
『 ー、……ホントに? 』
そっと。
手が頬と唇に触れる。
近づけた顔と目が合うも、眉目秀麗な目元で、
再度見つめられた。
目が、離せない。
傾けたまっ白い項が見えて、口元が静かに
揺すられる。
『……え、あ、』
『 ……な、…… 知りたい …? 』
言えよ。
『 ……え、う、ぇ、……あ、…… 』
命令されるように冷えた、射抜くような溶ける
ような、綺麗な眼差しで見下ろされて、俺は訳
が分からないまま、身動き出来ない位に硬直し、
たじろぐ。
こんなサツキ、ー、知ら、な、
『 ……ん、やだ、…ふぇっ 』
ー 先輩……!!!!
『 ーッ あははっ……!!!…冗談だよ、バーカ
っ! 』
『 ……っ、あ、え、……あ……。 』
か、からかわれた……。
こ、このやろー。
『……な、泣いてんの……あは、あははっ……!』
『 ーあっ!ば、ばかにしたなー!?お、俺だ
からいいかもしれないけど、せ、繊細さんは
傷つくんだぞ……っ !!! 』
は、と先程の 晶 を思い出す。
『 ……解った???……あーいうことは、
二度と、するなよな。……ふふっ。 』
『 ……あいつ、許してくれるかな……。 』
『 許すも何も、あいつ、最初からお前の事、
憧れてるみたい、だったけど。… さあ、
どんな罰が待ち受けているかなー??? 』
『……あ、そんな気は…………、してた…。』
なんとうなく。
聖と違って、甘える時の仕草や、こちらを
見つめる時の視線が、まるで違う。
尊い者 を、見てる様な。
あんなように、俺も、尊敬する眼差しで、先輩
を見つめているのだろうか。
先輩は、俺を、どう、思ってくれているのだろ
うか。
『………。』
『……は、悪い、つい、自分の世界に…!??』
『……いつもの事じゃん。あははっ!』
『 わ、笑いすぎだろーっ!!! 』
ひとしきり笑い合うと、まだ笑いたい気持ち
を抑え?ながら、……サツキが理性的に切り出
した。
『 …お前、…白姫優子に会ったんだって? 』
『 …!……、……誰から。 』
『 …神楽坂兄弟。お前が暗い顔してるって、
心配してたぜ。 』
それで、追いかけて来てくれたのか。
『 ああ。………今朝、な。 』
『 さぁて、…どうしようか。 』
『 あ、なぁ、… 委員長……城ヶ崎さん、
…来てる?』
『 ………、、、体操でも、するか。 』
『 ー!!! 』
サツキは眼鏡を胸ポケットから取り出し、
かけると、珍しく羽織っている黒のブレザ
ーを靡かせて、手を腰に当てながら曇り空の
向こうに在る、陽の光を見据えた。
『 ……城ヶ崎美園は、来ていない。今朝、俺は
朝練しているのを見かけたのにな。先生からの
お知らせだと、城ヶ崎さんは、暫く体調不良の
お休みです、だと。……因みに、兄の城ヶ崎亮
先輩も、… 何故か 欠席扱い になっている。 』
『………っ………。』
『 ……裏にあった使われてない体育倉庫は、
いきなりの撤去作業が行われている。 』
『 ……な、んで……そんな、と、ころ……。 』
知っている。解っている。ー アイツ だ。
胸の動機が治まらない。
もう、嫌だー。
『 ……逃げるのか。 』
『 ……!!! 』
『 もう気づいてんだろう。お前の1番の弱点は、
…… アイツ だ。 』
『 ……ッ……。 』
ーしんでやる。
……とびおりて、 恨んで やるー。
病院着をはためかせて、光っている、
真っ白い世界、 曇り空 に ひた笑う逆光ー。
もう、やめてくれー。
お願いだからー。
ー優子。
『 ……かよ。 』
『………!…。』
『 このイツキさまが、あーんな端女☆あばずれ
女から、逃げる訳、ねーだろ。 』
俺はふざけたように、 本気のウインク をした。
『……遅せぇよ。』
『…………待たせて、…ごめん。』
今度こそ、
サツキが 本当 に 笑ってくれた 気がした。
⋆***