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#建築士。資格が私にもたらしたモノーVol.3 〜彩音
こんにちわ。建築士×〇〇 arisa です。
間が空いてしまいました…前回記事
vol.2〜出逢い からの続きです。
何事も「覚悟」って結果に大きく響くとわかっていても。自分がどれだけ覚悟を決めていると思っても、ちゃんと動けているかって、意外と分かりづらいと思いませんか。
わたしはすぐ自分にフォーカスし過ぎてしまうクセが未だに取ず…自己満で終わって、結果が出ないことが多すぎるので。
周りに良いお手本となる人や、教えてくれる人が必須少数アイテムとなっています(๑˃̵ᴗ˂̵)
一級建築士受験ー
わたし的には、ずっと【真剣】にやってる"つもり"でした。まとまった時間は取り辛かったとはいえ勉強量も宿題も、受かった人たちと大差ないぐらいやっていた、と今でも思っています。
それでも。いつまでもいつまでも結果が出なかった。
だったらそれは"やり方が間違っている"としか、思わずにはいられない。
あの時、彼女の『覚悟』と『本気』に触れなかったら。私は今でも迷路を彷徨い続けていたかもしれない。
今思えば日々の小さな小さな、見過ごしてしまいそうな違い。
それが日々ー
積み重なって、とんでもなく大きな差に広がっていく実感。
彼女のムダのない勉強スタイルを、間近で見る事が出来たからこその気付きー今でも時々、怖くなる。
結果を出し続ける人との根本的な行動の違いに。
▼勉強量よりも、やり方とタイミング。
彼女の本気とわたしの違い
当時わたしが受講していた教室には、常に30名近い受講生がいて。年齢は20代〜60代ぐらいまで。
座る席はだいたい、いつも決まっていて。
わたしの定番の席は、黒板を前にして右から2列目の前から2番目でした。
いつも隣には40代の現場監督の女性・かなこさんと。前には設計事務所に勤める30代の男性・伊藤さんと斎藤さんが座ってて。
基本的に授業はビデオ受講だから。
時間ぴったりに始まって、ぴったりに終わる。
一講義終わると、先生がわからないところのフォローに入ってくれたり、前後の席でチーム組んで教えっこし合う形。
きっと今でもそのやり方に大差はない、のかな??
衝撃が走った、年明けの最初の授業は今でも忘れられない。
まだ温まらない、人気のない教室。
当然いつもの3人はまだ誰も来ていなくて。
ふと、右の視界に入ったのは、彼女の後ろ姿。
1列目の前から2番目に座る 【彩音】
やっぱり目立つ、綺麗な黒髪とその姿勢の良さ。
ナンカ、上手く言えないけど…纏っているオーラが違うの。
後ろから近付くと、なにやら教科書を広げてノートに写しているようで。
わたしは通路を挟んで隣の席にバックを置いて(ようするにいつもの席ですww)一呼吸。
「おっはよう、彩音。早いね」
声を掛けると、彩音はパッと顔を上げ、「そっちこそ」と、笑ってくれた。
「何書いてるの〜?」
「ん〜?これ?今日の予習、かな」
特に宿題すら出ていないのに?一体何をどうやって書いてるのだろう?と思って覗き込むと。
開かれた教科書はすでにキレイに2色に色分けされていて。
ノートは縦線で3つに区切られ、左には語句が並べられ真ん中と右は空欄のままだった。(カーネル式っぽい感じのノートの取り方ですね♡)
「一通り、授業内容はウェブで先に見れたしね。
法令集も線引いたけど、やっぱりわからないこと多いから。今日の授業の範囲で、調べたいところを書き出してたの」
マジですか…
とは言え、机の上に出ていた教科書は5冊。
5冊とも全て最後まで目を通しているのは付箋の数から明らかで。規則正しく貼られた3色の付箋、各教科書のスキマから垣間見えるピンクや黄色の蛍光ライン…
"あり得ない"
衝撃的な寒気に似た痛みが背筋を走ったー
初めてあった日から、今日までの同じ時間を経て。
わたしは一体何をやってたのかー
1度、学科を通ったからと言って。
また受かる保証なんてどこにもないのに。
『一体、わたしは何をどう勘違いしてた?』
今日までロクに教科書すら開かなかった自分を恥じ。
同時に悔しさから、怒りにも似た想いが込み上げてきた。
法令集は黙々と線引きはした…でも、そんなの当たり前のことだし宿題になってること。ウェブ授業なんて最初の2コマしか見ていない。
やっていなくて『当たり前』だと思っていた甘えた自分がそこにいたってこと。
「そっか、凄いね!」
バックを開いて、教科書を出しながらそれ以上、彩音に声を掛けることは出来なかった。
だって、話し終わった彼女の目線はすでにノートで。字を書くその手が止まることはもうなかったから。
その真剣な眼差しと、集中力の。邪魔をしちゃいけないって、思った。
「授業の前から、受かる人はだいたい決まってる」
この時、施工の先生が良く言ってた言葉の意味が、分かった気がした。
今までこういう人、当然この同じ空間にいたのかもしれない。
わたしが気付かなかっただけで、見て見ぬ振りをし続けていただけなのかもしれない。
"わたしは仕事が忙しいんだ"って
"誰よりも時間がないんだ"って
見えない言い訳を守る為にー
出来損ないの自分を守るためにー
そして。彼女のこの行動は、試験日直前まで一切変わることはなかったの。それどころか増えていったと思う。日に日に増えていくノートや付箋の数。
授業終わりにも、さっさと帰っていく人たちがいる中で。彼女は最後まで居残り、テストで間違えたところに注訳をいれ、ノートには必ずメモを残していた。
授業途中のお昼休みだって、外には食べに行かず。
誰とも話さず、室内で持参したおにぎりを食べていたし。
当然、授業中の居眠りなんて見たことない。
休み時間には、周囲に座った人と笑顔で話してたりしてたけど。常に教科書は開かれたままだった。
勉強するなら必ずといって良いほど聞く、忘却曲線の話。効率よく暗記し、アウトプットするのに最適と言われているエビングハウス忘却曲線の時間に沿って。彩音は真面目に素で行ってたと思う。
2級建築士の時とは比べ物にならない知識量に対して。彼女の勉強法には側から見ていてもムダがなく、自分のことをよく分かっているようにも見えた。
彩音は前年の夏に。
店舗設計を中心とする企業に転職したばかり。海外にも進出していて、出張も多いらしい。毎日忙しいことは容易に想像できたし、彼女の仕事ぶりはきっと他の社員の助けになっていたと思う。
夜中までかかった、力作の資料作成の数々。
チームで何度もプレゼンを出しては、違う会社に持っていかれて。悔しい思いをしてるって言ってた。
並行する仕事が多くて、新しいプレゼンに取り掛かりながら、他の工事の設計確認も入ってるって言ってた。
しかも、12月に結婚したばかりの新婚さんで。
お家では当然、パートナーが待っている。
何故、今
"一級建築士"なのか。
なぜこの資格にこだわるのかー
わたしは心に引っかかっていたこの疑問を、5月の連休明けに聞いた事がある。
「今、最短で取ることに意味があるの。
何年もかかるなんてイヤ。中途の私には早く実力を証明してくれるものが必要なの。次のステップに行く為にも。アリサは違うの?」
別に責め立てられた訳じゃない。ゆったりと、ハッキリと口にされた彩音の素直な想い。それでもわたしは真っ直ぐな彩音の言葉に対して、返す言葉に詰まってた。
「…いや、同じ!がんばろ」
「うん。あと少しだし。一緒に合格祝いしようね♫」
さらっと笑顔で答えた彩音の心は、微塵の乱れも感じられなかった。
誰でも試験を受ける人なら口にする言葉だよ。
「合格祝いしよう」って、「頑張ろう」なんて。
それなのに、聞きなれた言葉も
彼女の口から出ることで、こんなにも…
ハッとさせられる。
余計に自分の行動が、どれもこれも恥ずかしくなる。
一体何を根拠に『このぐらいやればまた受かるだろう』なんて、簡単に考え始める愚かなわたし。
合格点をクリアすれば良いだけじゃない。
上位数十%しか採らない試験だってわかっているはず。
続ける仕組みが、私に合う方法がわからない、なんて。眠くて宿題出来ませんでした、なんて。
全てが、どうでも良いくだらない言い訳にしか過ぎないー
解いて分からなければ、聞けば良い。
わかるまで、やれば良いだけなの。
本番で解ければ
良いだけなのだからー
やり方とか、暗記ノートの作り方なんかに拘ってる場合じゃない
いつまでもダラダラとスッキリしなかった感覚は、彩音と過ごすわずかな時間の積み重ねでドンドン研ぎ澄まされていった。
悩んでいたって、何も覚えられない。
手が覚えてくれるまで
繰り返すだけー
集中力が研ぎ澄まされていく、10ヶ月間だった。
体力的にはとっくに限界だったし。
いつでも眠くてしょうがなかった。
それでも、問題集は全て3回繰り返したし。
授業で分からなかったところは、『後で…』なんてことは絶対にしなかった。
顔や体は浮腫んでしょうがなかったな。
ダルすぎた。
ドンドン、ブサイクになっていったけどw
そんなこと、現場と家と学校の往復じゃあ、もうどうでも良かった。
やればやるほど、用語が身体に染み込んでいく感覚。図面に至っては、ただ機械のように黙々と作業とすることが出来た。
そこに余計な感情はいらなかったし、何も出て来なかったんだよね。
受かる前の3年間の自分と。
彩音と過ごした、たった10ヶ月の違いは。
一言で言えば"意識の差"だったんだと思う。
ただ、側に。
一緒にいただけで、意識することや行動が色々と変わっていったの。不安や焦りから、手が止まることがなくなったの。
少なくとも。環境も与えられている教材も、時間的余裕も。前のわたしとさほどの違いはなかったのだから。
たった1人と出逢えたことで。
ヘラヘラして。諦め掛けていた、わたしの結果が変わったの。
彼女の本気に触れたことが。
わたしの未来が変わった要因。
たった、それだけの話です。
あなたの隣には
どんな人が座っていますか??
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