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中小クリニックの院長先生へ 事務長を採用しませんか?

よく聞かれること「どうやって今のクリニックと出会ったのですか?」

現在、自営業を行いながらも、医療法人の事務長として活動しています。
セミナーや勉強会などに参加し他院の院長先生とお話する機会がありますが、かなり多くの他院の院長先生から
「どうやったらあつおさんみたいな事務長を採用できますか?」
と聞かれます。
ので、事務長の採用の仕方をまとめたいと思います。

事務長に求める仕事ってなんですか?

「どうやって採用したらいいか」と聞かれるので、「どんな仕事をやってほしいんですか?」と、失礼ながら質問に質問を重ねてお返ししますと、たいていの先生が「う~ん」と考え込んでしまいます。
中小のクリニックにおいての事務長の難しさは、「業務の幅がありすぎること」です。
大抵の院長先生は、一般企業での勤務経験もなければ、人材マネジメントの経験もありません。だから、医療を学んできて、開業し、突然経営者となります。クリニックのバックオフィスに少なくとも、以下の業務があるということは知っておきましょう。

総務・人事・労務・経理・法務・企画

本来は、それぞれに専門的な知識を持ち、管理運営を行わなければなりません。が、中小企業や中小のクリニックですと、全部・またはいくつかを兼務することが一般的です。
特に開業直後などですと、ほぼすべてを院長その家族が行っているのが現実だと思われます。
そのうち、どの業務が、院長先生の業務のボトルネックとなっているのかで、採用すべき人物像が異なります。
「事務長が欲しい!」と気付いた院長先生は、おそらく経営のわずらわしさを感じ、「全部やってほしいよ、俺は診察だけしていたいよ」とおっしゃるかと思いますが、全部を十分に業務として実行できる人材など空想上の人材であると知ってください。

正直申し上げますと、「あつおさん」はかなり特殊な経歴で、総務・人事・労務・経理・法務・企画事業を業務レベルで経験し、且つ社内の新規部署の立ち上げ、事業融資経験など、簿記資格を持ち、PL/BS読めますし、ほぼ全部ひとりで0→1をやってきたんですね。システム構築、DX化、勤怠システム入れ替えとかも自分でできてしまいます。なので、たぶん私と同じ経験の人はいないと思います。少なくとも見たことはありません(笑)
ただ、全部できる必要はなくて、1つか2つの実務経験があれば業務量としては十分にありますので、+アルファでできることを増やしていけばいいのかなと思います。

空想上の人物である理由

院長先生自身がご自身をどのように評価されているかわかりかねますが、少なくともいわゆる地域に一人か二人しかいない「神童」だったはずです。
小学校ではクラスでナンバーワン。医学部に入学し、長い期間の研修等、大変な苦労をクリアしてきたでしょう。能力的な理由で「できないこと」なんてなかったと思うんです。
その院長先生が「できない・やらない」と感じた業務って、相当難易度が高いんだということをまず認識していただきたいです。
そして、総務・人事・労務・経理・法務・企画という6分野において、1つや2つは業務経験があったにしろ、残りの4つは未経験なわけです。ですから、どう考えても院長先生よりもレベルが下がるんだということ。

事務長の人物像

それでも、「事務長採用」は、中小のクリニックが安定して稼働するためには絶対に必要な存在です。その採用を行うとして、どんな人物が事務長として開花する可能性が高いのかを考察しますと、、、以下のように考えられます。

・スピード感がある
バックオフィス業務には膨大な量の雑務が発生します。今までは、院長先生がなんとかその場でやってきたと思いますが「労働基準法内で実行するには」かなりの業務速度が必要です。
長期・中期・短期・即日みたいな業務が並列で押し寄せてきます。院長先生でしたら、即断即決できますが、事務長は院長の最終決定をもらわなければ前に進むことはできません。
優先順位も、ぱっと見優先かどうかなどわかりませんので、大きなことも、小さなことも、締め切り日を設定するくらいの、業務への速度感を持っていることが重要です。
「お願いしたのにやっていない」「やるといったのにまだやっていない」などは、業務が事務長のキャパを超えている可能性が高いです。
それでも、絶対に守らなければならない期日は絶対に守る必要があります。例えば、「税理士に月度報告のための資料を送る」だとか、締め切りはありません。でも、遅れれば税理士に迷惑がかかるし、最悪今月の収支がわからないまま次月の計画を立て始めなければならなくなってしまったりします。

・主体性があって実行力がある
主体性が必要なのは、事務長は経営者ではないからです。
つまり、この事業を「自分のこと」のように思い、育てる気持ちがなければ、甘えがでます。
「ちょっとくらいいいや」と一度転落をし始めた事務長は、急な坂を転がるように落下していきます。自らの意思で、自らの責任を認識し、自ら実行し、結果を出せる。そんな主体性が必要です。


・言語化が得意
事務長の業務は、半分以上が「院長の意思を理解し職員に伝えること」です。でも、事務長は院長の意思が100%わかることはないし、万が一わかったとしても、職員に伝わるわけではありません。
だからこそ、必ず、言語化して確認をする必要があります。
理由は、経営者は「抽象的な話をする」必要があります。そして事務長はそれを「具体的な例を用いて職員に概要を伝える」ことが必要で、現場スタッフが実行します。
例えば、
院長は「忙しい日と暇な日の差を埋めたい」という思いがあり
事務長は「予約システムを検討・導入・運用し診察を分散する」ことを取り入れ
現場スタッフは「適切な予約管理を行う」となる。
上の例で、院長がいちいち予約システムをA社B社C社の見積もりを取ってなんてやっていたら事務長の意味がありませんし、事務長が現場で予約管理などしていたら事業が鈍化します。
院長先生の抽象的な想いを、事務長が具体化し、現場スタッフに落とし込むというのが正しい流れです。
また、その際に発生する思い違い勘違いをなくすために、わずかにでもいだいた疑問に気付き、言語化してビジョンが共有できることが重要です。

・院長先生との適切な距離感
ある程度権限を与え、院長とビジョンが共有できると、「自分がすごい」と勘違いしてしまう事務長がいます。間違っても対等ではありません。あくまで、「院長の願い」を実現するのが事務長です。たとえ意見が対立することがあっても、Aと決定されたら、それはAを進めていくのです。決して他職員に「俺はBって言ったんだけどさ、、」とかいう人は事務長においてはいけません。
院長の前で「私はBだと思います」ということは大切です。YESマンではダメですので。でも、Aと決まったら、Aで推し進めてくれないのであれば、事務長としては適切ではありません。

・コスト感・相場観がある
経営には理念など大切なこともありますが、ぶっちゃけるとお金をかければ大抵なんでもできてしまいます。業者は魅力あるように営業を仕掛けてきます。が、そのコスト感と、生み出される収益などが読めなければなりません。
例えば、「この機械を導入すると、1回の施術で1万円の売上ですから、1か月に5回やれば元が取れます」などの営業トークに、いやいやそれ違くない?と即答できなければなりません。
「1回の施術で何分かかるの?ダウンタイムは?人件費は?ランニングコストは?保守料は?故障時の修理体制は?じゃぁ、5回じゃなくない?」と営業を一蹴する、「だまされない力」が必要があります。
昨年、新規事業を開始するためにFC事業展開を行う会社の同業他社3社お話したんですが、3社とも営業さんが言う収支と合わないんですよね。「これのコストが入っていませんね、近隣相場ではこれくらいです。モデルケースで赤字なんですが、どうやって運営されているんですか?」と質問したら、3社とも営業さんパタリと連絡がこなくなってしまいました。医療法人をだまして開業させるスキームとかあるんですかね。

・応援したくなるような人間力
スタートは別としても、最終的には事務長は診察の実務には就きません。その状況化で、職員に指示を出すことになります。となると、「事務長は実務についてないんだからわかってない」などと言われてしまいます。そうなんです。私たち事務長は実務は全然わかりません。ですから、他院で1日10回転していることでも、「10回やってください」といっても、「無理ですよ、事務長は実務をやらないからわからない」などと実行してもらえないことがあります。そんなとき必要なのは、「事実」や「正解」ではなく、「応援してもらるかどうか」にかかっています。
10回は無理だと思うけど、まぁ、事務長がいうならチャレンジしてみますよ」という答えが出してもらえるかどうかです。

応募・面接時に見えること

募集サイトは

まず、医療系の出身ではない方を採用するにあたっては、ごく普通の転職サイトで十分です。インディード・リクナビ・マイナビなど。
紹介業者がダメな理由は、事務長業務は未知との遭遇の連続です。自分で調べる、自分で確認する、そういったことが当たり前にできる人が採用したいのに、自分で調べない人を採用してもミスマッチの可能性が高いです。
また、転職サイトに登録するとしたら、大手二社は抑えると思いますので、リクナビマイナビ。検索エンジンに強いインディードあたりを抑えておけば十分です。

募集職種は

最初から「事務長」で採用するのはおすすめしません。
理想は、総務・人事・労務・経理の4部門の何かでの採用がよいです。で、その詳細な情報内に、キャリアプランとして幹部候補であることを示唆するような「経営企画」や「分院の管理」などを含めておけばいいと思います。

給与設定は

年俸制の管理監督者が理想です。
というのも、院長と行動を共にするとなると、日・祝・朝・夜関係なく仕事が入ってくるでしょう。労働基準法を守るのは非常に困難です。
しかも、実績がある人・確実にできる人がほぼいませんから、試用期間を設定することを忘れないようにしてください。
試用期間を「その期間で解雇できる」と誤認されている先生も多いので、運用を間違えないようにしてください。
※試用期間中に即時解雇できるのは雇用開始から14日以内だけで、15日目以降は2週間前の解雇予告が必要です。

応募があったら履歴書を確認

最初に、出身高校の偏差値を調べましょう。

院長先生(偏差値70↑)と、その他職員(偏差値60↓)の間に入ってもらわなければなりません。55以下だったら何も考えずにお祈りメールをしましょう。

次に空白期間を見ましょう
理由の説明できない空白期間、特に1年近いの空白期間が1度でもあったら何も考えずにお祈りメールをしましょう。
1年間の空白は、多くが「失業保険を満額もらう」ことにあります。「できる限り働きたくない」という意思の表れです。

転職回数

年齢にもよりますが、、、
3年以内の転職が3回、または1年以内の転職が2回あったら何も考えずにお祈りメールをしましょう。必ず3年以内に退職します。
はっきりいって事務長業は楽な仕事ではありません。自己研鑽に励み、高い非認知能力が求められ、院長のわがまま(?)を実現し、マルチタスクに業務を行い、達成感も少なく、それでも他の職員に「すごいね」って言われるくらいじゃないと役に立ちません。
そして医療従事者でもないのに医療の普及を願い、地域に貢献したい気持ちがなければなりません。
なんの仕事にせよ、異業種や異職種から転職する場合、半年は役に立たないでしょう。2年かかってなんとか業務を覚えて、それで3年以内に辞められたら本当にいた意味がないです。

職務経歴書から読み解く

適切な自己評価

自己評価を支えるのは、成功体験です。
職務経歴書は、はっきりいえば偽ることが可能です。例えば、前職の営業成績で全国一位だったとか。こんな業務を一人でやっていたとか。
「これは本当かな?」と思えるような過度な評価については、しっかり追及しましょう。追及すると嘘ならボロがでます。どうやって全国一位を達成しましたかを皮切りに、その時どんなことを意識したとか、スケジュールはどんな管理をしたとか、上司への報告は、部下の育成はとか、なんでもいいのですがその時のことを根掘り葉掘り聞くと、焦ってきて様子が変わったり、矛盾が生じたりします。
嘘が1つあると感じたら、他の経歴も間違いなく嘘だらけです。「嘘をつく」というダメな点がある上に、「これくらいばれないだろう」とバカにしているんです。
昔の人は言いました。嘘つきは泥棒の始まりです。もうお帰りいただきましょう。

経歴の妥当性

歩んできた職務歴に、その方の人生が表現されます。例えば、新卒時には営業職をやっていて、次にシステムエンジニアを経験し、障碍者入所施設の施設長をやって、今回の応募をされているとします。
それが、それぞれの退職理由と、次の仕事の内容の妥当性を判断基準に考えます。
例えば、営業職の退職理由と、SEでの業務内容につじつまが合うか。
SEの退職理由と、障碍者入所施設の業務内容につじつまが合うか。
障碍者入所施設の退職理由と、自院での仕事につじつまが合うか。
ここに「妥当性がある」と判断できれば、異業種だろうが異職種だろうが問題ありません。
つじつまが合わないということは、次の仕事を見つける前に辞めています。次を見つける前に辞めるということは「嫌だから」が原因です。
「嫌だから」が原因なのだとしたら、「どの辺が嫌だったのか」、「どうだったらよかったか」、「もう一度やり直せるならなにをしたいか」など追及しますと、会社とその人と、どちらに不備があったのかは明確にわかります。
また、あなたの法人を辞める時も、同じように退職していきます。それが容認できるかどうか見てください。
ちなみに私は、もちろん職員に退職しないでほしいです。でも、新卒以外はすべて退職経験があるわけで、いつかは辞めてしまうのは致しかたないと受け入れています。なので、退職理由が「応援できるもの」だったら受け入れようと思っています。
「営業でがんばっていて成績も残したが、エンジニアへのあこがれもあり自力でOracle認定Javaプログラマ試験に合格し転職した」とかならもう応援します。転職も致し方ないです。だから採用してもいいのかなと思います。

話し方・理解力・言語化能力

面接で話をしてみて、言葉のキャッチボールに違和感がないかを確認してください。YESorNOで答えられる質問や、少し長くなりそうな質問、補足を求めてみたり、今この場で考えなければならない質問、まったく仕事に関係のない話など。
職務経歴や、履歴書の内容確認や、気になった点の確認などで判別できます。面接での態度は、「お客様に対する態度」と思っていいです。
あとは、どれくらい準備をしてきたのか。「受かりたい」と思いがあったら、ある程度質問に対して準備したり、ウェブサイトを読み込みしたり、なんとか答えようとするものです。
この態度でお客様に対応しても許せるという態度かどうかを見てください。そして、質問を正しく理解し、言語化し、答え、心地よく会話が弾むかどうかをみてください。

一番いいと思うのは

普通に勤務している職員の中から、
・日曜や祝日にも働くことができる
・上司や部下に好かれている
の2点をもとに、内部昇格が一番いいと思っています。
看護師などの国家資格保持者を、無資格でもできる事務長にするのに違和感があるかと思います。が、人となりがわかっていて、且つ現場の業務もできて、職員からの信頼も厚いということであれば、最適なのかなと思っています。
ただ、どうしても他院見学をしたり、セミナーに参加したりがあるので、宿泊ありの出張や、日曜に仕事とかが、全然ストレスにならない人でないと、事実上無理なのかなという気もしています。

最後に

「どうやったらあつおさんみたいな事務長を採用できますか?」
という質問の答えにはなっていないのですが、私が思うモアベターな事務長採用に関して書かせていただきました。

私が提供しているサービスとしましては、
・現場見学+改善点の洗い出し
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