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働きやすい環境とは

実績なき者に「働きやすい環境」はあるのか

近年、「働きやすい環境を整備すること」が企業の責務のように語られることが多い。しかし、そもそも「働きやすい環境」とは何なのか、そして誰がそれを語る資格を持つのか。私は、これを「実績を出せるようになった者だけが語れること」だと考える。実績もないうちから「環境が悪い」「負担が大きい」などと口にするのは、本質を見誤っていると言える。まずは努力し、成果を出すことが先決である。

私はよく「1日に100枚の皿を洗うことを前提に給料を決めている」という例えを用いる。この比喩は、仕事に求められる基準があることを示している。もし60枚しか洗えないのなら、それを理由に「働きにくい」と言う筋合いはない。まずは100枚洗える努力をすべきであり、それができるようになってから環境について議論するのが筋である。なぜなら、周囲の人々は皆100枚を達成しており、それが決して過剰な要求ではないことを確認しているからだ。にもかかわらず、「100枚は無理だ」「業務負担が大きすぎる」と不満を漏らす者がいたとしたら、それは環境の問題ではなく、本人の能力不足の問題である。

現代では「働きやすさ」がしばしば「個々のペースに合わせること」や「負担を減らすこと」と同義のように扱われる。しかし、職場の基準とは「最もパフォーマンスの低い人」に合わせるものではない。本来、働きやすい環境とは、職員が成果を上げやすくするための合理的な整備を意味するべきであり、それを「快適さ」の追求と混同してはならない。快適さ=楽できる、ではない。

実績を出していないうちに環境のせいにするのは順序が逆だ。まず100枚洗えるようになってから、「こうすればもっと効率的になる」と意見を言うべきであり、成果を出せない者が「これは無理だ」と判断する資格はない。仕事とは「できる人」に合わせて基準が設定されるべきであり、できない人間に基準を下げる必要はないのだ。特に、自分の努力不足を認めずに環境のせいにする者は、成長の機会を自ら手放しているに過ぎない。

なぜこうした職員が増えているのか

私の周りの院長たちも同じような問題を指摘している。なぜ「環境のせいにする職員」や「自分の努力不足を認めない職員」が増えたのか。その背景には、社会全体の価値観の変化と教育の影響があると考えられる。

  1. 「働きやすさ=権利」という風潮の蔓延

    • 働きやすさが「努力の結果」ではなく、「最初から保証されるべきもの」と考える風潮が広がっている。

    • 企業が「従業員満足度」を過度に重視し、過剰に配慮するようになった結果、厳しい要求を避ける文化が生まれた。

  2. 学校教育の影響

    • 競争を避け、「みんなで一緒に」が重視される教育環境では、「努力して基準に達する」という感覚が希薄になる。

    • 「できる人に合わせる」のではなく、「できない人に合わせる」教育が主流になり、職場でも同じ感覚を持ち込む人が増えた。

  3. SNSやメディアの影響

    • 「ブラック企業」「働き方改革」といった言葉が独り歩きし、職場に厳しさがあるとすぐに「劣悪な環境」と捉えられる傾向。

    • 成果を上げる前に「職場が悪い」「業務負担が大きい」と声を上げることが当たり前になりつつある。

  4. 少子高齢化による労働市場の変化

    • 労働力が不足し、「選ばれる職場」にならなければならないという企業側の焦りが、甘やかしにつながる。

    • 「辞められると困るから」と基準を下げる動きが、職員の甘えを助長している。

  5. 転職のハードルが低くなったこと

    • 「自分に合わなければ辞めればいい」という考えが広まり、努力して適応しようとする意識が低下している。

    • 一つの職場で成果を出す前に「もっと楽な環境」を求めて転職を繰り返す人が増えている。

成長に必要なストレス

成長にはある程度のストレスがかかるのが当然だ。ストレス=悪という考えに固執していては、自分の成長は望めない。適度なプレッシャーの中で自らを鍛えることで、初めて実力がつき、より高度な業務に対応できるようになるのだ。

過度のストレスは悪かもしれないが、成長には適度なストレスが不可欠だ。国際社会うんぬんいうのであればその点について見直す必要がある。世界はもっとハングリーだ。国際社会という観点から見れば、成長もまた国際基準で考えなければならない。世界と競争しなければならない時代において、日本独自の甘い基準では生き残れない。そうしなければ日本は沈んでいくと思う。日本が沈むということは、今の生活レベルの維持すら危うくなるということだ。

一方で、40歳を過ぎても使えない人材は、いくら人手不足の時代とはいえ、雇ってもらえる場所は限られる。その時になって初めて「もっと努力すべきだった」と気づいても、すでに手遅れである。環境のせいにして努力を怠った結果が、自らの市場価値を下げ、選択肢を狭めることになったのだ。

結論

このような要因が絡み合い、実績もないうちから「環境が悪い」と言い出す職員が増えている。しかし、本来の「働きやすさ」とは、与えられるものではなく、成果を出した上で手に入れるべきものだ。企業や組織がこの風潮に迎合しすぎると、組織の発展を阻害し、結果として働く側にもデメリットをもたらすことになる。

こうした問題意識を明確に持ち、組織の基準を下げるのではなく、実績を上げる文化を再構築していくことが、真に働きやすい環境を作る上で重要なのではないだろうか。

Take-home message: Instead of complaining about what you can't do, work towards being able to do it—because work is much more enjoyable when you can.


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