聞き方は未来を変える魔法
——まぶた専門外来立ち上げで学んだことー
当院では、このたびまぶたの専門外来を立ち上げることになりました。スペシャリストの先生をお迎えし、スタッフも準備に励んでいましたが、そのやり取りの中で思わぬ発見がありました。
それは、**「聞き方ひとつで未来が変わる」**ということです。
決めつける聞き方が引き起こした違和感
最初のやり取りでは、スタッフがこんなふうに先生に話を持ちかけました。
「これはこうでいかがでしょう」「では、これはこうしましょうね」
一見、ていねいに聞いているように思えますが、内容はほぼ決定事項の押しつけに近いものでした。先生の意見を尊重しているようで、実は**「もう方向性は決まっていますよね?」**という前提のもとに話を進めてしまったのです。
当然、これでは先生が本音を言いにくくなります。私はすぐにスタッフにこうアドバイスしました。
「もっと柔らかく、先生の意見を引き出すように聞いてごらん。」
聞き方を変える——柔軟で誠実なアプローチへ
スタッフはアドバイスを取り入れ、メッセージを改めました。それがこちらです。
①のメッセージ:
「先ほどのメッセージ、失礼致しました。オペ日についてご教示頂きありがとうございます。第3火曜日の外来時間・オペ開始時間についてご相談させてください。外来、何時スタートでどれくらい時間をとればよろしいでしょうか。オペは何時スタートでどれくらい時間を取ればよろしいでしょうか。」
このメッセージでは、最初のやり方とは違い、先生の意見を尊重しながら相談する姿勢がはっきり示されています。「こうしましょう」ではなく**「どうすればよろしいでしょうか?」**と問いかけることで、先生も自由に意見を出しやすくなりました。
先生からの返事——聞き方が生んだ柔軟な対応
これに対して、先生から返ってきた返信がこちらです。
②のメッセージ:
「どうもありがとうございます。すみませんさきほどお返事書いていたのですが帰宅後ばたつき遅くなってしまいました。
8:30〜11:30で外来、12:00〜16:00でオペですと助かりますが、スタッフさんのご都合が難しければ最初のメッセージでご提案いただいた通りで大丈夫です。
(また少し返信が遅くなる時もあるかもしれませんが申し訳ありません。)」
ここで注目したいのは、**「スタッフさんのご都合が難しければ最初のメッセージでご提案いただいた通りで大丈夫です。」**という一文です。
これは、先生が最初の強引なメッセージにも気を遣い、スタッフを尊重するために譲歩を示してくれたものです。しかし、これは本来スタッフが示すべき柔軟さでした。結果的に、聞き方を改めたことで、先生がさらにオープンで柔軟な対応を示してくれたのです。
スティーブン・R・コヴィーの教え——理解してから理解される
このやり取りを通じて思い出したのが、スティーブン・R・コヴィーの『7つの習慣』にある名言です。
「理解してから理解される」(Seek first to understand, then to be understood)
これは、相手の意見や感情にまず寄り添い、理解しようとする姿勢が信頼を生み、結果的に自分の意見も受け入れられやすくなるという教えです。
今回の例では、最初の決めつけるような聞き方が「理解されること」を先行させてしまい、結果として信頼関係を築くチャンスを逃しかけていました。しかし、聞き方を改めて「先生のご意見をお聞かせください」という姿勢に変えたことで、相手も誠実に応じてくれるようになったのです。
聞き方は未来を変える魔法
「聞く力」とは、単に相手の話を耳に入れるだけではありません。どんな聞き方をするかによって、相手の返答や態度、ひいては関係性そのものが変わるのです。
今回のケースでは、柔軟で誠実な質問が、先生からの信頼と協力を引き出しました。そしてその結果、専門外来の立ち上げもスムーズに進んでいます。
この経験から学んだことは明白です。
聞き方は未来を変える魔法——そして、相手を理解しようとする姿勢がその魔法のカギになる。
まとめ——聞き方ひとつで未来が広がる
『7つの習慣』で語られているように、まず相手を理解しようとすることは、単なる理論ではなく実践的なスキルです。
相手に安心感を与え、意見を引き出す質問を心がける。
柔軟でオープンな態度を示すことで、信頼関係が深まり、チームやプロジェクトが円滑に進む。
このように、「聞く力」は未来を変える魔法のような力を持っているのです。
まぶたの専門外来の立ち上げは、スタッフと先生のコミュニケーションの改善から始まりました。そして、この経験は私たち自身が「理解してから理解される」という姿勢を持ち続ける重要性を再確認するきっかけにもなりました。
最後に、聞き方ひとつで人間関係も仕事も変わることを忘れず、これからもよりよいコミュニケーションを目指していきたいと思います。