最新GoogleアルゴリズムとスタートアップがやるべきSEO(前編)|サイバーエージェントSEOラボ研究室室長 木村賢教授
今回は株式会社サイバーエージェントの木村教授を迎え、Googleアルゴリズムの基本からSEO対策について最新全体像とスタートアップが今行うべきSEO対策を詳しく教えていただきました。数々のスタートアップをサポートしたきた木村教授だからこその内容が盛りだくさんのビタミンゼミ限定講義です!
ビタミンゼミってなに?
ビタミンゼミについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
サイバーエージェントの木村です。
前提として、大手企業がやる横綱相撲のようなSEOとスタートアップでやらなければならない積み上げ型のSEOとは大きく違います。
よく失敗することはスタートアップが大手企業と同じようなSEO対策をしてしまうこと。
特にありがちなことで、大手企業出身者の方がその会社でやっていたことを同じようにやって失敗するようなケースというのは多々見られます。
そういうところにハマらないように、今日はどのようなことをやっていくと成功に導けるのか説明していきます。
株式会社サイバーエージェント 木村賢 講師
普段はサイバーエージェントで主にSEO部門の研究、技術開発をやっています。一部は京都大学のデータサイエンスの研究室でデータ分析を基にして共同研究という形をとってやっています。
また、フリーランスのSEOコンサルタントとしてもスタートアップの会社さんを数多く支援をしています。併せて、サイバーエージェントキャピタルのSEOエキスパートとしても一部支援をしています。
今日のお話
これが結論です。
「現在のSEOの成果はInformationalに求めるとともに、未来のTransactionalクエリの成果のために事前投資する」という話をします。
そしてTransactionalクエリの多くがYMYLクエリに含まれますのでそのための投資をしましょう。
Informationalクエリ/Transactionalクエリとは?
世の中のインターネットユーザーが検索をするときは大きく二つの目的があります。それが、InformationalクエリとTransactionalクエリです。
情報を何か知りたいというときに検索をする。何かやりたい・買いたいというアクションを起こすために検索をすること。
この2つが主になります。
例えば、「お茶」に関して
「お茶の入れ方が知りたいな」
「お茶にはどのくらいカフェインが入っているかな」
というふうに何か知りたいと思って検索するクエリがInformationalクエリです。
「お茶 購入」
「お茶 通販」
というようなアクションを起こしたくて検索するのがTransactionalクエリです。「お茶」「お茶 おすすめ」など、お茶に関する情報を知りたい場合と購入したい場合のどちらでも検索されそうな、InformationalとTransactionalの両方に当てはまるクエリもあります。
Googleのガイドライン”General Guidelines” (品質評価ガイドライン)
Googleは、General Guidelines(品質評価ガイドライン)というガイドラインを持っています。これはGoogleの検索結果の品質を評価するための評価者用のガイドラインです。
ここにはどのようなことに気をつけて評価をするべきか、どのようなサイトが良いサイトであるかなどが非常に細かく書いてあります。
TransactionalはYMYLでもある
General Guidelinesの中に、このようなものはYMYLの領域ということが書いてあります。この中に「ショッピング」というものがありますが、「ショッピング」というのは実際にモノを買うだけではなくてホテル予約なども含めてTransactionが発生する(決済が発生する)ようなものの全てが含まれます。
このように、そもそもTransactional自体がYMYLなのです。
高い信頼性や、専門性が求められるのがYMYL領域なのでYMYL領域内のTransactionalでも信頼性や権威が求められてしまいます。その為、YMYL領域、YMYL領域内のTransactionalはスタートアップがSEOで勝つには非常に厳しいです。ただし、競合に大手がいない場合や、大手でもSEOに抜け漏れが多ければチャンスはあります。
TransactionalのSEO効果が出るタイミング
今まで多くの企業を見てきたなかで言うと、原則TransactionalはSEO効果が出てくるのはスタートアップがスタートアップじゃなくなったときで、少なくとも上場直前など、そのくらいの規模になっていないとなかなか勝てないのが、現実です。
それは専門性・信頼性・権威性には被リンクやサイテーションが大きく関わっているためです。
もちろん例外はあります。スタートアップで、物凄く有名な会社とかであれば、上がることもありますが原則は厳しいです。先述のとおり、信頼性や専門性・権威性が大事でそのためには被リンクやサイテーションというところが大きく関わってきます。
被リンクとサイテーションとは??
被リンクというのは人気投票の得票と同じで、これが多ければ多いほど「人気がある」と評価されているサイトとみなされます。
サイテーションとは英語で「引用」を意味します。有名なサイトほどサイテーションは大きくなり、無名なサイトほど小さくなります。サイテーションを増やすには「メンション」「指名検索」などが関係します。
●メンションとは
トヨタで例えるとだったら「トヨタ」「トヨタ自動車」という言葉がオンラインのコンテンツに何回書かれているのか、何回言及されているのがメンションです。
●指名検索とは
「トヨタ」「トヨタ 自動車」など社名や運営社名が検索される数検索し、そのサイトに流入する数それが指名検索です。
つまり、サイテーションというのは知名度やブランド力を忠実に表すものです。有名なサイトほどこのサイテーションというのは大きくなりますし、無名なところほど小さくなるはずです。
スタートアップが努力しても大手企業に追いつくことは厳しい?!
当たり前ですが、メンションや検索数共大手企業は圧倒的に多いです。
この数にスタートアップが努力して得られる数で追いつくことは現実的ではないということが今の状態です。
とは言っても、Transactionalクエリで上がることに向けて準備をしていないと、上がるタイミングというのはいつか出てくる可能性があるのにも関わらず、そのタイミングを逃してしまいます。
今は上がりませんが、やらなかったらずっと上がらないところが難しいところでInformationalクエリは何か施策を仕込めば、比較的に半年程で効果がでます。なので、仕込みから効果がでることの繰り返しになるはずです。
そのため、Informationalクエリは仕込みをずっと続けていればずっと右肩上がりで上がっていきます。
ところが、Transactionalクエリというのはスタートアップの会社からすると仕込み期間が長くてサイトやブランドが一定の水準を超えたときに初めて効果が出るというような形になっています。
その為、Transactionalクエリというのは長期的な投資と考えて積み上げておくことをおすすめします。
目先のSEOだけをやり続けていくと、すごく大きく伸びるタイミングを逃してしまいます。そこがSEOの難しいところです。
対InformationalクエリようにTransactionalクエリでは情報コンテンツを作って最適化するだけではないので、かなり高テクニカルなスキルが欲しくなります。
プロジェクト全体の優先度とキャッシュフローや経営状況っていうのを踏まえた上で施策を打つタイミングを考える必要があり、スタートアップのSEOで場合によっては一番難しいところだと思います。
データから見る傾向と対策
それらの準備のためにInformational、Transactionalではどのようなことをやっておくべき必要があるのかというのを考えていきたいと思います。
※相関関係と示すものであり、因果関係があるとは限りません
※6、7月のアップデートで一部状況に変化が出ています
●サイトは https かどうか
上位はほとんどがhttps化しています。現在httpのところはhttpsに変更すべきだと思います。
●機械的な運営者情報の伝達
機械的にどこがサイトを運営しているか分かるかどうかということが判断のひとつとなっている可能性があります。機械的な判断とは何かと言うとSSLの証明書やドメインのwho isの情報です。現在では、InformationalもTransactionalもほとんどのサイトが機械的に運営者を理解できるものが上位になっています。
●ドメインエイジは長い方が有利
ドメインエイジは長いとSEOに有利という話が本当かどうかですが、実はInformationalにはほとんどが影響ありません。Transactionalは長い方が優位な傾向にあります。
●コンテンツについて
ランディングページ(LP)の文字数は両方とも多いほうが比較的優位な傾向です。そうなれば、単語数やユニーク単語数が自然と多くなります。コンテンツ量が豊富であるということです。
実は画像数も多い方がやや優位です。特にTransactionalに関しては画像数が多い方が上位表示の傾向が強くなります。
そして、これはLP全体だけではなくて、メインコンテンツ内に多くないとなかなか上がらないということがわかっています。
さらに、キーワードがどれだけあるかということも、非常に相関が強いです。キーワードはもちろん入れ過ぎてしまうと落ちる可能性もありますが、比較的多いものがはっきりと優位になっています。これもやはりメインコンテンツ内で多くないと優位にならないことがわかっています。
画像に関しても同様にメインコンテンツの中で多い必要があります。
キーワードはもちろん入れ過ぎてしまうと落ちる可能性もありますが、比較的多いものがはっきりと優位になっています。これもやはりメインコンテンツ内で多くないと有利にならないことがわかっています。
画像に関しても同様にメインコンテンツの中で多い必要があります。
●タイトルのキーワードについて
重要な部分に関してはしっかりとキーワードが入っていて、なおかつ、キーワードが際立っている方が上がりやすい傾向です。
●発リンク
昔はそのページから外にリンクを出すとランキングは落ちる傾向にありました。現在は反対に、発リンクをすることがポジティブにな傾向にあります。
サイト内外問わず、ユーザーの役に立つリンクはInformationalもTransactionalも優位に働く傾向にあります。
●キャッシュ日
キャッシュ日とは、LPがクロールされキャッシュ更新された日です。
ランディングページがいつクロールされたかということで、最新でクロールされているものの方が上位にいる傾向があります。
●サイトの大きさ
Transactionalは大きいサイトが有利な傾向ですが、Informationalに関してはサイトの大きさは相関がありません。運営をはじめてまもないサイトあってもInformationalは上がる可能性があります。
●キーワードを含むページ数
そのキーワードを含むページ数が多ければ多いほどランキングは高まる傾向が両方のクエリにおいてみられます。
●タイトルにキーワードを含むページ数とその比率
タイトルにキーワードを含むページ数が多いほうが優位で、かつ比率もが高い方が優位な傾向にあります。つまり、専門性・特化性がある方がやや優位です。
●LPへの被リンク数
ランディングページにどのくらいリンク本数があるかは、やはり多いほうが圧倒的に有利になっています。
●サイト全体への被リンク数
Transactionalは圧倒的に多い方が有利ですが、Informationalはサイト全体という方はあまり影響ありません。
つまり、Informationalはそのページだけで勝負ができる可能性があるということです。
●サイテーション
Transactionalは優位性がありますが、Informationalのサイテーションはあまり関係なくなります。
サイテーションの中でもブランド名サイト名だけでどうかという話ですが、こちらもTransactionalだけに相関が見られます。
●ブランドの検索数
Informationalはほぼ相関が見られません。Transactionalは上位はやはり非常に有名なサイト、指名検索が多いサイトに集中する傾向があります。
●ランディングページ(LP)への滞在時間
検索からユーザーがやってきてそのページにどのくらいの時間を滞在するかということですが、比較的長い方が両クエリとも上位にいます。つまり、読了率が高いものが上位傾向であるということです。
●サイト全体の滞在時間
Informationalはサイト全体にそんなに滞在しなくても良いですが、Transactionalはやや滞在時間が長いものの方が上位傾向にあります。
●1訪問者あたりの平均PV数
1訪問者あたりの平均PV数に関しては、Informationalはあまり関係ありませんが、Transactionalは、はっきりと関係してきます。
●直帰率
ここでの直帰とは、1ページのみの閲覧という意味ですが、直帰率に関してもInformationalは直帰率が高くても、低くても全然関係ありませんが、Transactionalは直帰率が低く回遊する方がランキングが上がるという形になっています。
Core Web Vitalsが6月からランキング要因に
※Core Web Vitalsについて詳しくはこちら(Web Vitals の概要: サイトの健全性を示す重要指標)をご覧ください。
ユーザー行動に影響する部分ではありますがCore Web Vitals要素が6月からランキングに入るという話を知っていますか?
Core Web Vitals要素について少し説明していきます。
Pege Experience(ユーザーの体験)をランキングに直接反映させるということですが、これが6月から8月にかけて新たにアルゴリズムが展開をされることが決定しています。
そのCore Web Vitalsというのは3つの要素がありこれらがランキングに直接影響します。
●LCP(Largest Cntentful Paint)
最もそのページの中で表示に時間がかかる部分について、物理的に大きかったり帯域をたくさん使っているところに何秒かかるのかということ。
●FID(First Input Delay)
ユーザーが何かタップをしたり、文字を入力しようとしたときに実際にその動作が実行されるまでの時間を表します。何かアクションを起こす際に待たされる時間のことをFIDといいます。
●CLS(Cumulative Layout Shift)
よくガタンと呼ばれるもので、何かサイトを見ている時に広告が間に入ってきてレイアウトがずれる時間のトータルのことです。
InformationalクエリとTransactionalクエリそれぞれで上位表示されているサイトの傾向をまとめると、次のようになります。
Informational・Transactionalクエリの上位表示の特徴
Informationalクエリの上位表示の特徴
・サイトはHTTPS
・機械的に運営者が理解できる
・LPのメインコンテンツ(テキスト・画像)量が豊富
・LPのメインコンテンツにキーワード数が多くキーワード率が高い
・title,h1にキーワードが入っており目立つ
・サイト内外への発リンクが多い
・キャッシュ更新日が新しい
・LPへの直接的な被リンクが多い
・LPへの滞在時間が長い
・キーワードに関連したページ数が多い
・CoreWebVitalsが良好
Transactionalクエリの上位表示の特徴(会社の規模や売上規模を除く)
・サイトはHTTPS
・運営期間が長い
・LPのメインコンテンツ(テキスト・画像)量が豊富
・LPのメインコンテンツにキーワード数が多くキーワード率が高い
・title,h1にキーワードが入っており目立つ
・サイト内外への発リンクが多い
・キャッシュ更新日が新しい
・サイト全体への被リンクが多い
・サイト名・運営者名のメンションや氏名検索が多い
・LPおよびサイトへの滞在時間が長く、回遊が多い
・キーワードに関連したページ数が多い
・CoreWebVitalsが良好
InformationalとTransactionalクエリとの違いを見てみると、Transactionalクエリでは、運営期間が長いもの、つまりドメインエイジが長いものが上位に多い傾向でした。
リンクに関しては、Informationalはページへのリンクが有利でしたがTransactionalはサイト全体への被リンクが圧倒的に上位表示になってきます。また、サイト名・運営者名のメンションや指名検索などのサイテーションが圧倒的に多いものも有利です。LPだけでなくてサイト全体の滞在時間や回遊が多いというところもTransactionalの特徴です。
2つのクエリで上位表示されているサイトの傾向を把握できたところで、具体的な対策すべきことを後編で解説していきます。
▼後半の記事はこちら