マンガの紹介・感想を自由に書いていく(その3:「SHY」)
この記事では、好きなようにマンガを紹介したりその感想を書いていきます。
作品の新旧に関わらず、その時紹介したいものを紹介します。
今回は1作品だけ紹介します。
(本来は久しぶりの投稿ということもあり4作品ぐらい一気に紹介しようとしていたのですが、文章があまりに熱を帯びてしまったためこの作品だけ切り出した、という経緯があります……)
SHY / 実樹ぶきみ(既巻19冊)
◆どのような作品か
ヒーローものの少年漫画。主人公は日本を代表するヒーローとして活動しているが、極度の恥ずかしがり屋で人前に出るのが苦手な少女、テル。
世界の様々な国にいる仲間のヒーローや、身近な人々、あるいは人の心を惑わす力を持つ子供の集団"アマラリルク"との出会いを通じて、テルは人間の心と向き合っていく。
◆ポイント
今現在、私にとって最推しの少年漫画です。特に推せるポイントは次の2点に集約されます。
作品が「人を助ける人間が持つべき優しさ」についてかなり真摯に向き合って書かれていること
少年漫画として世界観・設定が、キャラクターが、話の展開が圧倒的に面白いこと
1点目はこの作品の特徴とも言うべき部分です。本作に登場する登場する多くのメインキャラクターは、何らかの形で"無念"や"葛藤"を抱えています。例えば救いを見出せない程の過酷な環境で幼少期を過ごしたキャラもいれば、一方で主人公の"恥ずかしがり屋"のように他人から見ればなんてことのないように見える(かもしれない)悩みを持つキャラもいます。
ですが、この作品は各キャラクターが抱える多様な悩みを比べることもせず、否定もせず、無条件に肯定することもせず、ひとつひとつにに対して徹底的に向き合うことによって話が紡がれています。
2点目はすごく普通のことを書いているのですが、ポイントはこれらの2つのよい点が共存している、ということです。
これは完全に私見になりますが、「マンガとしての面白さ」と「作品に込めた信条やポリシーを正しく共感させる力強さ」の両方が優れた作品って実は滅多に存在しないと思っています。ですが、この作品からは両方の良さを高いレベルで感じることができます。これは稀有なことです。
◆もっと詳しく
以降は、自分の感性を震えさせた要素についてもう少し具体的に書いていきます。
ヒーローのメインキャラで、ピルツという名前の少女が登場します。彼女は目つきが鋭く物言いがきつめで「バカなんじゃないの」が口癖。ツンツンした性格ですが、確固たる自己と信念を持っています。恥ずかしがり屋でいつもおどおどしている主人公のテルとは対照的です。
この二人の掛け合いや共闘するなかで深まっていく絆の描写は、この作品の大きな魅力のひとつです。言葉にするとなんともベタな魅力のように感じるかもしれませんが、「少年漫画の友情」の王道中の王道だと思います。
敵対勢力の"アマラリルク"という子供の集団にも魅力的な人物が沢山います。ひどく不完全でありながらも、各々が持つ情動をとことんまで深く突き通したキャラクターばかりです。
アマラリルクのメンバーにクフフさんという人物がいます。「ヒト型おもちゃ箱」を自称する道化師のような風貌の子供でコメディや奇術が大好き、悲しい話や退屈は嫌い。その言動や戦闘スタイルも道化じみていて、トリッキーな動きやアイテムで相手を困惑させたり、不条理な演出を行うことで戦場のムードの流れをあえて台無しにしたりととにかく賑やかしに特化した個性の持ち主。そんなクフフさんですが、ヒーローVSアマラリルクの長い戦いの中でやがて非常に重要な鍵を握ることになる人物です。
クフフさんについて特に好きなのはその表情ですね。目を大きくギョロリと見開いて笑うこともあれば、逆に目を細めニタニタと笑う絵も多いです。濃いアイラインや特徴的なまつ毛(ペイント?)も合わせて、さながら奇術の人形のようです。口元も牙のようにとがった八重歯を見せることもあれば歯を合わせているときもあります。
また、クァバラというキャラクターもとても気に入っています。恐怖やオカルトをモチーフとした亡霊のようなキャラクターでアマラリルクのリーダーであるスティグマに対して非常に高い忠誠心を持っています。亡霊らしく足はなく何故か浮いていて、クマの深い目をしています。
例によって表情も特徴的です。喜ぶとき、驚くとき、攻撃するとき、叫ぶとき、etc……なんかやたら舌を出します。亡霊でもそんなには出さないだろうというぐらい頻繁に長~い舌を出します。この表情で恐怖こそ至高の快感と言わんばかりの特徴的な情緒を惜しげもなく発揮しまくるので、それはもう恐ろしいやつです。
この作品には、他にも魅力的なキャラクターが沢山登場します。記事には書ききれない程です。
締め
今回は1作品、「SHY」を紹介させていただきました。みなさんのマンガ選びの参考になれば幸いです。
(追記)
マンガ紹介の記事をまとめるマガジンを作成しました。
よかったら是非他の記事もご覧いただければと思います。