「見る・見える」ための両眼視の測定方法 ❶【調節性輻輳: ACとは】/ トップアスリート引退の原因は?
■ 調節性輻輳(AC )
目の機能には、「調節性輻輳」があり単眼の度数測定では、顧客の見え方についての悩みに解決ができないケースが約30%以上あると言われていますが、両眼視をしっかり理解し両眼視検査を行うことで、この30%以上の顧客の不満を解決します。
ACとは、個人特有なもので、原則として人の生涯を通じて不変であり、視機能訓練などによっても余り影響を受けません。
しかし一人ひとりの値は、大変ばらつきがあります。AC/A比は視機能分析に際して重要な役割を果たします。
■ 両眼視の仕組み
図1を見てください、一番外側の ”C” が生理的安静位といい、”A” が遠方での水平眼位(検眼で測定する数値)で、C~Aまでの輻輳を「➊緊張性輻輳」といいます。つまり緊張性輻輳により日常の眼位が維持されているのです。
”E” は「両眼視」での眼位となります。(日常遠方視)
”B” では近方での水平眼位で、A~Bは、「➋調節性輻輳:AC」が働いてます。
B~Dは、「➌融像性輻輳」が働き最終的な微調整を行うことで正常な両眼視が維持されています。(網膜上のパーヌム融像圏での網膜対応が作用することで融像性輻輳が起きます)
これ以外には、近方に目標物を提示され反射的に起きる輻輳を「➍近接性輻輳」といい、前述と合わせて【4大輻輳】と呼ばれています。
この中で、視力検査で注意すべき輻輳は、「調節性輻輳:AC 」で、この輻輳は個人特有のもので、調節と連動して起こり最初の1Dに対しても最後の1Dに対しても同じ値の調節性輻輳が起こることが臨床データから証明されています。
そこで「AC/A比」という数値が重要になります。
AC/A比は、” 単位調節量当たりの調節性輻輳の起こる量 " ということで定義されるように、1Dの調節が起こるとそれに合わせて " 何△(プリズム)の調節性輻輳が起こるか "を表した値のことです。
従って視力検査において最高最弱矯正値(#7A)度数をセットして、遠方の水平眼位を測定し、40cmで近方水平眼位を測定すれば眼位が何△入ったか(調節性輻輳が起こった総量)が解り、同時に起きているはずの調節量2.5Dで割ると AC/A比が求められます。
■ No.15 両眼視機能検査 【検査4番】【①遠見水平眼位検査#8/フォン・グレーフェテスト】|TARA (note.com)
■ No.23 両眼視機能検査 【検査9番】【近見水平眼位テスト#13B】|TARA (note.com)
■トップアスリートの引退原因はここに
調節と輻輳は連動します。ピント合わせをすれば眼球は、より目になります。
またその逆で、より目にするとピント調整を行います。
これは生理的な現象です。
年を取ると老眼が始まります。老化現象なので致し方ないことですが、この老眼の原因は、毛様体筋の筋力低下や水晶体レンズの硬化などが主な原因と言われています。
トップアスリートの引退を考えると、体力や競技技術の衰えではなく目の衰えが最前線で通用できなくなる原因なのです。
今は、トップアスリートも「スポーツビジョン」という視覚トレーニングを行なうことでこの視覚機能も数年〜 の延命は可能であると思われます。
今回の記事の両眼視(調節性輻輳:AC)は、この野球選手の眼と大きな関係性あります。野球選手は150km~160kmのスピードボールを見て呼び込んで打っていきますが、このスピードボールに輻輳・調節しボールとの空間を読み取るには、内直筋をスムーズに動かす輻輳運動のトレーニングが重要なのです。
また斜位の大きさにより輻輳運動の強弱も変わります。
よくアスリートのみなさんは、動体視力の衰えと言いますが、少し違います。横に動く数字や物体を素早く識別する「DVA動体視力」の衰えではなくて、前方からくる物体との距離感(空間認識力)と前後の視力「KVA動体視力」の衰えが原因と考えられています。
このKVA動体視力が、両眼視(輻輳運動)と密に関係します。
*下記はイチローさんの現役時代の苦悩の記事です
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NIDEKシステム検眼機を使った両眼視機能検査(保存版)
検眼技術者向けの記事です。両眼視検査の検査手順と様々な顧客の眼に対応できる検査技術を身につけるため参考になれば幸いです。いろいろな人の眼の…
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