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人材マネジメントの動向③

 会社におけるメンタルヘルス対策を経営の視点からとらえるにはどうすればよいでしょうか。
 各社、「健康経営」あるいは「ウェルビーイング経営」という概念を手掛かりに、模索が続いている印象です。

 僕の場合は、人材マネジメントの持続可能性という視点に辿り着きました。その視点は、守島基博教授の「人材マネジメント・システムのサステナビリティを考える」に示されていました。

「人材マネジメントの特徴は、企業の内部管理システムのなかでほぼ唯一、マネージされる経営資源(つまり、人材)側の繁栄が、仕組みの長期的存続と機能発揮のために必要な条件である点である。従業員にとっての便益が少なく、結果として、頑健性が低いと考えられる仕組みは、長期的に見て存続が危ぶまれるのである。」

 人材マネジメントに対するビジネスパーソンの心理的反応、ストレスチェックで言えば、ストレス反応が高い、あるいはストレス要因が高く、周囲からのサポートが低い場合、その人材マネジメントの長期的持続可能性は危ういという考え方になります。

 この人材マネジメントの持続可能性の視点が、会社におけるメンタルヘルス対策を経営の視点からとらえることになるというのが現在の到達点です。

 では、ビジネスパーソンの視点からはどうなるのでしょうか。
 同じく守島教授の「評価・処遇システムの現状と課題」で示されています。組織の元気を「組織の構成員が高い意欲をもち、人材として主体的に活用され、成長している状態を捉える概念」として定義された上で、以下のように述べられています。

「元気の良い組織とそうでない組織を分けるのは何なのだろうか。元気な組織の基本として、なんといっても働く人が元気でないといけない。根本的に『ひと』の元気である限り、人をマネジメントする仕組みの影響が考えられる。つまり、人材マネジメントのあり方だと言える。」

 ビジネスパーソンのワーク・エンゲージメント、メンタルヘルスに人材マネジメントの影響が考えられると言えるのではないでしょうか。

 経営にとっても、ビジネスパーソンにとっても、よりよい人材マネジメントが求められます。人材マネジメントの探究に、迷いはなくなりました。

 次回からは、僕や私たちが人材マネジメントをどうとらえているのかについて取り上げていきます。

守島基博(2007)「評価・処遇システムの現状と課題」
『日本の企業と雇用―長期雇用と成果主義のゆくえ―』
労働政策研究・研修機構プロジェクト研究シリーズNo.5
https://www.jil.go.jp/institute/project/series/2007/05/index.html

守島基博(2011)「人材マネジメント・システムのサステナビリティを考える」
一橋大学日本企業研究センター編『日本企業研究のフロンティア 7号』有斐閣
http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641299276

森永雄太(2017)「健康経営とは何か―職場における健康増進と経営管理の両立」『日本労働研究雑誌』No.682
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2017/05/pdf/004-012.pdf

森永雄太(2019)「ウェルビーイング経営の考え方と進め方 健康経営の新展開」労働新聞社
https://www.rodo.co.jp/book/9784897617336/


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■ プロフィール
小西 定之(こにし さだゆき)
ビジョン・クラフティング研究所 シニアコンサルタント

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産業カウンセラー、キャリアコンサルタント、証券会社で企業金融に従事、その後、独立系コンサルティング会社において人材マネジメント分野のコンサルティング業務(主に人事評価制度)に従事、そして株式会社ジャパンEAPシステムズで会社におけるメンタルヘルス対策のあり方について探究。

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