真意を探る

”先読み!”シリーズ⑧:相手の真に望むことに耳を傾ける(3章より)

相手を巻き込むことが出来る人の伝え方の特徴の一つに、「相手が望むこととに自分が望むことを重ねて伝える」というものがあります。

1章でも語っていた”意味を重ねる”というのがまさにこれにあたります。

「相手はどんな価値観を持っていて、真に望んでいることは何か?」「何に困っているのか? それはなぜか?」 相手の言う言葉を表面的に捉えるだけでは、相手の真意は汲み取れません。単純に相手が何かを言ったとしても、真意はその言葉とは違うところにある可能性があるのです。  

相手はあなたに対して、対処療法的に、「これをしてほしい、あれをしてほしい」と言うかもしれません。しかし真に望むことは「これや、あれ」ではなく、違うものを望んでいるかもしれません。そして往々にして本人もそれを言葉にできていないことも多いものです。そこを明らかにするには、相手の真意を探る質問をする必要があります。 

自分がしてほしいことを伝えても相手には響かない。かといって相手が望むことに応えてばかりでは自分が望む状態には近づかない。

その時に大事なのが、相手がなぜそれを望むのか?という真意を探っていくことです。

実はここでも、ビジョン・フレームが使えます。「相手が望む状態はどんな状態か?」「なぜそれを望むのか?」はまさにVisionとWhyを問うことでもあります。

相手の真意を探る質問とは、相手の語る要望や悩みに対して、「なぜそれを望むのか?」「現状の悩みの根源は何なのか?」「本当はどういう状態になったらベストだと思っているのか?」を問うことです。そうすることで、相手も自覚できていなかったり、言語化できていなかった「真に望むこと」を引き出すことができるのです。 

それを理解した上で、相手も納得しやすいように前提を伝えながら、提案をするのです。納得しやすいとは単にわかりやすくかみ砕いて伝えるということではありません相手が望む姿を実現するためにこれから提案することは有効なんだと感じてもらえるように前提を話すことです。 

人は、実のところ本当に望んでいることを自分でも自覚していないことは多々あります。問われてはじめてそれに気づいたりします。

たとえば、子どもの教育方針が大きく違う夫婦がいたとして、でもそれぞれがなぜその方針を望むのかを問うていくと、実はどちらも「こどもが将来に対してより多くの選択肢を持てるようにしたい」という共通の思いがあることに気がつきます。

そこにフォーカスして、話し合っていけば新たな糸口が見えてきます。

たとえば、前述のテクノロジーの活用を懐疑的に見ている方は、テクノロジーによって人の交流が薄くなり、無機質な血の通っていないような職場になってしまうのは嫌だという感情を抱いているとします。でも私はテクノロジーの活用を積極的に推進したほうがよいと思っている。 

ある時、その方から「職場環境を整備して効率化を図りたい」という要望があったとします。ここぞとばかりにテクノロジー活用を提案しても、違和感が払拭出来ていなければうまくいきません。 

意見の相違を、強引に押し切ろうとすると、相手はますます引いていきます。それでも力に任せて強引に決定すれば「やらされ感」満載になることは想像に難くありません。

そこでもう一歩真意を探ります。するとその要望の真意は「従業員が積極的にアイディアを出しそれを楽しむ状態をつくりたい。そうすることで収益貢献できる施策が生まれる状況をつくりたい。そのためには従業員が余計な仕事を極力しなくてよいように、業務の効率化を図りたい」ということだということがわかりました。 

その真意を踏まえて、提案をします。「テクノロジーの活用によって、もっと人がイキイキと活躍できる状態をつくることができる」という提案です。先ほどと違い、その相手が望む姿に近づくためのテクノロジー活用ということに対して、今まで抱いていた懐疑心も払拭され、提案が通る可能性が格段にあがります。

意味を重ねる、つまり相手が望むことに自分が望むことを重ねるためには、真意をつかみ、自分も相手もどちらも満たされるポイントを探ろうとする意識が不可欠です。これは、7つの習慣でいうwin-winやシナジーなどにも通じる考え方です。

それは、疑問や違和感が解消されたことによって、相手は頑なだった状態がほぐれ、自分が望む状態に近づける可能性が今までよりも鮮明に見える、つまり解像度が上がったからなのです。

よく、人は見たいものを見て、聴きたいもの聴くと言われたりします。相手を巻き込める人は、そこのところを良くわかっています。

故に、伝える以上に相手の真意を探り、問うことを大切にしているのです。


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