「あ、それ、お前?」
「へぇ」
「ふうん。そういう考え方してるから、
おまえは、いつまでたっても、
その病が治らないんだなぁ」
「これ、私じゃないんですか」
「さあねえ、それがお前だと考えている限りは、
お前はほんとうのお前を知らないことになるなあ」
「けど、おかしいなあ。
どうもこれは私のようですがなあ。」
「私のようだから、お前か」・・・
ヒマラヤの山の中、
著者の師であるヨガの大家との問答が続く。
その後、著者はこの「我とは何か?」という
古今東西からの命題を、数日考え続け、
ついに、ひとつの答えを見出し、
明解かつ平易な言葉で答えている。
この書は、ゲラゲラと笑って読み続けていると、
いつの間にか、深遠な人生哲学を辿り着いているような
中村天風師ならではの講演録。
まるで、
眼前に天風先生が語りかけているかのようだ。
『成功の実現』のタイトルよりも内容が深く重い。
ただ単なる成功哲学、あるいはノウハウ書ではなく、
類書にありがちな説教くささがない。
著者は、日本人初のヨガ直伝者であり、哲学、医学博士。
若い頃には軍事探偵をしていたという異色の経歴を持ち、
世界を股にかけ波乱万丈の人生を歩んだ。
戦前、戦後を通じて、政財界のリーダーに影響を与えた
中村天風という稀有な存在を知るうえで、
また人生をいかに生きるかを考え、実践するための
格好の書である。
真剣に人生を考え、
本当の人生の師を求めている人にだけ、
ぜひ読んでほしい。