見出し画像

DICOM画像のオーバーレイ

オーバーレイ(Overlay)は、DICOM画像の上にグラフィックやテキスト(注釈など)を配置するための画像(またはオーバーレイ・プレーン)です。元の画像の上に重ねて表示するパネルのようなものです。

画像があるのになぜオーバーレイが必要なのでしょうか?

例えば、CT画像の上に注釈を描きたい、腫瘍などの関心領域をトレースしたい、測定結果を記録したい、このような場合、どうすればよいでしょうか。

まず思いつくのは、注釈を画像ピクセルにスタンプのように「焼き付ける」、つまり、元の画像のピクセルを上書きすることです。

これは間違いなく最も簡単な方法ですが、残念ながら最悪の方法でもあります。バックアップはあったとしても、表示中の画像データを壊してしまいます。

元の画像を壊さないようにするには、モノクロのCT画像に関心領域を付けて、CT画像ではなくセカンダリキャプチャ画像として新しく保存しておくこともできます。しかしこうすると、CT値のデンシティ・キャリブレーションは無視されてしまうかもしれません(8 bitで保存されたり、キャリブレーション関数に必要なRescale SlopeとRescale Interceptがオブジェクトからなくなると、CT値が計算できなくなる)。

セカンダリキャプチャ画像(SC画像)として保存したときは必要な情報や属性がなくなるかもしれない

そのため、追加のグラフィックを画像と分けて個別に保存する必要があると分かったのです。別の画像レイヤー、つまりオーバーレイです。

画像とオーバーレイをレイヤーで分けて合成表示する

初期のDICOMでは、オーバーレイの画素を元の画像の画素値と共に (7FE0,0010) タグに保存することが考えられていました。 例えば、CT 画像のピクセルが12 ビット(Bits Stored)である場合、ピクセルメモリは 2 バイト=16 ビット(Bits Allocated)に丸められ、16-12=4 ビットの未使用ビットがオーバーレイ用のビットとして使用されていました。しかし、このアプローチは、ビットの扱いについての混乱を招く結果となり、最終的に、事実上使われなくなりました。

そして、オーバーレイは別のDICOM要素に再パッケージ化されることになったのです。

オーバーレイ・プレーン・モジュール

オーバーレイのピクセルを(7FE0,0010)から解放し、60XXに移動したのです。しかし、いくつかの制限が発生しました。

まず第一に、オーバーレイは1ビット/ピクセルの "白黒"フォーマット(8ビット/ピクセルのグレースケールではない)のみがサポートされることになりました。グレースケールやカラーオーバーレイは、多くの場合、非常に有用ですが、使えないのです。

第二に、DICOMは16進数XXの00からFF(10進数の 0 から 255 )範囲を、00から1E(10進数の 0 から 30 )までと制限したため、簡単に数えられるように、16個のグループ番号しか作れないようにしています(0から30までの偶数のみなので)。

しかし、これらの制約は、オーバーレイを最もシンプルなフォーマットにして、間違えなくする工夫でもあるのです。

これらの理由で、1枚のDICOM画像に、1ビット/ピクセルのフォーマットで、最大16枚のオーバーレイを作成することができます。

どのような色やコントラストで表示するかを指定する仕組みはないため、オーバーレイの扱いはアプリケーションに依存しています。

そのため、ほぼすべてのDICOMベンダーが、最もサポートしやすい相互互換性のある解決策を見出すために、6000グループ(XX=00) に格納された単一のオーバーレイを読み込むことのみをデフォルトにしているようです。

また、多くのベンダーは、DICOMのオーバーレイの制約に戸惑い、オーバーレイを積極的にはサポートせず、関心領域のポリゴンや注釈テキストなどを独自のフォーマットによってソフトウェア内でやり取りしています。そのため、画像が他のシステムに転送されると、オーバーレイがPACSのモニターから消えてなくなってしまうということもよくあることです。

ただし、多くのDICOMアプリケーションは、グループ 6000を持つDICOM画像を開くと、オーバーレイを表示してくれるはずです(ただし、白黒の)。


Stay Visionary

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?