【結論】アジサイは酸性土壌で青くなる?
土の研究者・藤井です。
梅雨のシーズンに入ると、アジサイの話題が増えてきます。
特に多いのがアジサイの色と土の話題です。「アジサイの色は土で決まる」といわれますが、実際のところ、どうなのでしょうか。検証します。
アジサイの色は土が決める?
「アジサイの色は、土の酸性度で決まる」と言われます。たしかに、地中海沿岸の石灰岩地帯(中性~アルカリ性)ではピンク色が多く、酸性土壌の多い日本ではアジサイは青色が多いです。アジサイの語尾のaiも藍由来です。テレビの気象予報士の梅雨どきトークの定番ネタです。金田一少年の事件簿で、遺体を埋めた場所だけがアジサイの花の色が変わっていることが推理で使われました。
日本でアジサイが青くなる理由
アジサイのガク色素の主成分はデルフィニジン3グルコシド(ミルチリン)。ここ、来週のテストに出ます!俗にアントシアニンと呼ばれます。色に関してきわめて不安定で、電気にくっ付くイオンとその構造で青にもピンクにも変わります。
「アジサイの色=土の酸性度」といわれますが、厳密にはアジサイが吸収・集積したアルミニウムイオン(細胞内のアルミニウム濃度)です。
雨が多い ⇒ カルシウムなど土から流れる ⇒ 土が酸性に ⇒ アルミニウムイオン(ふつう有毒)溶けだす⇒アジサイはアルミニウムイオンを吸収(体内で解毒できる) ⇒ アジサイのガク色素と反応 ⇒ 青くなる という流れです。
ピンクのアジサイの抽出液にアルミニウム溶液を加えると、青色になります。実験で確かめることもできます。私の人気のないYoutube動画を見てやってください。
実は簡単じゃない
でも、日本にもピンクなのもあるじゃん!同じ所で咲いているアジサイなのに青もピンクもあるじゃん!同じ花でも色変わるじゃん!という疑問もわいてきます。ピンク色のアジサイの株元の土は石灰をまいて中性~アルカリ性になっている可能性もありますし、青色になりにくい園芸品種もあります。
土から吸収・集積したアルミニウムイオン(細胞内のアルミニウム濃度)だけでなく、細胞内pH、助色素(キナ酸の5位エステル類)の3つのファクターで構造、そして色が決まるようです。かなり微妙なものなのです。
土の研究者でありながら、アジサイの色に土は重要だけれど、土だけでは決まらないよ、というお話でした。
おまけ:宮沢賢治を魅了したアジサイの七変化
詩人・童話作家の宮沢賢治はアジサイの色の変化に着目して詩を作っています。
「あぢさゐいろの風(あじさい色の風)」は、後に「ラクムス青(ルビ:ブルー)の風」に修正される。ラクムスとはリトマス試験紙に含まれる色素成分だ。澄み切った空の青から夕焼けのピンクまで色が変わる移ろいを、「酸性」や「アルカリ性」に反応して色を変えるアジサイやリトマス試験紙によって表現しようとした(『大地の五億年』藤井一至より)
土と植物についてもう少し詳しく知りたい方には、ご一読くださいませ。