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噓日記 8/22 虫の動画

俺は虫が嫌いだ。
意思を持たない均一な目でシステマチックに蠢く姿を見ているだけで気分が悪くなる。
怖いもの見たさで虫の生涯を調べてみては、生から死、そして次代へのサイクルがあまりにも効率化されているのを目の当たりにして鳥肌を立てて怯えている。
だがあえて最近はその虫について、明確に意図を持って深く調べるようになった。
私は虫を知ろうとしている。
恐れとは不理解からくるものだ。
理解できない物事を人は簡単に怖がる。
それは人間に対してだって同じことであり、俺たちは独り言を言いながら彷徨くおっさんがこの世で一番怖い。
虫と同様に、何がしたいのか分からないから怖いのだ。
虫はその生態を知れば自ずと彼らの動きの意味が分かるようになり対処もできるようになる。
おっさんも独り言の意味が分かれば恐怖から憐憫へと視点を転換できるというわけだ。
ということで最近の俺は隙を見つけては虫を捕まえたり虫の解説をする動画を見るようにしている。
最初のうちは名も知らぬ気持ちの悪い虫だった奴らも、いつの間にか名前を覚えていたり、いつの間にかその生態が理解できるようになっていく。
動画は虫の動きや姿を確認しながら、奴らの生態を解説してくれるものだから図鑑やネットのページで調べるよりもより体感的に脳へと印象が伝わる。
徐々に慣れてきて、今ならその辺の甲虫ならばもしかすると手に取って観察することさえ出来るのではないかと思えてきている。
これは知ることで起きた明確な進歩だ。
なんなら推しの虫もできてきたかもしれない。
最近はグラントシロカブトというカブトムシと、オオスカシバという蛾がなんとなく気になってきている。
グラントシロカブトは白色の体に二本の角を勇壮に湛えた美しい姿をしていて、つい検索してしまう。
オオスカシバは鳥のメジロのような姿をした蛾で、ぽってりとした体と対照的な透明な翼のコントラストが非常に蠱惑的だ。
この知る活動を続けていけば、俺は来年には虫を飼い始めることができるかも知れない。
俺はこうやって知り続けて、恐怖に打ち勝つ。
次に俺がやることはもう分かるだろう。
俺はまだ知らなければならない。
独り言を言いながら彷徨くおっさんのことを。
彼らを知り、俺はさらに打ち勝つ。
動画がいいという実感を得たので、俺はこの手法をなぞっていく。
次に見る動画は、吉田類の酒場放浪記。
おっさんを学ぶならこれだ。
虫、おっさん、虫、おっさん。
交互に攻め立てていく。

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バチャゴブ
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