観光資源豊富な地方と人的・資金的資源豊富なまちが互いに理解し手を取り合えばもっと新しい世界が見えてくるんちゃうん?
いつものエッセイとは趣が180°違ってて、戸惑った方すみません。
本記事は、Lancers〈新しい働き方LAB・研究員制度〉の活動の一環として、僕が行う「働き方実験」についてまとめたものです。
僕は今月、この研究員として選ばれました。
ただし同時に始めたことがいくつかあって、正直そのどれもが今、中途半端になりつつあることをちょっぴり憂えています。
研究テーマはいくつか用意されていますが、僕はその中でも「地方観光DX」の研究員として半年間活動していくことになります。
◆実験の目的と背景
なぜこの実験に参加しようと思ったのか――
日頃フリーの仕事案件でお世話になっているLancersから1本のメールが届いたのがすべての運の尽き、いえ始まり。
5/15のことだった。
夜半過ぎに届いていたそのメールを読んだのは翌朝6時。
「地方観光DXプロジェクト参加募集説明会」なるものがあるという。
さっぱり意味が分からないが、なぜかリンクを辿り、いろいろ読んでもよく分からないまま、1時間後には説明会への参加をポチっていた。
ふだんめったなことではポチらない僕にしては異例のことだ。
そして僕はその説明会に参加して話を聞き、まだまだよく分からぬまま申し込み、そして選ばれた。
ただひとつ、僕を駆り立てたのは「地方観光」というキーワード。
東京で編集者をやっていた僕は、1999年に突然縁もゆかりもない愛媛に飛び込んで、観光業を中心とした村おこしを手伝った。
以来2019年まで、いろいろな困難に直面しながらも、よそものとしてその村の行く末を案じ、できる限りのことをしてきたつもりだ。
まさに「地方観光」に心血注いだ20年だったといえるだろう。
残念ながら今は愛媛から足を洗って(?)故郷の神戸にいるが、村おこし時代に痛感したことが、今も頭にモヤモヤと残っている。
それは、地方とまちでは資源の偏在が著しいという問題だ。
地方にあってまちにないもの、まちにあって地方にないもの。
それらがうまくマッチングすれば、とんでもないパワーになるのではないかとずっとモヤモヤしていたのだ。
そのモヤモヤは、2015年に共著で出した本『農業再生に挑むコミュニティビジネス~豊かな地域資源を生かすために~』で、僕が書いたパートの章題「山を町につなぐ」にも現れている。
山に20年暮らし、モノやコトはあふれるほどあるのに、ヒトとカネが枯渇して動けないという状況にいたのだ。
そのモヤモヤが、今回の「地方観光DXプロジェクト」によく分からぬまま参加した最大にして唯一の理由だ。
◆検証したいこと
地方にないもの(足りないもの)をまちから持ち込めば地方は元気になるはず、というのが僕の仮説だ。
それは果たして本当か、検証したい。
もし検証結果に一定の真理を見出すことができれば、それはすなわち全国に展開すべきプロトタイプと呼べる(かもしれない)。
◆活動の概要
指定企画だけにあらかじめ活動の大筋は決まっている。
自治体や観光庁が公募する事業に提案する
提案が採用されたらメンバーで仕事として手掛ける
その地域の「困った」を解決するために全力投球する
僕も取れる限りの時間を使い、できる限りの力を尽くしたい。
◆実験の測定方法
これも、すでにオフィシャルな測定目標がある。
チームで地方創生の案件を(いくつ)獲得できるか
案件を実行し、定量的な結果を残せるか
参加メンバーのポートフォリオとして、それぞれが今後のフリーランス活動に活かせるか
今回の大枠が「私の働き方実験」である以上、それは至上命題だ。
研究員として活動し、自分の働き方がどう変わるのか、フリーランス全体として新しい働き方を生み出せるのか。
それは大事。
それは大事なのだが、この実験は働き方にだけ着目していいわけはない。
「地方観光DX」というプロジェクトは、相手のいる仕事なのだ。
だから僕は上で立てた仮説を検証したい。
地方に足りないヒト・カネを持ち込めば地方は元気になるか。
ヒトは研究員が担い、カネは採択された公募の支援金を充て、次の指標で検証する。
入込客の変化
獲得外貨の変化
当地住民の笑顔の変化
とくに重要と思うのがいちばん下の項目だ。
え? 客数の伸びや落としたお金のほうが大切ではないかって?
いやいや、何のための活性化なのか、根本を考えたらすぐ分かることだ。
客がどれだけ増えたかより、そこに暮らす住民がその地を誇りに思うことがゴールなのではないだろうか。
◆スケジュール・進め方
研究期間は12月末までの6か月間だ。
実際には応募する公募案件によってスケジュールは大きく左右されるが、ひとまず現時点でざっとこんなところだろうか。
◆その他
あとは全力でやることだ。
おもしろいことをやりたいというパワーはただそれだけですごいが、何人ものそのパワーが集結したとき、未知なる世界を開くことさえ可能になると信じている。
そこに参画できる喜びを噛みしめたい。
ただ、僕はすでに知っている。
周囲が思うほど、現地の人たちは変わりたくないということを。
よそものが現地の困りごとのヒアリングもせず動くことの危うさを。
山暮らしの20年、独善だ、ありがた迷惑だ、と何度言われたかしれない。
今回、僕たちは「その場限りの寄せ集め集団がお祭り気分で勝手なことをしている」と見られる可能性を忘れてはならない。
とくに、オフィシャルな目標「チームで地方創生の案件を(いくつ)獲得できるか」は危険すぎる。
丁寧な仕事を心がけなければ。
(2023/6/22記)