製作知識 ネックの「ブリッジ型」
今回も、前回の話しを続けていく。
今を逃せば、こんな話しは二度としないような気がする。
ヴァイオリン上に、弓と同様の「しなり」を持たせるためには、
弦を保持しているペグが引っ張られる力を裏板ボタンに伝える必要がある。
この時、ペグから裏板ボタンまでの距離は短いほど安全で、
ネックが長いほど張力に負けて壊れやすくなる。
ここに、私が取り組んできた大きな課題がある。
下図のように、標準サイズのヴァイオリンに対して、
新作ヴァイオリンは、弦長もボディ長も短いのに、ネックだけは長い。
もちろん、壊れやすくは作りたくない。
理由は、弦長はボディ長より少し長い方が望ましい、という理屈で、
デザイン作成の上でこれ以上駒位置を下げるわけにもいかず、
ネックを長くするしかなかった。
ただ、演奏時のポジション移動の都合を考えると、メリットもあった。
これまでは、3rdポジションで左手の腹がボディに当たるのが不満だった。
最近は2ndポジションも頻繁に出てくるので、
腕の開き具合だけで、ポジション移動したかったのだ。
そこで、なんとかネックに強さを持たせる方法を検討すると、
下図のようにネックの「あご」と「ネックルート」によって
グリップはブリッジ型になっていることに気がついた。
つまり、ペグが持ち上げられる力①をナットに伝えて、
このブリッジ型を上から押せば②、強度は格段に上がる。
眠れるネックの「ブリッジ型」
この、潜在的な強さを起こすためには、
ペグを持ち上げる弦の張力で、「ペグボックス」と「あご」を
一緒に持ち上げない工夫が必要になる。
どのような工夫をしたかは、
試奏会でご紹介しますね。