紫陽花の魔法【百合小説】
「綺麗だねぇ!」
平日の昼下がり、せっかく合わせて休みを取ったのだからと、紫陽花の名所に二人で観光にきていた。
まだ早い時間だからか、人もまばらで色とりどりの紫陽花をゆっくり見ることができる。
杏子は久しぶりに彼女と出かけることが嬉しくて写真を撮ったり、「こっちこっち!」と瑠璃の手をとり様々な品種を見た。
先々で珍しい紫陽花を得意げに説明する瑠璃が面白くてクスリと笑った瞬間、パシャリと写真を撮った。
「ちょっと!杏子ちゃん今の無しだよぉ!不意打ち!」
慌てる 瑠璃に、杏子はほらっと画面を見せてニコニコと笑った。
「えへへ~!瑠璃ちゃんの笑顔と紫陽花、すごいよかったんだよぉ!」
じゃれあっていたところにポツリと雨が落ちてきた。
「え?天気予報じゃ晴れだったのに・・・どうしよう・・・」
カメラを抱きしめてオロオロとうろたえる杏子に、瑠璃は折りたたみ傘を広げて杏子をひきよせた。
「たまたま・・・たまたま傘もってたから・・・もっとくっつかないと、風邪ひいちゃうよっ!」
引き寄せた杏子に見つめられ、瑠璃は耳を赤くしてそっぽをむいた。
広がる紫陽花の中で身を寄せ合うと世界に二人だけのような気がしてくる。
ふと目が合い、目を閉じる杏子の額にキスを落とすと「・・・好きだよ。」と呟いた。