おこもりにおすすめ、オペラハウスのライブストリーミング
久しぶりの投稿、失礼いたします。音楽物書きの加藤浩子です。
新型コロナの登場以来、オペラやコンサートなどのイベントはほとんどが中止に追い込まれています。事情は欧米でも同じで、オペラハウスやコンサートホールは軒並み閉鎖中。1日も早く、活動が再開できる状況が来ることを願っています。
そんな中、オペラハウスやコンサートホールのいくつかは、過去の公演をストリーミング配信しています。視聴はもちろん無料。普段は有料でストリーミング配信をしているウィーン国立歌劇場も、閉鎖期間に限っては無料で、アーカイブからこれ!という公演を配信しています。
クラシック音楽の情報誌「ぶらあぼ」の電子版である「EBravo」さんのサイトに、いま、フリーで見られるストリーミング一覧のページができました。オペラハウスをはじめ、国内外のオーケストラのストリーミング中継も紹介されています。
また、3月、ヨーロッパツアーを行なっていた日本を代表する古楽オーケストラ&合唱団「バッハ・コレギウム・ジャパン」が、ヨーロッパにおける新型コロナの流行を受けて、ツアーの途中で中断を余儀なくされた時、最後にケルンのフィルハーモニーホールで「ヨハネ受難曲」を無観客上演し、ストリーミング配信しましたが、そのライブもまだ見られるようです(これは私も見ましたが、大変感動的な演奏でした)。
ストリーミングの一覧は、以下のサイトからご覧下さい。
https://ebravo.jp/archives/63048?fbclid=IwAR0JiiYXZX20MK_4kSyF5eztDXHpQC2jTXS0URTlQkV3Da1guSNFjUDTCz4
王道のメトロポリタンオペラやウィーン国立歌劇場から、スイスを代表するオペラハウスで、ちょっと通むけのチューリヒ歌劇場、そして相当に冒険的なブリュッセルのモネ劇場まで、様々な劇場の注目公演が見られるのは嬉しい限りです。劇場により、日替わりで異なった演目を提供したり、一つの演目を一定期間配信していたりするので、詳しい内容はこのページ、そして劇場のサイトでチェックしていただけると幸いです
いくつかのストリーミングを冷やかしましたが、人気の演目を比較的オーソドックスな演出で上演し、誰でも楽しめるような公演を行なっているのは、普段から映画館で「ライブビューイング」としてオペラを配信しているニューヨークのメトロポリタンオペラ、そして音楽の都ウィーンを代表するウィーン国立歌劇場かなと思います。両方とも、オペラ界のスターが出るのも嬉しい。
メトロポリタンオペラは、この月末は連日ワーグナーの大作を配信。作品にもよりますが、ワーグナーのオペラは上演に4時間くらいかかかる作品もあるので、興味はあっても普段はなかなかじっくり見る時間が取れないという方もあるのではないでしょうか。自宅で視聴でき、好きなところで止めたり再開したり、見たいところに飛べたりするストリーミング配信なら、マイペースで楽しめます。ワーグナーにどっぷり浸るチャンスかもしれません。本日29日の日曜日は、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」が視聴できます。
日本では上の2つほどは知られていないかもしれませんが、質が高くてスターも出ることでこの二つの劇場に匹敵するのはベルリン州立歌劇場です。昨夜もここのストリーミングでヴェルディのオペラ「マクベス」を見ていましたが、マクベス役にかつて「三大テノール」の一人として絶大な人気を誇り、現在はバリトンに転向したプラシド・ドミンゴ、夫人役に大人気のソプラノ、アンナ・ネトレプコという二大スターを揃え、この劇場の音楽監督であるダニエル・バレンボイムが指揮をとった、音楽的に大変水準の高い公演でした。ドミンゴが、テノール時代に同じヴェルディの「オテロ」のタイトルロールを得意にしていたのはよく知られていますが、「マクベス」は「オテロ」同様、シェイクスピア原作の心理劇なので、彼の迫真の心理表現が堪能できるという点で、ドミンゴに向いているレパートリーだと感じます。
オペラファンの方はもちろんですが、オペラは値段も含め、敷居が高くてちょっと、という方、ぜひ、この機会に、オペラの世界を覗いてみませんか。世界トップレベルの公演が無料で楽しめる、またとないチャンスだと思います。日本語字幕がないのがちょっと残念ですが、オペラというパフォーマンスの迫力は十分味わっていただけると思います!
そして先の見えない日々を、このような素晴らしい公演を提供して力づけてくれる劇場関係者の方々に、心から感謝したいと思います。