クレアおばさん .2

一週間、学校に行かなかったら、親が学校から呼び出された。
「マサト、学校行かずにどこ行ってんの?」
ママはキョトン顔で僕に尋ねてきた。
ちょっと面白くなって僕は、
「クレアおばさんのところだよ。ママも行く?」
って言ってみた。
「何それ!うん、行く!」
ママはキョトン顔のまま、そう言った。

「いらっしゃ〜い♪マサト♪」
「手を洗ってうがいをしてね〜〜♪」
いつものようにおばさんに呼び込まれて、僕は洗面所に手を洗いに行ったけど、ママは玄関で突っ立ってた。
僕はママをそのままにして、ダイニングテーブルに座っていつも通り、チャイを飲んだ。
「マサト、誰か連れてきたの?」
キッチンから玄関の方を見ながらおばさんは不思議そうな顔をしていた。
「うん。僕のママ。」
「あら!ぜんぜんわからなかったわ。」
クレアおばさんは一段と明るい表情になった。
ママはまだ、玄関で突っ立ってた。

「ママは恥ずかしがり屋さん?」
「知らないよ、仕事では大きな声出してるみたいだよ?」
「そう。ママ、今日お仕事おさぼり?」
ニコニコワクワク顔でおばさんは僕の隣に座り、僕の目を覗き込む。
「ううん、ぼくの学校に呼び出されたんだ。その学校をぶっちしてる。」
「まあ!それはステキね!」
あははははは!って大きな声で笑って、クレアおばさんはキッチンに消えた。

(ママがんばれ〜〜)
僕は心の中で励ました。

クレアおばさんちにはチャイムがない。
玄関の鍵もかかってない。
クレアおばさんに迎え入れてもらうためには、声に出さなきゃいけない、自分の気持ちを。


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