クレアおばさん .3
クレアおばさんが何者だって僕はどうだっていい。
クレアおばさんのうちがあるこの場所は空き地なんだ。
クレアおばさんがおばけだろうが、なにか知らないものだろうが、僕には見えているし、暖かいチャイも僕の身体に染み込んでいくんだから。
それでじゅうぶんだ。
あの日僕は、なんで毎日学校に行かなきゃいけないのか急に嫌になって、家を出てから学校と反対向きに歩き出した。知ってる学区を出るのは簡単じゃない。どんどん歩いたってまだ、幼稚園の頃の友達のうちの辺りだ。足が勝手に動くままに、とにかく遠くへ行けるように、僕はどんどん進んだ。
(あれ。こんなところに空き地があったっけ。)
まだ、知ってる辺りのはずだけど、空き地があった。広い草むらが、ぽかんとそこにはあった。
僕はずかずかと、草を蹴り散らしながら草むらに入って行った。草が千切れながらフワフワと足に当たって気持ちがよかった。無心に草むらを進んでいたら、家があったんだ。
(あれ?)
道からは見えなかった。ただ、広い空き地に、雑草がボサボサに生えてただけだと思ってたのに。僕はその日、どうしてだかとてもむしゃくしゃしていて、家が見えておかしいなって思いながら、でもそれは気にしない振りをして、足元のボサボサの草っ原を蹴っ散らかしながら、ぐるぐるぐるぐる歩き続けたんだ。ガサガサ、さわさわ、ボサボサ、ふわふわ。
足に絡みついては、千切れて舞い上がる。飽きずにしばらくそうしていたんだ。
疲れた僕は、急にどこかに座りたくなった。それでさっき見えた家のほうを見てみた。それはさっきより少し離れたところに見えたんだ。同じところをぐるぐる回っていたつもりだったのに、さっきより家が遠くに見えた。僕は、家に向かって走った。思いっきり走った。
「こんにちは!疲れたから、座りたいんだ!!!」
僕は家に向かって、思いっきりダッシュしながら、叫んだ。