クレアおばさん .1
僕の町には不思議なおばさんがいる。
ひとりで暮らしているのに、おばさんのうちにはいつも誰か彼かが居て、出入りは自由。
そんな僕も学校に行きたくない日はおばさんのうちに行く。
クレアおばさんは、時々急にすっごく若い綺麗な人になる時があるんだ。
今日も。
ハナちゃんがすっごく怒った顔でおばさんちに入ってきた。
「いらっしゃ~い♪
手を洗ってうがいをしてね、ハナ♪ココアを入れておくからね~♪」
って、いつもの調子で声を掛けて、ハナちゃんが洗面所に手を洗いに入った背中を見て、クレアおばさんは静かに、若くて綺麗な人にチェンジした。
「ここに座って、ハナ。」
「もううちに帰りたくない。」
ハナちゃんはすっごく怒った声でそう言って、ココアを口にした。
「それは悲しかったね。」
若くて綺麗なクレアおばさんは、ハナちゃんに言って、ハナちゃんがココアのカップを包んでいる両手を、両手で包んだ。
そしたら、ハナちゃんは、わあわあ泣いた。えーんえーんって、小さい子みたいに。若くて綺麗なクレアおばさんは、ハナちゃんの隣でハナちゃんの肩に頭をちょこんとくっつけて、黙っていた。
僕はハナちゃんが小さい子みたいに泣くから、つられて涙が出たけど、ほんとうに小さい、マリさんの子のダイチがニコニコしてたから、大丈夫なんだと安心して、ダイチを抱っこしていい気持ちになった。
「さあ、お皿を出してね。今日はカレーライスだからね♪」
ダイチを抱っこしていたら、いつの間にかダイチも僕も眠っていて、おばさんに戻ったクレアおばさんの声で目が覚めた。
ハナちゃんは、居なかった。