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ネタバレ閲覧注意 ラストマイル考察

前座

 みなさんどうもこんにちは。一条要です。8月も後半で、そろそろ前期の成績が出るので怯えているところです。私の今年の夏休みは夏休み期間にも関わらず、忙殺されていてあまり休めていません。あんまりにも暑いのでそろそろ体が溶けてしまいそうだなと思っています。

さて今回はいつもとちょっと趣向を変えて映画の考察をしようと思います。この度私が本当に大好きだった「アンナチュラル」、「MIU404」という2つのドラマと世界がつながったシェアード・ユニバース・ムービーである「ラストマイル」という映画作品が公開されました。今回はこの映画を見て、私が考えた考察をまとめたいと思います。ここから先の内容はネタバレを含みますので、映画をまだ見ていない方は読まれない方がいいと思います。劇場に行ってください。

残された疑問

 私は元々「アンナチュラル」と「MIU404」の2つのドラマをリアタイで視聴していて、今回のラストマイルが発表された時にすごく嬉しくて、映画を見る前の準備として両ドラマを再度視聴しています。なのでこの2つのドラマに対する解像度はまあまああると自分では思っています。

そしてこの映画を見て色々な疑問が残りました。主な疑問は4つです。
 私が見たかった映画はミコトと志摩たちが会話したり、接触するような「アンナチュラル」と「MIU404」、「ラストマイル」の3つの所属のキャストたちの絡みだったのに、映画ではほとんど接触がなかったことです。アンナチュラルのUDIチームはUDIとしての仕事をして、MIU404の機捜チームは警察機関として初動捜査を全うしました。そしてそこからわかったことを手がかりとして「ラストマイル」の謎を解くという構図でした。なぜこの3つの所属キャストたちはそれぞれの立場で仕事を全うするだけで、会話することもなかったのでしょう。あの映画は自らドラマを再履修するようなオタクが見たい景色を映すことはせず、あくまで謎解きのピースの一部として「アンナチュラル」と「MIU404」を映し出したような気がしたのです。 映画を見た家族は「なんかあの絡みの全くない感じなら映画じゃなくて二時間ドラマでも良かった気がする」と言っていました。あれが二時間ドラマではなかった理由は何かあったのでしょうか。

 また私は米津玄師さんのファンでもあり、あの2つのドラマを見ていたきっかけも彼の音楽を主題歌にしたドラマだったからでした。「ラストマイル」の主題歌の「がらくた」を聞き返していて、「なんでこの曲だったんだろう」と思いました。ラストマイルのストーリーは確かに面白かったけど、この曲とラストマイルという映画はあまり結びつかないように思ったのです。

それに「アンナチュラル」の主題歌だった「Lemon」にも、「MIU404」の主題歌だった「感電」にも共通のモチーフとして「メロウなエンディング」という単語が出てきます。このメロウなエンディングとは一体どういう意味を込められたものだったんでしょうか。

一度ここで整理すると私の感じた疑問は4つです。
1なぜ、登場人物を絡むことなくストーリーを進行させたのか
2なぜ「ラストマイル」が2時間ドラマではなく、映画でなければならなかったのか
3米津玄師はどんな意図を持って「がらくた」を書いたのか
4結局「メロウなエンディング」とはなんだったのか

「がらくた」の歌詞

ぼんやりと「がらくた」を歌詞を見ながら聞き返しているとこんな歌詞がありました。

許せなかった何もかも全てを ずっとあなたを否定してきた
その全てを(LOST CORNERより歌詞抜粋)

この時に3つの作品に共通点があったことに気がつきました。思い出してください。
アンナチュラルにおけるミコトと中堂、
MIU 404における伊吹と志摩、
ラストマイルにおけるエレナと孔、
(ラストマイルにおける五十嵐と山崎)のいずれの関係においてもお互いを否定する、対立する場面があったことに。「アンナチュラル」では、中堂の赤い金魚探しにあたってミコトが中堂を激しく非難する場面がありましたし、「MIU404」でも志摩の過去に対して伊吹が志摩と対立するところがありましたし、ラストマイルでも山﨑のデータを消したエレナに対して孔が激昂する場面がありました。(山﨑の話でエレナが五十嵐につめよった時、五十嵐は山﨑に対する後悔を訴えていたのでかっこ書きで一緒に載せました)

 そしていずれのバディにおいても、その苦境を乗り越えた先に、信頼だったり仲間意識だったり帰属意識だったりそういうものが芽ばえるという描き方をしていたように私は捉えました。ここで3の米津玄師はどんな意図を持って「がらくた」を書いたのかが解決します。私が感じたのは、自分からしたら本当に理解できないような行動をとっている相手がいたとしても、その相手には自分を超える意図がある場合もある。だからこそ、合わない相手だと思ってしまっても、他人を想うことを諦めちゃいけないというメッセージでした。これがこれら「アンナチュラル」、「MIU404」、「ラストマイル」の中の根底のテーマなんじゃないかと仮説を立てました。根底のテーマがそこだったからこそ、共通のモチーフがなくても、一番深いところで繋がっているので主題歌に文字通りふさわしいものなのではないかと納得できました。

 そうすると疑ってくるのは、あのストーリーとして展開していたこと以外に何か別の目的があったのではないかということです。
 ラストマイルという言葉の意味を検索してみました。そうすると、映画でも出てきたように、『物流においてお客様へ荷物を届ける過程の最後の区間』と書いてありました。(『ラストマイル』映画パンフレットを参照)
 そこで2のなぜ「ラストマイル」が2時間ドラマではなく、映画でなければならなかったのかという疑問が解決しました。今見てきた「ラストマイル」の話や今までの「アンナチュラル」「MIU404」のドラマをみた視聴者に対し、その中で何をあなた方は受け取りましたか?私たちは届けられましたか?ということなんじゃないかなと。つまり、あの映画の上映時間自体、「ラストマイルという映画を見る」体験自体が私たちに製作陣から届けられた荷物であり、映画を上映する行為そのもの自体が「ラストマイル」だったのではないかということです。今までのドラマで視聴者に対して伝えたかったものを映画を通してどこまで届いているかを確認する、伝える「最終配送区分」という側面があったのではないでしょうか。

こう考えると1のなぜ、登場人物を絡むことなくストーリーを進行させたのかという疑問にも回答が出ます。「MIU404」のチームと、「アンナチュラル」のチームの人たちは、この「ラストマイル」を中心点とした無数にある道筋の1部のレールだったし、パーツだったから、交わっちゃいけなかったということです。もし私が望んだようにミコトと志摩が話してしまったらそれはこの2つのドラマには「関連性」や「共通点」があるのではないかというようなあからさまな意図違いのメッセージを観客に届けてしまう可能性があるからです。だからどの所属の人たちも顔を合わせなかったし、独立して仕事する場面が多かったのではないかと気づきました。製作陣がやりたかったのは、「ラストマイル、おもしろかったね」で終わってしまうことではなく、「めっちゃモヤモヤするんだけど、あれって一体なんだったの?」と体験という荷物を持ち帰って考えてもらうことだったのではないかと考察しました。「ラストマイル」はあの映画自体全てが舞台装置であり、私たちに当てられた荷物であり、その後で人々がどうおもったかを見ることこそが、映画として「ラストマイル」を制作しようと思った理由なのではないかと思いました。

結局「メロウなエンディング」とは一体なんだったのか

さて今までの疑問は「アンナチュラル」、「MIU404」「ラストマイル」の共通点についてフォーカスを当ててきましたが、今度は違いに目を向けてみましょう。時制で分けると過去、現在、未来の物語としてそれぞれ独立しているということができます。どういうことかというと、

アンナチュラルは死を悼み、現在に残された人々に対し希望を与えるための過去の物語でした。「MIU404」は事件を追いながら、1寸先の未来を変えようと足掻く現在の物語でした。ラストマイルは日々未来と戦う中で、手元にある現在を諦めまいと足掻く未来の物語でした。過去から始まって、現在、未来へと視点が移り変わっています。そしてこの3つとも、誰かの希望や生きる理由や欲望のために、誰かのために頑張っている人たちの物語と言い換えることができます。私はこの三部作は誰かのメロウなエンディングを彩るための、作るための、頑張ってる人達の物語だったのではないかと思いました。メロウとは英語の綴りで書くとmellowとなり、「柔らかい、やさしい、美しい、心に響く」というような意味合いがあります。(ジーニアス英和辞典、ランダムハウス英和辞典より意味抜粋)だからこそ登場人物がメロウなエンディングを迎えるための物語ではなく、誰かのメロウなエンディングを目指す物語だったんじゃないかと思いました。

終わりに

これはあくまで一視聴者である私が、疑問を追いかけた果てに自分なりに考えて考察したものであり、公式の見解でもなんでもありません。私は気づいてしまった考察を出すことこそが「ラストマイル」の製作陣に対するお礼になるかなと思ったのでこれを発信することにしました。私はこれですごくすっきりしたし納得したけど、そうじゃない人ももちろんいるかもしれません。そして疑問が湧いたものに対し、それを考え続けることこそが「ラストマイル」の楽しみ方の一つだと思いました。長々と考察を読んでいただきありがとうございました。

最後まで記事をご覧いただきありがとうございました!これからも頑張るのでよかったらジュース1本奢ってください!

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