映画「Gods and Monsters」に導かれた話
注意:映画の感想、考察記事ではありません。そこに至る導入の話です。
感想&考察は次の記事で書きましたので、興味ある方はそちらをどうぞ!
”何かに導かれてる”と感じることってありますか?
私は特別信心深いわけでもない。宗教は人が持つ不安、恐怖、苦しみを和らげる or 誤魔化す思考法を先人たちが体系化したもので、それが発展して文化になったり、その権威を利用して悪徳を行う道具になったりしてきたものだと思っている。
霊感もない。大抵は脳の働きが見せる錯覚だと思っている。
とは言いつつも神頼みはするし、墓参りもする。森に入れば木霊がいるような気はするし、それなりに楽しんではいる。
そんな私ですが、”虫の知らせ”のようなものはなぜか多い。
たまたま読んでいた新聞や本、見ているネットのサイトと同じ内容、関連するものが、スゴイ絶妙なタイミングでテレビでやりだしたりする。
何年ぶりかで考えていた人や物が突然現れたり。
虫の知らせというより”引き寄せ”と言ったほうがいいのかな?
(とはいっても宝くじみたいなのは全然なんですけどね(;^ω^))
最近「note」で、映画の感想文なんかを頻繁に書いています。
そんな中でいろんなものが引き寄せられ、結びつき、ある映画に辿り着いた話を今回は書いてみたいと思います。
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始まりは、コチラの記事で”ガスライティング”という言葉を知り、それは「ガス燈」という映画が元になってできた言葉だと知りました。
→「ガス燈」はジョージ・キューカーの監督作。「スター誕生」「マイ・フェア・レディ」などを撮った監督。
→ジョージ・キューカーはこの記事を書いた時にどういう人物か最近知った所でした。キューカー=ゲイ
→そして改めてジョージ・キューカーのwikiを読んでいると、「Gods and Monsters」という映画でも彼がゲイである描写があると書いてある。
→「Gods and Monsters」はJames Whaleジェームズ・ホエールという監督の晩年を描いた物語で、彼は1930年代「フランケンシュタイン」や「フランケンシュタインの花嫁」などを監督した人物。
→カニバリズム映画「BONES AND ALL」の記事で監督ルカ・グァダニーノやその脚本家のカイガニックがゲイで、子供の頃からホラー、モンスター映画が好きだったことを知る。モンスターの悲哀と自分たちを重ねていたのだろうと。
ジェームズ・ホエールも当時では異例のオープンリーゲイの監督だった。ここでゲイ監督とモンスター映画が繋がってくる。
→一方、映画「Everything Everywhere All At Once」の記事も書きました。アカデミー賞の演技部門をほぼ総なめにした作品ですが、主演男優賞だけは獲りませんでした。それを獲得したのはブレンダン・フレイザー。その彼の受賞作が「The Whale」。この映画も凄く気になっていて、前から予告編などを見て観たいと記事にも書きました。クジラの様に太った男、隠れゲイの男性の役だという。
→ホエール?ゲイ?「Gods and Monsters」はゲイ監督ジェームズ・ホエールの話。直接的な関係はないものの何なんだろう?この因縁めいたものは…。
→調べてみると、「Gods and Monsters」の監督Bill Condonビル・コンドンもゲイ監督。「Gods and Monsters」の前まではB級ホラー、モンスター映画っぽいものを撮っていた。
その後は「シカゴ」の脚本、「ドリームガールズ」「トワイライト」シリーズ、実写版「美女と野獣」、そして「グレイテスト・ショーマン」を撮っている。バンパイア、野獣、そしてフリークス(化け物)と言われる人々。キャリアを通してモンスターやマイノリティ、そして彼らの悲哀に焦点を当てた映画を撮ってることがわかる。
→加えて、最近松尾芭蕉がゲイだったという記事に書いたように、昔のゲイ文化人が、その先人ゲイに倣って自身の作品作りに反映しているということが非常に多い。それに気づいてからそれを非常に意識するようになりました。芭蕉は西行、西行は空海のように。
→このゲイ文化人による継承の流れは、ハリウッドのゲイ監督の中でも同様に行われていたことがここまで書いた内容で明白。ここも繋がった。
芭蕉にしてもこのコンドンにしても、メインストリーム作品として評価されてゲイ、ストレート関係なく楽しんでいる。
この脈々と続くゲイ文化の継承があることを意識しだすと、いままで見えてなかったゲイ・コンテキストが浮かび上がってくるのが面白いです。
ここまで来たら「Gods and Monsters」という映画がものすごく気になるわけです。この映画自体はモンスター映画ではない。それを作った監督ジェームズ・ホエールの話。
「Gods and Monsters」は1998年の作品。
当時レンタルビデオ店で並んでいたのは憶えてます。
評判もイイらしいというのもうっすら憶えている。しかし当時の私は全く興味がなかった。まずパッケージが怖そうな感じで、ホラー物はあんまり好みじゃない。老人ゲイに若者が狙われるホラー?そんなの面白そうか?と一蹴した記憶がある。ジェームズ・ホエールも知らなかったし、「フランケンシュタイン」の映画なんて古すぎて知らないよと。
出演者も当時の私には魅力がなかった。
イアン・マッケランも知ってたかどうか…。ハリウッドブロックバスターでよく見る俳優でもなかったし、ロード・オブ・ザ・リングでガンダルフする前。もちろん彼がゲイということも知らなかった。
ブレンダン・フレーザーは「ジャングル・ジョージ」でいい体した兄ちゃん、コメディ俳優?っていうイメージ。まだ「ハムナプトラ」でブレイクする前。
この「Gods and Monsters」の後に二人とも多くの大作に出るようになる。
(監督のコンドンもこれ以降メジャーヒット作品を多数手がける)
二人の代表作、「ハムナプトラ」は1999年、「ロード・オブ・ザ・リング」は2001年。
マッケランはこの作品でアカデミー主演男優賞にもノミネートされている。
(もう一つのノミネートはガンダルフ役。受賞はなし)
つまりこの作品が彼らのキャリア・チェンジャーだったと言えるわけです。
というわけで、マッケランが獲れなかった主演男優賞をフレイザーが獲った「The Whale」を観る前に、この「Gods and Monsters」は観ておくべき作品な気がして仕方なくなりました。
エ、なりません?私はこの作品に引き寄せられた、導かれたのかと思うほど強烈に観てみたくなりました。
そしてもう一つ見て観たい理由が。
ブレンダン・フレイザーがここしばらく低迷していたのはご存じだろうか?
それが今回「The Whale」でスポットライトに返り咲き、見事にカムバックしたという点でも話題になっているわけです。
(なんと助演男優賞のキー・ホイ・クァンとは1992年の映画「原始のマン」で共演していて、二人ともカムバックしたことを称え合ったそうです)
その低迷していた理由はいろいろあるのですが、アクション映画での度々重なるケガ、7回ぐらい手術受けたとか。母親の死亡。妻とも離婚。長男が自閉症。色々な原因が重なって鬱状態になったりしている。そして映画ほどではないが肥満にも。
そんな落ち込ませる理由の最も大きなものが、
2003年、ゴールデン・グローブ賞を主宰するハリウッド外国人映画記者協会(略称: HFPA)のランチ会に出た時に、当時の会長であるPhilip Berk(当時70歳ぐらい)に性的嫌がらせを受けたことだと。2018年、#Me too運動の頃に告発している。
“His left hand reaches around, grabs my ass cheek, and one of his fingers touches me in the taint. And he starts moving it around.”
(彼の手が伸び私のお尻を掴んだ。そして指の一つが蟻の門渡り(性器と肛門の間辺り?)に触れ、動かし始めた)
Taint=蟻の門渡りと解釈したけど、なかなかピンポイントで指を差し入れ難い気がするし、そんなところ触るのがちょっと意味不明。なので表現を和らげているけど、実際は服の上から肛門に指突っ込まれてグリグリされたってのがホントのところじゃないかと想像。
他の記事では”Grope”という単語がよく使われている。股間をまさぐられたと。でも股間を触られたぐらいでここまでショックを受けるだろうか?もちろん人それぞれだからそういうこともあると思う。でも布一枚でターザンみたいな役をやっていた彼。衣装直しで股間付近触れることもあったでしょうし、ちょっとオーバーリアクションな気がしないでもない。なので指ぐらい入れてこられたのかなと。
カンチョーして遊んでる男子ってまだいる?あんな遊びがある日本だと指ぐらいで何言ってんだ!って意見もありそうだけど、普通はショック受けますよね。
その場はすぐに手をはねのけて退出したそうですが、そのことで精神的に凄く落ち込み、社交の場に出るのも怖くなった。
そしてその事件以降、HFPA主催のゴールデングローブに呼ばれることがなくなり、出演依頼も激減した。それはハリウッドの権力者の1人であるPhilip Berkが、ブレンダンをブラックリスト入りさせたからだと疑っている。
告発を受けてHFPAは性虐待、セクハラは許されることではないと前置きしつつ、ブレンダンに対するセクハラに関しては事実と認める。しかしあれはジョークだったというPhilip Berkの発言を公表。そしてブラックリスト入りも否定し、人気の低迷とはHFPAは関係ないとした。
ブレンダンは納得できず、今年のゴールデングローブでのノミネートにも欠席。確執はまだ続いている。
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この性的嫌がらせ事件(2003)の前に「Gods and Monsters」(1998)は作られています。
そしてジェームズ・ホエールという70歳近いゲイの老監督と、ストレートの庭師の話。
この構図もPhilip Berkとブレンダン・フレイザーとの構図と似ている。
映画の中でも似たような場面があったりしないのか?というのも気になる。
又、最近この記事も書きました。
ジャニー喜多川氏によるグルーミングと性虐待問題。
奇しくも高齢男性ゲイによる性被害問題。映画の中のホエールもグルーミングの手法を使ったりするのかも気になる。
最近関心を持った問題全てが繋がり導いてくれた映画
「Gods and Monsters」
予告編だけじゃなく、
本編もyoutubeで見れました。日本語字幕はないですが。
「The Whale」を観る前に、あなたも見て観てはいかがでしょう?
「Gods and Monsters」の感想&考察はまた別記事で書きたいと思います。
追記:考察記事も書きました!
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「The Whale」を観ましたので、考察と感想記事も書きました。
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