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エゴン・シーレ in ウィーン
東京都美術館でエゴン・シーレ展をやっていますね。
少し前の日曜美術館でも特集してました。
noteでもシーレ展に行かれた方のレポや感想がUPされてました。
てっきりこの後各地を巡回するのかと思いきや、東京だけの開催なんだとか…残念。
ということで、私が2005年、もう18年も前(啞然)、にウィーンを訪れた時に見たシーレの話などを、現地で買ったポストカードを引っ張り出してきて、してみたいと思います。
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まずはオランダからヨーロッパ入り。
一番の目的のゴッホ美術館でゴッホを思う存分堪能。
アムステルダム国立美術館ではレンブラントの「夜警」の大きさに圧倒され、
森の中にたたずむクレラー・ミュラー美術館では、ゴッホを中心に個人所有の印象派の素晴らしいコレクションに驚き、
デン・ハーグにあるマウリッツハイス美術館ではフェルメール「真珠の耳飾りの少女」と見つめ合い、「デルフトの眺望」で往時のオランダを夢想し、
北欧、ドイツを巡って辿り着いたのがウィーンでした。
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Der Kuss 1908 / The Kiss 1908
Osterrichische Galerie Belvedere, Wien
ウィーンといえばクリムトです。
この「接吻」は超有名ですよね。
この絵を見ると、オリジナル・ラブの「接吻」もセットで脳内再生されてしまいます(笑)。
このクリムトの「接吻」が見れるんだとウキウキしながら出かけたのが、Osterrichische Galerie Belvedere, Wien です。
オーストリア・ギャラリーあるいはオーストリア絵画館と呼ばれ、オーストリア・ウィーンのベルヴェデーレ宮殿内にある美術館。
宮殿の一角が美術館として利用されています。↓
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ていうか、宮殿も過去の芸術作品そのもの。
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違ったらゴメンナサイ
たしか美術館エリアは上階、左手の奥の方にクリムトのコーナーがあったような気がします。
貧乏画家ゴッホが小さいキャンバスに描いていたのとは対照的に、時代の寵児だったクリムトの絵は背丈を越えるような大きなものが結構あった。
「接吻」も1.8 m x 1.8 mの大きなキャンバスに描かれた、見るものをいろんな意味で圧倒する力を持った作品でした。
画面を覆う金色。
パリ万博後のジャポニズムの流行で、日本の琳派の影響もあるんだろうな~とは思いつつ、中世の宗教画の金色使いも想起させる。
その神々しい宗教画のような空気を纏いながら、情熱的な接吻、エロスを描いているギャップ。刺激的であり挑発的。当時は物議を醸したに違いない。
さらに世紀末から続く不安定な世界情勢を反映したかのような退廃的なオーラも半端ない。
90年代頃はクリムト、結構流行っていた記憶がある。ノートの表紙とか、クリムトグッズが割とハンズとかロフトで売っていたような。
たぶん世紀末の90年代とクリムトの退廃感がマッチしていたんでしょうね。
もう一枚私が買ったポストカードはコレ↓
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Judith I., 1901 / Judith I., 1901
Judith and the Head of Holofernes
…ユディトとは〈ユダヤの女〉の意味で,象徴的性格の濃い伝説上の人物と思われる。この美しい寡婦はネブカドネザル王の総大将ホロフェルネスHolofernesの率いるアッシリア軍に包囲された町ベトゥリアを救うため,きらびやかに身を飾り,召使い女一人を伴って敵陣を訪れる。4日目に,ホロフェルネスが彼女を誘惑しようとして開いた祝宴の後,酔いつぶれた彼の首を剣で切り落とす。…
画面から見切れてますけど、手にホロフェルネスの首を持っています。
首切った後のこの恍惚の表情…サイコパス?自国民を救った英雄的行為を成し遂げた快感? 薬師丸ひろ子の「快感!」に近い感覚なんでしょうかね?www
ちょっとエラ張り、歯並びも良くはなさそう、クセあり過ぎる髪型…かなり個性的な女性なんだけど、このエロティックで退廃的、タブー感もありつつ、ものすごく華やかで目を引く。
その引いた目を捉えて離さないパワーのある絵、まさにファム・ファタールでした。
そうやってクリムトを堪能していた時に、
同じ部屋だったか、隣の部屋だったかでシーレの作品に出会います。
一番記憶に残ってるのはこの「家族」の肖像↓
幼子と若夫婦、しかし希望、明るい未来よりも不穏な空気を纏っているこの絵が気になったのでした。
シーレのことはクリムトの弟子で若くに亡くなった人物…ぐらいは知っていたのですが、この展示の説明書きか何かで、妻も早くに亡くなり、子供も(実際には妊娠中に妻が亡くなったので生まれていない)。
そして本人も夭逝し、不幸のどん底みたいな人生だなぁ…と興味を持つ。
この他にオーストリア・ギャラリーに展示されていたシーレの作品。
(どういう基準で選んだのか不明なんだけど、私が買ったポストカード)
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Eduard Kosmack 1910 / Eduard Kosmack 1910
コズマックという男性の肖像画。Publisherだから出版社の社主なんでしょうかね?シーレのパトロンだった人物なのかも?
何といっても目力の凄さ!! 漫画の悪役キャラにいそうな感じw
コチラの少年の肖像画も凄く漫画のキャラっぽい。
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Rainerbub(Ausschnitt 1910 / Rainer Boy(Derail) 1910
子供特有のかわいらしさと悪魔的な部分の二面性を見事に捉えているな~と思った。妖怪人間ベムのベロっぽい?オイラ、怪しいもんじゃないよ!www
また服装が独特。男性ソプラノの岡本知高さんが着る衣装みたい。
he made designs for men's clothes, for women's shoes, and drawings for postcards
実際、男性物の服、女性用の靴、ポストカードのデザインなんかもこなしたそうな。確かに、デザイン性高いし、画家だけどちょっとポップで現在のイラストレーターに通じる所ありますよね。
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ということで、
オーストリア・ギャラリーでシーレに凄く興味が湧き、レオポルド美術館にはもっとシーレ作品があるということで、訪れてみることにしたのでした。
(レオポルド美術館の外観はモダンなビルという感じで、そこまで特徴がなかったので写真は撮ってなかったです)
今回日本に来ているのも、そのレオポルド美術館の作品群ですよね。
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Selbstbildnis mit Judenkirschen / Self-Portrait with Chinese Lanterns 1912
今回のシーレ展、ポスタービジュアルにもなってる
「ホオズキの実のある自画像」
シーレの自画像、いろいろ問題起こして貧乏だったというのもあるけど、この人は強烈なナルシスト気質がありそうだな~ってのが伝わってくる自画像ばっかりwww
そういう人と実際に関わると面倒くさいことになりかねないけど、他人事として聞くと面白い。その生い立ちや性格がどう作風に反映されたのか、より分かってきますしね。
このホオズキの自画像も、何とも言えない表情、ホオズキという珍しい題材、そして美輪さんが着てそうな三宅一生のプリーツプリーズみたいな服。
そしてジョジョポーズみたいな体のひねり&捻じれもシーレっぽい。
こちらは割と素直な感じの自画像。
これもスゴイ日本のマンガのキャラにいそうな絵柄。オシャレ系の少女漫画とかね。
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Selbstbildnis / Self-Portrait 1910
Arthur Roesslerという作家。彼はシーレの擁護者でもありプロモーターであった人物で、シーレのことをこんな風に描写していました。
印象的な外見で有名な男性たちの中でも、シーレの変わった外見は際立っていました。背が高く、スリムでしなやかな体型、狭い肩、長い腕、長く骨ばった手をしていた。 彼の顔は日焼けし、ひげがなく、長く黒く手に負えない髪に縁取られ、 広くて角張った額には、水平の皺が刻まれていた。
彼の顔の特徴は、基本真面目、且つ殆ど悲しみに満ちたものだった。まるで内側に向かって泣きそうになるほどの痛みによってもたらされているように。
彼の簡潔で格言的な話し方は、彼の外見のイメージそのままであり、明らかに自然で偽りがなく、より説得力を持って内面が高潔である印象を作り出していた。
まさしくそんな感じ!!ここまで丁寧に人物描写するのって最近あまりないから、昔の人は画像や映像がない分、言葉による表現力が半端なかったんだなと感心しちゃいました。(←感心するとこ、そこッ?w)
でもシーレの目について詳しく述べてないのが気になる。
彼のこの「目」ほど惹き付けられるものはないと思うわけです。
怒り、悲しみ、世の中への不満。そういったものを湛えつつ、それを目の前の相手に直球で投げつけてくるような眼光。
「お前はそれでいいのか?」と問いかけてくるよう。
レオポルド美術館には師匠クリムトのコチラの作品も展示されていました。
『死と生』
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Tod und Leben 1911/15 Death and Life 1911/15
1.78 m x 1.98 mと、コチラも結構大きい作品。
クリムト独特の抽象的な模様の繰り返しで服装や空間を埋める所は「接吻」の頃から変わっていませんが、あの派手派手な金の装飾がなくなり、人物の肌の質感とかはどことなくシーレに寄った気がするのが興味深い。
これはシーレがこのクリムトのスタイルに影響を受けたのか?
それとも「才能が有り過ぎる」と、シーレを称えたクリムトが弟子から影響を受けたのか?どうなんでしょうね?
シーレも「死と乙女」という絵を描いている。
当時流行していたスペイン風邪で二人とも亡くなるわけで、それほど「死」が見近に感じる時代だったんでしょうね。
シーレは父親を梅毒で亡くしているし、貧乏だからモデルを売春婦たちに頼んでいたし(彼女たちこそ梅毒罹患の影響が最も高い人々)、虐待、家出した子供もモデルにして猥褻な絵を描いていたということで入獄される。そこでも「死」について考えたと思う。
絶えず「死」に飲まれそうになりながらも強かに生きてきたシーレが、結局「死」に飲まれてしまう。この悲劇性もたまらないものがあります。
といっても、彼は結構好き放題やって生きた感じはあるので、同情はそんなにすることないwww
妹と近親相姦、師匠クリムトのモデル兼愛人?と付き合ったり、支えてくれた恋人捨てて別の女と結婚、そしてその姉妹とも関係持ったり…まさに退廃を地で行っている。
数年前に映画も作られました。
ちょっとシーレ役の俳優さん、イケメン過ぎる気もしないでもないw
もうちょっとヤバイ感じある方が良かったけどな。
実物はミスタービーン味ある感じですし(;^ω^)。
あとシーレの風景画も、人物同様ウネり&ヒネり感があって面白いです!
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Der Hauserbogen "Inselstadt" / House Arches, "Inselstadt" 1915
ジョジョポーズみたいにクネクネしてたら、好きな景色もクネクネしたところに目が行くようになるんですかね?www
とにかく短い人生だけど話題に事欠かないシーレ。
猥褻さ、退廃的、でもどこか現在に通じる新しさもある。
そんなシーレ、是非実物を美術館で見てみてください!!
最後にクイズ!!
下の絵はシーレ、クリムト、どちらの作品でしょうか?
知っている人にとったら簡単すぎるでしょうけど、私はちょっと迷ったので(;^_^A 答えは下の方
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GUSTAV KLIMT
Allee im Park von Schloβ Kammer / Avenue in Front of Schloβ Kammer, 1912
ということで、クリムトの作品でした。
ウネウネした枝と、樹皮の感じがシーレっぽいと思ったんですけど、全体的に明るい印象は確かにクリムトだな~と。シーレはこんなに明るい画面の絵はあったかな?ほぼ無かった気がします。