広告物の価格とかいうものの中身をひも解いてみた。
どうも、ベテランデザイナーのはしあやです。
実は会社案件では結構な金額の案件を回したりもしていたことがあるのですが、それと反して個人請けの案件がそりゃもうひどい値段設定で請けていたりします。底辺の域よりひどかったので、業界の皆さんに謝らなくてはいけないかもしれませんが、本当に地方でやっていく場合は「会社の看板」って重要です、看板欲しい…作るしかないか…?
もともとは会社員での副業のつもりでお小遣い稼ぎ気分だったこともあり、「会社内だけだと腕が鈍るから」「儲けは原価あればいいかな、最悪はお茶代くらい稼げればいいや」くらいの奉仕案件ばかりをしていたのでその時の地獄の案件をご紹介。
ただし、年収が半減した今はそうは言っていられません。
色々考え直さなくては。。。
スーパーの裏方でバイト生活が始まってしまう危機。
広告物の価格設定
ところで広告物って高いですよね?
目にしたことがあっても、その中身がどう動いて出来上がっているのかを知っている人はあまりいないでしょう。まずはそのお話。
一般の制作会社だと、ざっくりだと・・・。
[Webの場合]
・営業費用(ここがない会社も結構あります)
・ディレクション費用(これも含みの会社も…)
・提案費用(ディレクションに含む場合やコミコミの場合も)
・デザイン費用/パーツ作成費用/修正費用(IT系なので工数管理で計算されることも多い)
・ワードプレス用設計は別料金多し
・システム構築費用(場合によりあり)
・写真費用(撮影or素材)※提供の場合はなし
・映像が必要ならその費用
・サーバ関連設定費用(これ含みの会社多い…)
・納品後の定期メンテナンス月額契約
[印刷物の場合]
・営業費用(ない会社も多少はある…でも大体はある)
・ディレクション費用(営業が兼任の場合も多い)
・提案費用(小規模案件だとなしの場合も多い、大規模なら必須)
・デザイン費用/パーツ作成費用/修正費用(デザインはなぜか無制限一本勝負の場合も多く、基本は数回あることが前提、しかも追加も度を超えない限りはニコニコ無料で対応が基本)
・校正/校閲費用 ※基本無料、大規模案件の場合は専門会社や専門の人に頼むので必要、でもクライアントは費用を見せると嫌がる傾向
・印刷費用(外部へ入稿の場合は入稿手数料というはした金のみ)
・写真費用(撮影or素材)※提供の場合はなし、ただし補正作業は発生、社内カメラマンでむりやり済ませる場合や、先方指定のカメラマンが言うことを聞かない場合もあって面倒くさい
・映像が必要ならその費用 ※なぜかデザイナーに無料で撮れと言ってくる無茶なクライアントもいる
ざっと見ても、印刷物のほうが費用としていただけるものが少ないのは明白だったりしますので、お仕事としてはWebの方が主流になるのも当然でしょう。
大体、趣味の人と違うのが「ディレクション」や「提案」の部分に加えて、「写真や動画の素材」の箇所が一番違ってくるところになります。
ある日起こったお話
いつも頂いていた広告物のお仕事が「最近来ないな…」ということがありました。
今までも、やりとりをしている最中にそこの会社の方でお一人、すごく口出しをしてくる方がいて、その方が「自分もIllustratorを使える」と何度もおっしゃっていたのを聞いていました。指示書もその方が送ってくる場合は、Illustrator上に貼り付けられていて、しかもレイアウト済になっていてそのとおりに1度は作らないとこちらが疲弊するほどのクレームが来ていたという方でした。
なので、できれば避けたいモンクラ案件には違いなかったのでホッとしていたのですが。。。
毎回、大幅な修正が入ってその方の作ったレイアウトがあとかたもなくなってしまっていたのですが、どうやらそれが気に食わなかった様子。
なお保身のために言っておきますが、そこのトップからの要望も色々言われまして。要約したところ、
担当者「自分のほうが会社の実情も要求もわかっているし、少しソフトを使えるからいいものを作れている、手直しは少しの調整で構わない」
経営者「担当者が出してきたものは成果が出ない。仕方なくプロと言うお前にわざわざお金を払って依頼するのだから、条件も要望も提示しないし聞かれても答えられないけれど、初回で有名企業のようなハイレベルのもので、なおかつ自分の好みのものを頭の中でぼんやり考えているから、その通りに想像して作って提出しろ」
という。これを「想像で」合わせて行きつつ、成果のでる広告物を作るという苦行を結構多くやってきています。
ある日、いつも私が作っていたのを知っていたその会社の取引先の方から「今回の広告、これ何です?はしあやさんまさか作ってないですよね…どうしたの?」って連絡があり発覚したのです。
何を伝えたいのか全くわからない広告物がそこにありました。
これでどう売上につなげるんだろう・・・?
「あちゃー」とは思っても、私からどうということは言えませんし、私自身がこの広告物よりも「不要」とみなされたということですから仕方ありませんでしたが、結構凹みました。少なくとも私に依頼いただけていればこんなレベルのものは作っていなかったです。
とりあえず「今回、私は一切絡んでいないですよ」と伝えたら連絡してきた方は納得されてました。
しばらくして、その会社の別の担当者さんから連絡が入り、その広告物についての『相談』を受けました。
別の担当者さん「あの人ベテランなので誰も何も言えなくて。どうしてもって聞かなかったから一度作らせてみたらやっぱり全く売上に上がらないどころか、今までのお客さんからクレームまで来てしまった。申し訳ないが早急に全部おまかせしますので、これの内容を全部リニューアルしてもらえませんか、もうあの人には何も言わせませんと社長から了承も取っていますので!」
おおーぃ\(^o^)/
やり直しましたよ、1日で。
なんか後日聞いたところ、前より良くなったということでまた継続で依頼できないかという話しがありました。
なお、前の担当者さんを外すという条件を先方から頂いた状態でお話が戻ってきましたが、その後で私がその会社辞めちゃったので案件が再度なくなったらしいけど・・・それはシラン。
何が違っていたのか
まず、私が広告物を作る際には、「目的」「ターゲット」と「会社としての広告の方向性」を確認しています。
他には「必要な素材」や素材が用意できなかった場合の予算内でできる対処方法など、でしょうか。場合によっては機材をレンタルしてきたり、外部のカメラマンや印刷会社などに見積もりを取って予算に合わせるために裏で結構連絡しまくったりという時間がかかっています。見積するだけでもこの工程がかかるのです。
ここまでやってから、ラフを上げたり原稿の文字量のすり合わせなどを行って初めて、「デザイン」に入れるようになります。
おそらくですが、初心者や入社したての人を見てきた限りでは、大体がこの準備段階は経験していないのですっとばします。
・依頼があった
・何をつくりますかと聞く
・文章とか素材をもらう
・いきなりデザインする
これでは、町内会のチラシや趣味仲間の集いなら構いませんが、利益に直結する広告物ではご法度です。
クライアントの目的に沿ったものが作れているかどうかは怪しいものです。
偶然合致したものが作れることもありますが、クライアントはお金を出して広告費を捻出しています。高いお金を出してガチャ要素のある(未経験や趣味の)デザイナーに頼むメリットは・・・どうなんでしょうね。
1万円でガチャ要素(8割か9割はずれ)
5万円で売上につながる効果のあるもの
だったら、どちらを選んだほうがいいかという話ですが、これを「1万円」を選んでしまうクライアントさんも多いので厳しいなぁ、とは思います。
話では、1万円ガチャを引いておきながら、当たりが出るまで無料でやりなおせ!なんてことを平気でいうクライアントさんもいるらしく、初心者デザイナーさんから泣きつかれたこともありました。
※この時はやっかいなクライアントさんだと思ったので「5割引の2万で受けますが、基本はこちらベース、修正は文字校正のみで一切受けないし、次からは正規で依頼してください」と言って収めましたが、やり直し修正はしつこいくらいに毎日連絡が来ていました。そして「高い高い」を連発された挙げ句、二度と依頼はこなかったです。
念の為、そのデータを頂いてすぐに修正にかかりましたが、これがまた・・・他人が作ったデータから、しかもディレクション部分も含めてすべてやり直しというのが一番やっかいです。
偶然にもこのクライアントさんは以前からお取引があったのでなんとかなりましたが、そうでなく一見さんでデザイナーに効果UPのための全面リニューアルを依頼する場合は、少なくとも「ヒアリングの時間」はきっちり取ってください。そのヒアリングに従って内容をまとめてくれるはずです、プロなら。
ちなみに、やり直しでクビ宣言をされた初心者デザイナーさんですが、ちゃっかり自分の取り分の1万円は請求してもらっていたようです。
そしてその会社さんは「最初のデザイナーに1万支払ったから、今回の案件は2万円のもの。あなたには残りの1万円を払います」と言われてそこそこ揉めました。もう二度と来ないでほしいし、その初心者デザイナーさんとも切りました(今は違う仕事してかなり稼いでいるそうです)。
それでもいきなりフリー案件にチャレンジすることが大切?
そのチャレンジのリスクをすべて自己責任で負えるならOK。
もしくは、できる範囲でのチャレンジならOKでしょう。
でも、できる範囲がどこまでかわからないので、とりあえず何でもいいからチャレンジしてから、失敗したらそれはそれで謝ればいいか、と考えているならちょっと待って!と言いたい。
最悪、タダ働きになることもありますし、成果物のデキが悪すぎてタダ働きにさせられたと言っていた素人さんも何人か知っています。
さらにその尻拭いを格安でさせられている私のような人たちも。
あとは怖いことに「学生だから」「授業で忙しくてできなかったから」「難しくてわからなかった」「そっちから修正して欲しいという指示や締切がなかった」ということを口に出す人も実際に見たことがあります、しかも学生でフリーランスもどきをしている人に何人も。ちゃんとしている人達の評判まで落としかねない行為です。
お金もらう限りは「仕事」です。その時点でお客様はプロだと思って接していますから言い訳は通じません。
ネット上では「○○さえできれば簡単に稼げる!」という、甘い言葉が横行していますし、自分に都合のいい言葉しか信じない人も増えているようです。厳し目の現実を書いている記事は読まないし、厳しいことを発言している人に対して「夢を壊すのはひどい」「老害」等の言葉を言っている人もいます。
簡単に稼げる!という言葉を書いている人の目的って何か?
その後、詳しい情報に結構なお値段ついてませんか?
中身読んで本当に実践に役立ちましたか?
精神論しか書いてなかったりしませんか(苦笑)?
チャレンジすることは大切です。でも、他人に迷惑をかけてまでするチャレンジってどうでしょう?
だから、今長く続けている業界の人やフリーランスの方々が「まず就職して修行を積んでからフリーになる道順が一番」と言っているのでしょう。
会社員だったら先輩方のチェックもあり、なにかあった際の責任は個人ではなく会社にいきます。会社側も、そのミスが生じないように防御策を講じてくれます。それらが「ミス対応の経験」であったり「厄介なクライアント応対の経験」になり、フリーとして働く際に役立つものとなるのです。
ただ会社のつながりでクライアントゲットするため、だけじゃないんですよね、会社に所属するっていうことはそれなりにメリットが多々あるのです。
とまぁ、私はどちらかというと「厳しめ」のことを言っています。
これが現実でもあるので、先に「あるかも知れないトラブルを知っておくことも大切」ではないかな(ダメージがちょっと少なくなる?)…という老婆心の記事でした(笑