ChatGPTとデザイナーの関係性(1)
noteを書くのは久しぶりです。
さてそんな中ですが、最近SNS上の業界内で大騒ぎの「ChtaGPTが有能すぎて、デザイナーの仕事を奪ってしまう問題」について。少々実験(2023年5月現在)してみました。
ChatGPTとは一体何者か?
「質問したらAIが答えてくれる」
すっごくざっくりと回答するならばこれに尽きる。
今までは『知りたいこと』については 「自分でキーワードを考えて」 そのキーワードに沿って出てきた検索結果から 「自分で選び出すこと」 が必要だった。
主にそのキーワードを考えられなかったり、どうすれば最良の検索ができるのかが思いつかない、または検索結果の真偽検証の方法がわからない人などにとっては、「調べれば?」の一言は苦痛に近かったそうだ。
それが、ざっくりと質問したらまるで某質問系掲示板のように文章で回答してくれるではないか。しかも、人間が回答しているのと違って「そんなことも知らないの?」的な見下し系や揶揄する回答、または遠回りでの比喩的表現での回答などが来ることはない。
欠点を上げるとすれば、まことしやかに文章としての回答が来るため「その真偽は一切不明なのにそれっぽく思ってしまう」ので、間違えた答えでも受け手の判断力次第ではそれが「真」と思い込んでしまう危険性があることと、「インターネットやその他データ上にないものについては回答できない」こと、そして「正しい質問をしないと質問者の裏の意図までは読み取ってくれることはない」ということだ。
ここまで書くと、私としては結構危険と感じざるを得ない。
AIの高性能さへの恐怖ではなく、人間の手抜きから来る劣化について、だ。
AIが人間の仕事を奪うらしい
さて、ここまで書いてみたが、昨今はSNS上で「デザイナーの仕事を奪ってしまうほどの高性能」ということで、戦々恐々としている人々が多い。今後は「デザイン自体」はAIが行い、AIではできないアイデア出しや統括、プロデューサーやディレクター的な動きができる者だけが生き残る、なんて物騒な結論を話す人も出てきた位である。
ただし、ちょこっと前からChatGPTは調べ物にこそ使いはするものの、リアル世界では多種多様な工夫と他システムとの連携を行うというほどはまだ浸透しておらず、一部のSNS上にいる「情報強者」が使いこなして周りをあっと驚かせているというのが現状だろう。
しかしここで放置していてはIT系の端くれの端くれの業界にひっかかっている底辺としてはヤバイということで、ちらほら使って試しては自分で判断を広めているという情況だ。
デザインにどう活かすか
どう使っていくのが正解か?
そう、私の職業はあくまでも「デザイナー」である。
たまにプロデューサーだったりマーケターだったりディレクターだったりの要素を含んだ仕事も行ったり、業務改善のための相談に乗ったり企画を立てたり等、結構いろんなことにチャレンジさせて頂いてはいるが、メインは「デザイン」としてのアプローチからお客様とつながることが大半なので、今回はChatGPTをデザインに今後どのように活かすかを考えていきたいと思う。
アイデア出しに使えるのでは?
一番よく聞こえてくるのがこれ「アイデア出し要員」に使う方法である。今までだと人海戦術で、ベテランから新人までその場にいる全員で一斉に何案も出してはミーティングで精査を行い、数回の案出し〜ミーティングを経て初めて良い案、数案を提出していく・・・というのが基本的なフローでもあった。
ところが、弱小〜零細制作会社でデザイナーが数人だったり、はたまた個人の場合などは自分1人(+アシスタントさんや協力パートナー)だったりで動かしている場合、仕事の効率性を考えても案出しの初期の初期段階なんかは完全オリジナルでも出すが頭の整理をするために検索して競合調査やアイデア出しの時間を相当に費やしている。
どういう形式でデザインを出せるのか?
色々調べると、他ツールとの連携で作成することが多く、単体ではやはり「文章」での回答となるようだ。
ためしに画像をどうにかできないかと思って指示を行ってみる。
な、なるほど。まずは「有料化→ChatGPT Plusを使えるようにする→GPT-4の選択」をしないと画像が出てこない仕様かもしれない。だが今はまだ検証しているだけなので、ひとまずこのままできることはないか検討をしてみる。
画像がダメなら文章で?
ということで、文章で説明をしてもらうことにした。
う、うん・・・。
なるほど。
これは・・・「お客様のざっくりした要求レベルそのまんま」を返してきたご様子である。
まず、これを元にデザイナーに指示をだしたところで、
・淡いピンクとは何色?
・茶色ってどの色?
・英語の文字ってフォントは?改行位置は?
・そもそもサイズは?
・その中にというのは、ドーナツの中?それとも空間の中?
くらいの質問が飛んできそうなほどのざっくり具合である。
もしこれがディレクターの口から出たとすると、かなりのギスギスが始まってしまうようなレベルの指示だったりもする。そもそも、最初にこっちが言った内容をなぞってちょこっと変えただけで、アイデアらしきアイデアにはなっていないのである。
質問を繰り返して精度を上げる!
どうやらChatGPTというのは、質問や指示(これらを総称して呪文と呼ぶ)によって結果が変わるが、その手前の結果に修正を加えていって調整できるらしい。
ということで、さらに質問を加える。
う、うん・・・。
なるほど、結構「額面どおり受け取って全然融通が効かない人」の反応ベースのような回答がやってきた。しかも「グラフィックデザイナーを使え」とキタ。要は、自分で作れや!ってことになるのだろう(私はグラフィックデザイナー)。
ここで「察しのいい人」だった場合は「SVG形式で作成して」と言われると「なるほど、SVG形式か。自分は文字しか出力できないので、SVG形式でのコードを出力して渡せばいいのだろう」くらいまでは判断してくれますが、そこはAI、人間ではないのでそんな裏事情まで察して読み取ってはくれません。
※とは言え、人間でも上記の回答を出してくる人もいるのは確か
下手(したて)に出ないといけない
そう、ちゃっとじーぺーてーちゃんは日本語の裏は読み取ってくれない。
理解できるように具体的な指示ができなかったこちらの落ち度なのだ。
てことで、こう言い換えました。
あ、あかん、これでもダメだった。
しかもその「詳細な指示」、実に意味不明。
というのも、指示先は「グラフィックデザイナー」なのですが、指示内容は明らかに「コードを理解した人」向けなんですよ。
AIの中では理解できるであろう「コード」ですが、グラフィックデザイナーは基本的にはコードは扱いません(※扱える人もいますがここではそういう意味では使ってません)。
そう、やはり「リアル世界での『察する』」部分についてはかなり弱い、というかそういうのは考慮してくれないというのが正しい表現かもしれない。
グラフィックデザイナーの「察する力」
実はグラフィックデザイナーは、Webデザイナーの方々から「感覚で仕事をしている」と言われることがあったりする。
実際には美術理論や経験を積んだ上で、さらにデータで作成する場合には決められた細かいルールに基づいて基本的なベースは守っているのですが(※中にはそこ守ってないか知らずにやってる人もいなくはないが今回はそういう話ではないので割愛)、「察する」部分や「感覚的に感じ取る部分」は意外と大きく持っている人種のほうが適している職種かもしれません。
例えば、データ上ではこうでなくてはいけない、となっている場合でも、エンドユーザーから見て言葉にできないレベル、人間の生理的に持っている微細な「気持ち悪い」だったり「味気なさ」だったりの部分をちょっとずつのバランスを取って「見て気持ちいい」に引き上げるのは、理論やらルールやらを超えたところにあったりもする場合があり・・・。
まぁそんなだからこそ、こういう緻密なものとの「違和感」はいつまで経ってもなくならないというか、なんというか。
ひとまずコードで出してもらうか
脱線しましたが、ひとまずさらに言い換えてみました。
さて、このコードをコピペしてテキストエディタへペースト、svg形式として保存した上で、Illustratorで開いてみるとしましょうか。
<結果>
なんでやねーーーーーーーん(泣)!!
どこがドーナツ?
茶色はどこ行った?
そもそもオレンジは茶色なのか?
思いっきりセンター真っ黒なんですけど?淡いって言ったよね?
あと、そもそも英語の文字がはみ出てるしー!
をい!!!!!
明るく親しみやすさ・・・。
もう一度チャレンジするか
※一番左の縦線は無視してください(キャプチャミス)
黒は使うなと言ったのと、文字をセンターの円に収めてほしい、フォントをやわらかくと言ったがここは無視・・・。
ぬーーーん。
呪文が違っていたんだろうとは思う。
だが・・・駄菓子菓子。
ちょっとこの精度ではまだまだ扱えなくて・・・そう、結論としては、
「グラフィックデザイナーを使ってください」
ってことになるらしい。つまりは、「自力で作れ」という。なるほど。
ChatGPT単体ではまだまだデザイナーの領域は超えてはいないようです。
ただ、他のお絵描きAIツール等はIllustratorさんの領域は使い方やその人の画風によっては指示だけでなんとかできるようにはなってきていますし、その進化も早いので、動向だけはきっちり見守っていく必要はありそうだなとは思います。
ただ、「日本人の仕事の進め方」もついていかない限り、今日明日でなんとかなるって話ではなさそう。うまいこと波に乗らないといけませんね。
ひとまず、この実験は何度か行ってみようと思います。