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日系企業20年以上のキャリア-米国で学んできた仕事のリアルと異文化理解の重要性【インタビュー記事】

アメリカで働くことに憧れを抱く人は少なくありません。特に、多様性に富んだ環境での仕事や、アメリカならではの職場文化に興味を持つ人も多いでしょう。しかし、実際にどのような違いがあるのかは、まだまだ未知の部分が多いのではないでしょうか。

今回、アメリカに30年以上住み、22年間にわたり日系自動車部品メーカーに長く勤められている日系アメリカ人のH.Yさん(53歳)に個人インタビューをさせていただきました。

インタビューではアメリカで日系企業において長年キャリアを積む中で、多様な人種のビジネス・パートナーと関わってきたご経験をもとに、体験談をお聞かせいただきました。


Q1. まずは簡単に自己紹介をお願いいたします。

私は現在、アメリカ・デトロイトに支社を置く、日系の自動車部品メーカーで働いています。34年前にアメリカに渡り、22年以上のキャリアをこの会社で積みました。

最初は西海岸のサンディエゴに住み、現在の会社のアメリカ・メキシコ工場でマネジャーを務めていました。8年前にデトロイトに引っ越し、現在は自動車用ヒューズ部門のマネジャーを務めています。

Q2. どうしてアメリカでのキャリア形成を選んだのでしょうか?

若い頃から、アメリカへの憧れが強かったです。特に80~90年代のハリウッド映画やアメリカ文化、西海岸の雰囲気に影響を受けました。日本の大学進学を勧める両親や高校の先生の意見を受け入れず、「アメリカに行く」以外の選択肢は考えませんでした。

語学学校を経てコミュニティカレッジに進み、その後、サンディエゴ州立大学(San Diego State University)に編入しました。大学卒業後、プラクティカルビザを取得し、1年以内に仕事を見つける必要があったので、就職活動に大変でしたね。そして幸運なことに、現在の会社に入社できました。

Q3. アメリカでの職場文化において、最も驚いた点は何でしょうか?

アメリカの職場では、自己主張が強い人が多いことに最初は驚きました。現地でのビジネスマンはプロフェッショナル意識が高く、話し方は通常、フランクで対等な話し方が好まれます。

お客様といえど、関係は対等であり、日本の様に「お客様は神様」みたいな発想はありません。そのため、アメリカ人との商談の場に置いては、あまりへりくだった態度は必要はなく対等な立場で話せます。

日本人にとっては、アメリカハリウッド映画やドラマでこの事を知っていても、肌感覚で体験すると最初は少しびっくりする場合もあると思います。

Q4. 文化の違いが、仕事の進め方や結果に影響を与えたことはありますか?

日本人は、会議での準備や議事録の作成、アクションプランのフォローアップなどしっかりしています。しかしながら、ときどき前例に囚われすぎたり、分析に時間をかけすぎて行動に移せない場面があるのです。

英語でいうところの、「analysis paralysis(分析のまひ)」と呼ばれる現象に陥る場面を何度か見かけます。大きな失敗はないけれども、逆に大きな飛躍(成功)もしないといったときもあります。

Q5. 異文化理解が進む中で、自分の考え方や価値観がどう変わりましたか?

アメリカに住むことで、私は「オープンマインド」を持つようになり、視野が広がりました。例えば、日本人やドイツ人は約束を守ることでよく知られていますが、アメリカでは地域によって気質が大きく異なります。

西海岸の人々は比較的に表面的な付き合いをする傾向があるためか、社交辞令的な約束をして、それを守らない時があります。すぐに仲良くなった様になったと思っていても、深い関係にはなかなか至らないと感じました。

それに対して、中西部の人々の第一印象は少し冷たい印象ではありますが、約束事は真面目に守ったり、比較的生真面目な印象をもちました。

このように、アメリカに住むことで地域や文化の違いに順応する必要があり、アメリカ人に対しても考え方が少しずつ変わってきました。

Q6. 過去から現在を振り返ってみて、アメリカで働く上での課題は何でしょうか?

これまでを振り返ると、アメリカで働く準備段階としての課題には、ワークライフバランス、高額な医療費負担に対する保険の確保、雇用の安全、外国人労働者にとって複雑なビザと入国管理システムに対ししっかり準備することだと考えています。

また実際の仕事面においては、「自己主張をすること」が非常に重要です。自己主張を控えていると埋もれていってしまいがちなんです。特に会議の場では、活発に発言することが求められます。会議のシーンでアメリカ人の数が多い場合には、意見が多く飛び交い主張しているシーンを見ています。日本人同士の場合にはその真逆なんです。

ただその中で上手にリーダーシップを図る人がいます。そのような人たちは、高圧的に言うのではなくて、良く相手の話を聞き良い質問をする人たちがリーダーになることが多いです。

Q7. リーダーとしての役割を果たす際に直面した課題は何でしょうか?

リーダーとして直面する課題は、「各メンバーに合ったアプローチを取ること」です。

誰もが同じニーズや性格特性を持っているわけではないため、各人に個別のサポートとコミュニケーションを提供することが重要です。

これには、各メンバーを効果的に導き、モチベーションを高めるために、彼らの長所や短所、動機を深く理解する必要があります。個別のアプローチとチームの全体の目標のバランスをとるのが最大の課題です。

また、平等かつフェアに接することが基本ですが、状況によっては柔軟に対応しなければならない場面もあります。すべての社員が働きやすい環境を整えるために、管理職として常に工夫し続けることが必要です。

Q8. リーダーシップにおいて学んだことはありますか?

リーダーに対して求められることでよく言われることが、「判断力」です。判断が遅れるとチーム全体に悪影響を与え、仕事の進行が遅れてしまいます。

私は、時には完璧を求めすぎず、迅速かつ適切なタイミングで決断を下すこ
とが重要だと学びました。

「あーすれば良かった、もっと別の工夫した伝え方をすれば良かったと思うのが毎日ですよ。反省していない日が少ないくらいです」。

反省してばかりでは限りがないため、「どこかで気持ちに対し、線引きをしなければならない!」と考えるようにしています。

もし、判断に悩み戸惑っている上司がいると、部下がなかなかついてこないと思います。スピード感を持って判断することがリーダーシップにおいて大切であり、そこが難しいところですね。

Q9. ワークライフバランスを保つために心がけていることは何でしょうか?

適度な運動や家族、友人との時間を大切にすることです。仕事は、長時間にわたってパソコンに向き合っているため、健康への影響は避けられません。そのため、「意識的に体を動かし、リラックスする時間を取る」ことを心がけています。

実際、私の労働時間は平均12時間ですが、早く終わる日は10時間で済む場合もあります。週末にも仕事をすることが多く、バランスを取るのは簡単ではありません。

Q10. アメリカでのキャリアや働くことを考える若い世代に向けたアドバイスをお願いします。

「好きなことを見つけ、それを簡単に諦めないこと」が最も大切だと思います。アメリカでの生活や仕事には多くのストレスがありますが、自分の好きなことに打ち込むことで、それが大きなモチベーションにつながります。

いろいろなストレス要因があるから、それを自分で解決する方法を見つけなければいけません。何か好きなことに打ち込むことや、好きなことを諦めないということは結構大事かなと考えています。


今回、H.Yさんに時差のあるなか、Zoomでお話を伺いました!
H.Yさん、誠にありがとうございました。


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沖志乃 義人
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