門下生作品講評【No.10】
◉札幌発寒教室 小野里裕子さん
『零和』
前回に続いてこちらも
「一本二色」の技法を使ってますが、
こちらはその技法で書いた線は
完全に「模様」として構成しています。
それにしても
ここまで綺麗に、そして特徴的な線を
書けるなんて素晴らしいです。
(前回も書きましたが、私はこの技法は苦手です。)
ただ単純に、スーーーっと筆を動かしているのではなく、
時間もかけて、力も込めて、時に筆を転がして、
グラデーションがより美しく出てくるように
ゆっくり考えながら書いています。
何枚かこのような模様を書き上げて、
その中の一枚に
「これを文字を書き入れたいんですけど、
どんな文字を、どこに、どんな風に入れたら
いいですか…?」と問われました。
まずは、紙をぐるぐる回して、
どの方向に置くか、を決めます。
とてもとても悩みましたが…
黒の重たさが上、白の軽さが下、
というセオリーがやはり落ち着くでしょう。
そして、次に、どんな文字をどこに入れるか。
模様の中の丸く穴あきで白い部分には
絶対文字は入れない。
せっかくの美しく模様が台無しになる。
かと言って、左下の余白になんか、
もってのほか。
ということで、
「ここに、漢字で、二文字を入れましょう!
熟語でもいいし、熟語じゃなくてもいいですよ!」
そして裕子さんはご自身で
熟語を検索して、文字の練習を始めました。
しばらくして、
「こういう感じかなー…どっちの感じがいいですか〜…?」
あの素敵な美しい模様を思い出して!
あのモノトーンのグラデーション、
濃い黒と薄いグレーと、そして白と。
あの模様のモノトーンの世界観を
この漢字二文字でも同じ様に書けばいいのさー!
つまり、
普通の濃い墨しか使わないけれど、
文字の中の線にもグラデーションを作る。
イコール「かすれ」と「にじみ」を
意図的に表現すれば、
模様と同じ様なグラデーションの世界を
作る事ができるし、
模様と文字がマッチする!!
…という説明をして「こんな感じさ〜」と
例を書いて差し上げました。
「なるほどーーー!」と更に練習を重ね、
そして出来上がったのが、この作品です。
みごとに、模様と文字がマッチしてますよね!
模様は模様、文字は文字、と
別々に書く時は、
模様と文字が同じ世界観にマッチするように
文字の方が歩み寄ると、統一感のある作品になります。
2023.07.03@北海道札幌市